色々ともったいない!理想とする『力の指輪』をロードオブザリングファンが考察してみた
皆さま、ご機嫌よう✨
さあ、ついに最終話を観終わりました。
今回は満を持して『力の指輪』。
私がその世界観を愛してやまないロードオブザリングの前日譚を描く作品についてです。
シーズン1が公開されてからシーズン2まで、長い月日が経ちましたね。
そして迎えたシーズン2フィナーレ。
正直この作品の世間的な注目度は、シーズン1の頃よりも落ちていると感じざるを得ない。
しかし、たとえそうだとしても私は中つ国をこよなく愛しています。
語らせてもらおうじゃないか、余すことなく。
というわけで、今回はロードオブザリングファンがスピンオフドラマ『力の指輪』に抱く想いを赤裸々に語っていきたいと思います。
シーズン2通してのカンタンな感想
まずはシーズン2最終話まで観て感想がどうだったか、から。
結論から言うと、7話8話は面白かった。
他話はうん、まあ…という感じです。
色々な点で100点満点とは言い難く、何とも言えない展開力だなぁとは感じてしまいますね。
アダルは本当に良いキャラしてたので退場が悲しい。
サウロンによるオーク達の洗脳も、もっと劇的なものが見たかったなぁというのが本音。
ケレブリンボールは最後の最後でエルフの名工たる威厳を見せてくれましたね。
ロードオブザリングとその口から聞いた時は鳥肌が立ちました。
さて今回も色々あった力の指輪。
まず私自身の正直な感想から言うと、
映像や美術に関しては、これはシーズン1の時も言いましたが100点満点。
衣装やちょっとした造形物にも種族間の文化の違いや歴史が感じられて映像的に申し分なく楽しいです。
カザド=ドゥムの採掘場は、もっと広大なスケールのものを見たかったということくらいしか言うことはありませんね。
素材はめちゃくちゃいい。
なのにストーリーの展開力が弱い。
以上がシーズン2最終話時点で抱いた正直な感想ですね。
自分は映画ロードオブザリングファンであるだけに、この作品に常に一定以上の愛があります。
なので決して贔屓目に甘やかしたりはしない。
言いたいことを全て語っていこうと思います。
ゲーム・オブ・スローンズを超えてほしかった
なぜここまでこの作品に期待しているのか?
ロードオブザリングファンだからというのももちろんあるでしょう。
理由はそれだけでも十分かもしれません。
しかし、それだけではない。
この『力の指輪』という作品。
大作ファンタジードラマとして、世界中で大旋風を巻き起こした『ゲームオブスローンズ』と肩を並べるポテンシャルを秘めていた作品なんです。
これは、公式も豪語していたことです。
大作ファンタジードラマを作成するに当たり、伝説的ドラマ『ゲームオブスローンズ』を意識しないわけはないですよね。
『ゲームオブザスローンズ』の売りは、
簡単に言えば、上記にまとめられるでしょう。
更に、全てを晒け出した生きた世界観にするためにエロ要素やグロ要素を加えて唯一無二の作品に仕上げていました。
確かに、エロ要素やグロ要素などの過激表現は、世界観をリアルに描き抜くという意味ではとても大切な役割を担ってくれるでしょう。
しかし問題が一つ。
それがあるために、一部の視聴者の作品視聴を妨げているという点です。
こうした要素がまざまざと生々しく見せつけられなければ、ゲームオブスローンズもっと純粋に楽しめたかもしれないのに…。
そうした意見も少なからず耳にするのではないでしょうか?
