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「割とタイミング良くてやばい、」:日本の真の流行語と、「食の時代」の終(はて)に改めて考える日本料理の割とやばい情況:その3

 何か何もやる気が起きなくてこの一連の記事を書き上げるのももの凄く面倒くさい情況なのですが…、

 一汁一菜を提唱する土井善晴料理人はまさにやる気がなくても面倒くさくてもきちんと作れる料理というものを数々紹介しており、その一つが冒頭の写真のかぼちゃの鰹節煮です。
 かぼちゃと鰹削節を味醂と水で蒸し煮るだけ。
 煮え上がったかぼちゃに鰹節を乗せるのではなく鰹節を乗せて煮ます。
 なので煮汁の量はかぼちゃが浸らないようにし、弱火を通し、蓋で適当に蒸気を巡らせて煮汁が全て煮詰まる寸前まで煮ます。それだけ考えておけば後は簡単な操作だけで硬くてなかなか煮えないかぼちゃが直ぐに煮え上がります。
 かぼちゃは喉が乾き易いので、そこに乾いている鰹節を乗せると後口や喉越に違和感があるかと思われます。故に鰹節を適当に湿らせると美味しくなる訳ですが煮汁が浸ると川辺のごみのように散らかってしまいます。

 さて、煮汁が煮詰まり過ぎて(日本料理は煮詰めることがなさ過ぎることも問題と思いますがそれについては別途に語れたら語ります。)具と鍋が焦げないようにすることを何と言いますか?

 正解から言うと:(火を止める)頃合いを見る。

 「タイミングを見る」と答える方が少なくないのではないかと思料されますがそれは誤りです。
 英語に言うと‘Seeing the time to stop fire.’で、-ingはseeに付きtimeには付きません。
 映画や何かによく、潮時だみたいなことを言う際に’It’s(the) time to...’という言い回しがあったりしますがそれと同じ。潮時とは何かが終わる頃合いということです。
 theの付く位置はtimeにでありfireにではありません。timeには絶対に付かないとならなくはありませんが「時間というもの」という意味合いがより明確になるので付けると尚良いです。しかしfireはthe fire, その火をというよりは一般論としての火(を止めること)についてという意味合いが強いのでtheは付きません。その火を止めろということなら’Stop the fire.’です。

 「折良く」、「適時に」や「時宜好く」を「タイミング良く」という方も少なくないですが英語は’timely’ または ‘good timely’, ‘on a good time’.
 「そのタイミングで」や「グッドタイミング」に至っては‘time’という語すらなく、’on that chance’ and ‘good chance’, 「その機会に」や「良い機会」、「好機」。

 英語には‘timing’という語はないのかというと、ありますが時間の調整という意味になります。
 調整というからには予め期する所定の時間というものがある訳ですが、その決まっている時間に合わすことをtimingと言います。電車やバスなどの定刻運行などがそれに当たります。
 「タイミング」にはそのように決まっている時間はないですね。多くは変動的流動的都合の良し悪しについて言われています。「なるべく早く(なるはや)」や「ちょっと待って(ちょい待ち)」の世界にはtimingというものはないはずなのです。

 料理もまた、そのような意味不な日製英語などの外来語や意味が間違えてはいなくても遣わなくていい外来語に侵されていますね。
 近年に特に目立つのは鮭を「サーモン」と呼ぶ例で、何かピンク色のゴムみたいな印象をしか受けません。日本のthe soul foodなはずのおにぎりにも「サーモン」とか、MIKADOじゃないんだから、という感じがします。

 更には、「サーモンのカルパッチョ、やばい。極上のイタリアン!」とか来たもんだ。
 そこまで来ると全くの野蛮人としか思えません。
 カルパッチョを刺身と呼べとまではいいませんが「鮭のカルパッチョ、美味し過ぎる。最高のイタリア料理でした。」ではないでしょうか。
 カルパッチョを生み出したのは日本のイタリア料理人落合務料理長だというのが定説ですが、私はかつて父に連れられて今のLa Bettola da Ochiaiではない彼の店で鴨の料理をいただいておなかが激しく下ったことがあります。確かにそのような場合はやばいですね。
 他に鴨なんばでもおなかが下ったことがあり、かつての私は鴨がなかなか合わなかったのでしょう。

 では、日本料理はそんな意味不な外来語や遣わなくてもいい外来語に侵食されてはいないので良いのかというとそうでもなく、やはり「やばい」だの「極上」だのという野蛮人系の意味不な日本語に侵食されたりしています。

 それらのような情況に割と侵食されていないのは台湾、ベトナム、タイ、インドネシアやマレーシアなどの南シナ海の国々の料理ではないかと思われます。
 少なくとも日本には割と教科書通りのような典型的作りが多く、奇を衒うなどして強いつかみを取ろうとするような感じではないことも理由かもしれません。

 タイ名物トムヤムを日本の桃屋の品のように使ってみたのがこれ:

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