ではこうした要素を見せずに、よく知られた世界観でハイファンタジーを描ける老若男女に刺さる作品はないのか。
はい、そこで出てきたのが『力の指輪』です。
力の指輪はある種ニッチな方向に舵を切ったゲームオブスローンズとは対照的に、完全王道ハイファンタジーで許される作品なんですね。
夢や希望といった万人が望むイズムが、作品の根幹に流れていて何の違和感もない世界観。
そうした意味で、年齢性別人種問わずにある程度安心して視聴できる保証のある『力の指輪』は、ゲームオブスローンズと肩を並べるどころか超えることができるかもしれなかったIPでした。
面白いドラマの条件とは
力の指輪には、ゲーム・オブ・スローンズを超えてほしかった。
現時点では物語クオリティに関しては過去形で語らなければならないのが悲しい所です。
大好きな世界観に巨額の予算、ファンタジードラマに新たな金字塔誕生の瞬間。
それはそれはものすごい期待を密かに抱いていたわけです。
で、蓋を開けてみると何とも言えない仕上がり。
正直ちょっとがっかりしたのは否めません。
サウロン誰だミステリーをまるまる1シーズン通して行っている時点で、一抹の不安は感じていました。
まあ、でもシーズン1だから…とある意味ファンとして悠長に構えていたところもあります。
そして迎えて終幕したシーズン2。
今回決して話が進まなかったわけではない。
寧ろシーズン1に比べれば著しい速度で話が進み、これを待っていたというものは観せてくれています。
ただ、今度はストーリーの展開力がどうしても気になってしまう。
サウロン強すぎるんですよね。
こいつほぼ失敗しない。
1話目でアダルの裏切りという大敗を喫しますが、それ以降は大した苦労もなく全て彼の思惑通りに話が進んでいきます。
ここで思います、これ面白いか?と。
ドワーフもエルフも、誇りある種族として世界を守ろうともっと必死に抵抗をするはず。
決して彼らが抵抗していないわけではありません。
ただ、その抵抗があまりにもサウロンの掌の上過ぎて、ずっとサウロンの一人勝ちゲーになってるんですよね。
サウロンがいかに超常的な力を持つ天使のような存在であるマイアールとは言えど、その身一つで中つ国を手中に収めようとしています。
もっとボロボロになって、中つ国の主導権を命からがら握るべきでは?
とどうしても思ってしまいます。
映画と違い話数が豊富に設けることができるドラマで観たいのは、サウロンとエルフ、ドワーフ間の駆け引き。
ドラマとして私が描き出して欲しかったのは、いわゆる史略に富んだ頭脳戦と見どころたっぷりのアクションです。
全員がギリギリのせめぎ合いの中で、心技体を駆使して群像劇を繰り広げてくれるとこの上なくベストでした。
ですが、このドラマでボロボロになっているのはエルフとドワーフ、人間だけで、サウロンはほぼ無傷。
これではドラマ性は生まれないでしょうと。
精神的にも肉体的にも追い詰められながらも必死に戦っていく登場人物達の人間ドラマというものに心打たれるから、視聴者は毎週視聴したくなるのでは?
と心から思います。
面白いドラマは、力が拮抗しているからこそ生まれるもの。
それをどこか履き違えているような気がしてならないというのがシーズン2の感想ですね。
どうすればよかったのかを考えていく
とまあここまで感想を述べてきましたが、やはりこれだけでは言いたいことの半分も語れていない気もします。
そこで今回は、作品のどこを改善すればより面白くなるのかに関して、僭越ながら意見させてもらえればと思います。
世界観を理解してもらうには
まずは世界観の説明という観点から。
この力の指輪、シーズン1から色々と説明不足のままに話が進むんですよね。
よって、どんどん視聴者の感情が置き去りになっていく。
これは由々しき問題です。
ドラマ視聴以前に専門用語や独自概念でつまずかせてはそれ以前の問題になってしまいますからね。
せめて作中で使われる共通知識くらいは、すんなりと視聴者に理解してもらう必要があります。
特に今回描かれている物語は、神話上の出来事として語られる時代のものです。
エルフには彼ら独自の思想が、ドワーフにも人間にもそれぞれ大切にしている教義というものがあり、それらは神話の神々が実在している世界を土台にして描かれている。
世界を創造した神の使いと関わりを持つ原初のエルフという存在が、登場人物の直接の祖先に当たるような、そんな神話が色濃く史実として残っている世界観なんですね。
ここを説明しなければ、ファンはともかく新規の現代的な価値観で視聴する新規さんはあらぬところで置いてけぼりを食らってしまうでしょう。
しかし、あまり物語の中でくどく説明するのもテンポを崩すのでどうかとは思う。
ではどうすれば良いのか?
成功例に挙げ続けているゲーム・オブ・スローンズを見てましょう。
ゲームオブスローンズでは、オープニングで各地の名前や主要な城を見せていました。
それにより地理的な立地や登場人物達が置かれている環境が大体掴める作りになっているのですね。
あれと同じように、
力の指輪でもオープニングで地理と専門用語を語るようにすればいいのでは?
と思います。
いつぞやのエンディングでヴァリノールの歌が流れたりしましたが、イメージとしてはあのような感じ。
しかしエンディングは見ない人も多いので、やはり物語が始まるオープニングに流すのが望ましいと思います。
それこそ、指輪物語の著者であるトールキンの描く世界観には歌がよく出てきます。
作者のトールキンは言語学者であることもあり、種族のために全く新しい独自の言語を作成してしまうほどの設定マニアでした。
エルフ語、ドワーフ語も文字から発音まで作り込んだというのですから、そのこだわりは最早エンタメを超えていると言ってもいいでしょう。
彼の世界観をそのまま活かして、歌と映像で専門用語を説明すればいい。
歌に乗せて、冥王モルゴスとその物語を専門用語を説明しながら語れたりなんかするとベストですね。
これだけで、本編であまり説明されないヴァラールやイスタリといった単語への抵抗感はなくなり、すんなりと物語が入ってくるようになると思います。
更に贅沢を言うと、毎話ごとにヴァラールの神秘的な歌、エルフ語の歌、ドワーフ語の歌などがエンディングで流れてくれると主に自分が泣いて喜びます。
更に音楽関係で言わせてもらうとすれば、やはりロードオブザリングならEnyaの歌が聴きたい。
May it beやAnironなどの彼女の伝説的名曲が、この力の指輪でも生まれて欲しかったとも感じてます。
力の指輪で使われるBGMに関しては、個人的にはとても好きです。
特にガラドリエルのテーマが壮大でお気に入りですね。
自分の考える理想のプロット構成
はい、ここから私的な大本命。
ストーリー構成についてのお話。
ここからは具体的なストーリー展開をどうすれば面白くなるのか考えていきたいと思います。
自分なら大筋をこう設定するという構成をまとめてみました。
あくまで私個人が勝手に想像した理想なので、思ったものと違ってもご容赦ください。
まず、自分の考える構成は全8シーズン。
やはりこれくらい作成しないと、5シーズンではこの物語を語り切れないと結論づけました。
第二紀の長さは3441年。
流石にこの尺通りにはお届けしないとしても、
8シーズンに分けてまで語らなければならないことは山ほどあります。
この世界観には、既に原作者トールキンの考えた歴史年表というものが存在します。
ただ、あまりの長さと多くの登場人物に全てを映像化するのは流石に大変すぎる。
よって主要な出来事だけを切り取ってお届けするのは見やすくなるので大いにありだと考えます。
全体を通して作品を見やすくなるための改変であれば、多少は目を瞑ってもいいとは私も思っています。
ここに、私の考えた大まかなプロットをまとめました。
以上が、ロードオブザリングファンの私の考える『力の指輪』のプロットです。
そもそも、サウロンがアンナタールとしてケレブリンボールと力の指輪を創造し始めるのは第2紀1500年頃。
かの有名な1つの指輪が誕生するのは1600年頃です。
本来であればここから1500年間ほどは暗黒の時代が続く計算ではあります。
その後にエレンディルが生まれるので、神の祝福があるとはいえ最高400歳ほどしか生きない人間であるヌーメノール人のエレンディルが、シーズン1時点で登場するのはおかしいのですが。
そこはドラマを見やすくする改変なので残しました。
この物語は、不老不死であるエルフと、ある種天使的な存在であるマイアールの戦いを描いたそれは壮大な物語。
実際の年表通りに語ってしまうと、最高でも100年ほどしか生きない我々にはちょっと感覚が掴みにくい面がどうしてもあります。
暗黒時代1500年では、描くのも語るのにも長過ぎますからね。
本編ドラマも短くして見やすくする配慮をしているのではと思います。
あくまで見やすく、わかりやすくを優先したいという考えは頷けます。
エレンディルの享年が322歳。
彼はサウロンとの最終決戦で戦死するので、それを考えるとシーズン1~8を通して200年強ほどということになるでしょうか。
それくらいであれば、確かに分かりやすいのかなとは思います。
短すぎず間延びを回避する各12〜15話構成を基本として、最終シーズンに至っては物語を余す所なく語り尽くせるまで作成したいところですね。
この構成ならば、指輪が多くの種族に渡るまでの経緯を1シーズンかけてじっくり描くことができ、各キャラクターの描写も省略せずに描きたい分だけ描けるのではないかと思います。
戦闘アクションに求める理想
見どころを作るために、戦闘パートの比重も高めたいところです。
この作品はやはり指輪物語。
机上の頭脳戦もドラマとして面白いですが、やはりド派手なアクションマシマシで観たい。
などなど、描けるアクションはそれこそいくらでもあります。
しかもグロをそこまで強調していない作りなので、子供もある程度は安心して観られる。
ゲームオブスローンズのように、ああ観なきゃよかったと突然心抉られるような残虐描写はない前提ですからね。
そうしたところも、泥臭くなりすぎないある種エンタメ色のある多彩なアクションを魅せられる土台となってくれるでしょう。
種族によって殺陣が変わってくるという面白味を作れるのも魅力。
エルフとドワーフに、儀式として一騎打ちで一戦交えさせても面白い。
ガラドリエルが神業的な剣技でオークの大群をたった一人で蹴散らす姿を映像化しても良い。
優雅さのエルフ、頑強さのドワーフなどの物とは違い、人間の剣技は神業ではないがしっかりと軸のある地に足がついたものが望ましいと思います。
まさに映画のアラゴルンのような感じが理想ですね。
今回の作品はオーク達にかなりスポットライトが当たっているので、オーク達に固有名詞をつけてそれぞれに別の武器を持たせ、より個性を強調しても良いでしょう。
映画ホビットのアゾグ、その腹心などはしっかりとキャラが立っていましたよね。
彼らの動きは粗暴で、危なっかしいものが理想的。
隙だらけに見えて、迂闊に近づくとこちらが致命傷を与えられるようなものだとハラハラ感が増しますね。
このように、アクション1つとってもこれだけのバリエーションが出てくるのがファンタジー作品の面白いところだと思います。
本編ドラマでも種族間のアクションの違いというのは確かに見て取れますが、更にその魅力を引き上げられると思います。
スローモーションを使った視覚効果演出を入れる、レゴラスのような人間にはできないようなアクロバティックな動きをもっと取り入れるなどなど。
映画ロードオブザリングから、はや20年。
第1作目が2001年だというのだから色々な意味で驚くしかない。
これだけアクションに関して様々な趣向が凝らされてきた現代だからこそ、まだまだできることがあるなぁと感じてはしまいます。
具体的な展開の提案 シーズン1
ここからはこれまでのシーズンの振り返りと具体的な部分への感想、自身の考える望ましい展開について考えていきます。
順を追っていきましょう。
まず自分なら、シーズン1で描かれたサウロンは誰かミステリーは早々に終わらせます。
本質はそこではないですからね。
このドラマの本質は、サウロンvs中つ国。
ただ、サウロン誰なのミステリーはそれはそれで面白いのも確かです。
しかし、ここにあまり多くの話数を使いたくはない。
シーズン1は、ドラマの掴みを担う大事な看板でもあります。
サウロンが誰かは、シーズン1の1話目で明かすくらいのテンポ感でも全然問題ない。
ミステリー色を強めたいのであっても、シーズン1の2話目までで十分でしょう。
サウロンの正体を明かしてからは、シーズン2の1話目であったサウロンがアダルに裏切られる展開をシーズン1で早々に持ってきます。
なぜサウロンが南方国の男に扮しているのか?
現状の彼には何が足りずに何を目指しているのか?
などを映像で明確に示し、正体が判明した身の丈の知れたサウロンをここから主人公に据えていくのが良いでしょう。
本編ドラマに対して自分の考えるドラマの展開は早いですが、これぐらいのテンポ感でないとゲームオブスローンズは越えられないと思います。
その後に、個の力は強くても集団相手にはまるで太刀打ちできない弱者なサウロンを描き、視聴者にサウロンを応援する気持ちを芽生えさせたい。
そして良き頃合いで、人間の国であるヌーメノールの話を持ってきます。
ここはドラマの中でも特に描写不足だと感じる部分ですね。
本編ドラマ、ミーリエルからファラゾーンに権力が移るまでがあっさりしすぎていて全く感情移入できないんですよね。
せっかく政治ドラマできる舞台なのに勿体無い。
政治というのは複雑ですから、物語に深みを増すことができる絶好の機会でもあります。
ヌーメノールの舞台は、人間の世界。
このドラマを視聴するのは、当然のことながら人間です。
エルフやドワーフの視聴者は恐らくはいないはず。
人間勢力を丁寧に描くことで、よりドラマに対する感情移入を高められるのではと考えます。
ヌーメノールの統制権を巡った重厚な政治ドラマで、視聴者を惹きつけるのは大いにありでしょう。
本編ドラマで、人間を蔑ろにする理由が謎なんですよね。
全体通して、尺が足りていないことが起因しているように感じます。
人間の話は、絶対に色濃く描くべきです。
だからこそ、指輪を託された人間の王の堕落も1シーズンかけてじっくり丁寧に描きたい。
その後、この政治ドラマの行方はどうなるの?と視聴者を惹きつけてから、次話からはサウロンの話に戻す。
場面切り替えというのは、本来このように使うから意味のあるものになるのだと思います。
感情移入が十分にできないまま次々と場面を切り替えられても、話がただツギハギにされてる感じがして余計に置いてけぼりにされるだけです。
そこまで丁寧に物語を描いているからこそ、視聴者に次が気になるという気持ちにさせることができ、それが視聴率に繋がっていくのだと思いますね。
さてここまで、イスタリとハーフットに触れていませんね。
彼らは別にこのドラマにはいらないのでは?と自分は考えています。
このドラマに関して大切なテーマは、サウロンvsエルフ、ドワーフ、人間です。
中つ国全土が巻き込まれているのですから様々な種族を登場させるのは大いにありではあるのですが、主要人物に置くとなるとその分の尺を割かなければいけなくなる。
ならば、それに値するだけの物語を用意する必要があります。
正直今の段階では、イスタリとハーフットの物語にそこまでの引きを生み出せていないと感じます。
それどころか彼らの登場でサウロン物語という大切なドラマのテンポが分断されているように感じます。
イスタリ(ガンダルフと思しき人の総称)も同様。
確かに最終話でガンダルフの杖が出てきた時には嬉しかった。
しかし、物語的には残念ながら必要がない。
イスタリとハーフットの出会いは確かに面白い。
ガンダルフとフロドを彷彿とさせますしね。
ただ、本質として描きたいサウロン全盛期の物語を分断せずに彼らを絡めるのは非常に難しい。
サウロンミステリー要素ではイスタリも活躍してそれなりに面白かったですが、1シーズンまるまるかけてやるような話でもないのは前述しました。
イスタリとハーフットがどう出会い、育っていくかはそれこそスピンオフででもやればいいのではと思いますね。
イスタリのアイデンティティを探す旅というテーマでは、本筋に絡むのもなかなか先になりそうなので、思い切って別作品にするという結論でも問題ないような気もします。
ガンダルフという名前そのものにもう引きがありますから、本編が人気でればスピンオフの集客も安泰でしょう。
再三言いますが、大切なのはドラマの軸をずらさないことです。
ハーフット、イスタリをこのドラマに登場させるのだとしたら、本筋の邪魔にならない程度に留めておくのが正解だと思いますね。
シーズン1、シーズン2で描きたいのはあくまでサウロンvsエルフ、ドワーフの頭脳戦。
エルフやドワーフは長く続く誉れある種族のため、そう簡単には陥落させることはできません。
冒頭でも触れましたが、このドラマはサウロンがあまりに有能に描かれすぎています。
誰もそんなドラマ見たくないのでは?
最強の主人公を描く俺ツエー系のなろう小説とか思い出してみてください。
本当に主人公は敵がいないほどに強いでしょうか?
強いはずの主人公は佳境では必ずボロボロになっているのではないでしょうか?
ボロボロになってまで何かを成し遂げようとする登場人物の姿に、視聴者は心打たれるもの。
ここから5〜6話あたりまでは、ただの一魔術師であるサウロンにエルフ、ドワーフを陥落させるのは無理ゲーなのでは?
と思われるくらいコテンパンに負かしていい。
盛大に負けなければ誰も応援してくれないですからね。
サウロンの送り込んだ刺客、計画の全てが失敗に終わり、絶望するサウロン。
そこから学び、より綿密な計画を練り頭脳戦で中つ国を陥落させていく知略に富んだサウロンが見たいです。
稀代のペテン師と呼ばれる彼に相応しいのは、そうした姿だと考えます。
負けた後にガラドリエルと出会えば、その出会いも更に劇的にできそうです。
7〜8話辺り。
綿密な作戦の結果、少しずつサウロンが勝利していくようになる姿を描きたい。
政治的な根回し、少しずつ小さな戦でアクションシーンも描き、ドラマの絵的にも飽きさせないように作っていきます。
9〜10話辺り。
サウロンがガラドリエルに正体を明かす。
自分の目的である中つ国に救いをもたらすためにガラドリエルに協力してほしいと持ちかける展開を描きます。
ガラドリエルを見初めて女王にしたいという申し出は、当然ですが断られます。
それどころか、ガラドリエルは正体を明かしたサウロンの話を静かに聞いた上で、怒りを抑えられずに彼を殺しかけるくらいの危なげと強さを見せてもいい。
幻影を見せられて涙を流し、宿敵サウロンを逃してしまうのはあまりに女王の器として弱すぎる。
剣を突きつけ、それでも友として殺し切れずに僅かに腕が鈍り、結果逃してしまうくらいがいいのではと思います。
こうしたやり取りがあってからガラドリエルの頬に涙が伝っていたら、より複雑な心情を描写できる場面にもなったんだろうなとは感じました。
こうして、サウロンは一人虚しくガラドリエルの元を去ることにします。
最も信頼関係を築きたかった相手に拒絶されたサウロンは、エルフの名工ケレブリンボールのいるエレギオンを目指します。
ガラドリエルとケレブリンボールは対比させたいのもあり、離れた別の街にいることにした方がいいと考えます。
それに、指輪がサウロンの助言で作られたことは基本的に明かさない方が良い。これに関してはシーズン2で後述していきます。
11〜12話辺りでは、とにかくケレブリンボールに拒絶され続けるサウロンを描きたい。
本ドラマでは、あまりにもケレブリンボールがチョロすぎるのではと感じます。
エルフの名工がそんな簡単に陥落しちゃダメだろと何度突っ込まされたことか。
物作りへの喜びだけで指輪を作ってしまうのは流石に無理があると感じますね。
シーズン1の最後で、エルフの3つの指輪が作られる展開は先が気になる構成としては悪くなかった。
しかし、ケレブリンボールをサウロンがいかに落としていくかをじっくり描きたいがために、シーズン2の最後あたりまでエルフの3つの指輪は作られないというくらいに引っ張ってもいいのではないかと思います。
ケレブリンボールにアンナタールの姿を見せたとしても、やはり丁重に拒絶され続けるサウロン。
しかしその拒絶は冷酷に剣を突きつけたガラドリエルとは対照的に、やんわりとしたものにします。
ヴァラールの使者だとそう簡単に信じるわけにはいかないが、親身になってエレギオンの相談に乗ってくれるアンナタールに敬意を払ってはいる。
サウロンは曲がりなりにではありますが、本当に中つ国を救いたいと考えているという設定に。
恐らくは本編ドラマのサウロンもそう考えてはいるのでしょう。
彼は多数のために少数の犠牲は厭わないというタイプなのだと思います。
その嘘偽りない情熱に、エルフもドワーフも彼を無視できない。
さてこれからどうなることやらでシーズン1完結くらいでちょうどいいと思います。
具体的な展開の提案 シーズン2
続いてシーズン2。
ここは、主にエルフとドワーフが指輪の作成にどのように合意していくかをじっくり描いていくシーズンにしたいですね。
当然のことながら、得体の知れない指輪を作るのにエルフ、ドワーフは反対の意を示すでしょう。
本編ではここがあまりにあっさり描かれすぎていて、中つ国そんなに簡単でいいのか?と思わされました。
本編ドラマでは、エルフやドワーフの政治的な大会議や民衆の声を特に描くこともなく、王の一存だけでバンバン話が決まります。
ここにあまりドラマ性を感じないのがネック。
それを回避する手段として、エルフ、ドワーフ双方に権力側と民衆側の登場人物を用意するのも良い案なのではと思います。
サウロンの綿密で抜け目のない根回しによって、致し方なく指輪を承諾するしかなくなっていく議会と、それに翻弄されていく民衆を描くだけでも、世界観の説得力は格段に上がると思います。
最初は指輪に懐疑的だった2種族が、実際にその力を手にしてどんどんそれ無しではいられなくなっていく姿を丁寧に描きたい。
本編では、これもまた王が指輪を手放せなくなっていくという描写だけで薄いと感じます。
王の一存だけではなく種族として、民衆の総意として指輪を手放せなくなっていく様を見せる必要があると思うのです。
ヴァラールを信仰するエルフ、ドワーフは徐々にその使者を謳うアンナタールに信を置くようになっていき、ゆっくりと、しかし着実に彼を中つ国の救い主と思わされていく所が見たいですね。
そんな中、ガラドリエルは逃亡したハルブランドを追っている。
本編では早々とサウロンの言葉で指輪が作られたと明かされますが、それを明かしてしまったら本来どうあっても2種族は指輪をおいそれと使おうとはしないはずです。
エルフは力と高貴さに誇りを持っているので、最終的には扱うという結論を下すかもしれませんが、それでも明かすメリットが存在しない。
この情報は、サウロンにとって最も知られてはいけないトップシークレットにした方が無難なのではないでしょうか。
自分なら、アンナタールになった瞬間に姿形容姿まで変え、ハルブランドの俳優を別の俳優にします。
そうしないとガラドリエルに会った瞬間にサウロンだと気づかれてしまいますからね。
ガラドリエルの目と鼻の先に近づいても、サウロンだと気づかれない容姿にする必要があるのではと感じます。
最終話でハルブランドの顔をしたサウロンとガラドリエルが再び出会った時の衝撃は確かに良い演出ではありました。
しかしそれを差し引いても、サウロンがエレギオンに潜伏している時点で彼の正体を知らないガラドリエルと再び出会わせるというのもドラマ性が生まれそうで好みな展開ですね。
ガラドリエルとアンナタールをそれなりに近づけて、やはり打ち解けあってしまう二人を描いた方が今後の展開が面白くなりそうな気がします。
ガラドリエルとしても、流石にヴァラールからの使者を名乗る者自身が自分が探し求めているサウロンだとは思わないはず。
中つ国に戻ってきたことが厄介な相手にバレているのに、敵の眼前に公然と姿を表しているのはよく考えれば大胆不敵すぎますからね。
これは策士としてのサウロンの光明としてもいいでしょう。
ガラドリエルがすぐに気づかないのも無理はない。
寧ろサウロンが現れたことにより、ヴァラールから使者が送られたと考える方が自然と言えば自然です。
しかしガラドリエルも、アンナタールを完全に信用したわけではなく、彼自身がサウロンである可能性ももちろん疑っている。
常に本当に使者なのかどうかの疑いの目を誰よりも向けているくらいが良さそうですね。
腹の内を探り合ってはいるが、やはり互いにどこか惹かれあってしまう二人。
サウロンとガラドリエルの対比を強める意味でも、この二人を接しさせながら物語を紡いでいくのは大いにありだとおもいます。
このままガラドリエルについて。
シーズン1でも少し触れましたが、このドラマではガラドリエルがあまりにも腑抜けに描かれすぎているなと感じます。
こんな今のところ翻弄されているだけの人物を、サウロンがいずれ女王にしたいとスカウトするのはちょっと不自然ではないでしょうか?
最終的にサウロンを滅ぼすのはイシルドゥアですが、実際にその喉元に剣を突きつける役割を担うのはガラドリエルである必要があると思います。
ガラドリエルには戦士として、女王の器としてもっと心技体強かであって欲しい。
2種族を陥落させられても、ガラドリエルだけは陥落させられずにシーズン4くらいで危うくサウロンの指輪の計画を奪いかけるくらいの激動の展開があってもいい。
少なくとも映画のガラドリエルには、指輪の女王となりうる素質と妖しさがありました。
ドラマのガラドリエルも同様に、サウロンの天敵として描いて欲しいと思いますね。
彼女のアクションシーンも少なすぎる。
仮にもガラドリエルなので、その実力は並大抵のものではないはず。
その剣技に関しても、前述した私が人間の剣技として考えているような動きでエルフとしての美しさが足りない。
エルフというのは神秘的な種族。
人間にはできない動きができ、涼しい顔で敵を圧倒する強さは時に優雅に映るものです。
まさに映画のレゴラスのように。
誰も敵わないんじゃないかと思われるような美しい剣技を披露するガラドリエルがもっと見たいですね。
為す術もなくやられていくオークと、それに拮抗する実力のサウロンを描くから、実力というものも見栄えするわけで。
彼女が己の実力だけでオークを圧倒する姿は、やはり描かない理由がないなと思いますね。
さて。
ガラドリエルへの情熱はとりあえず脇に置いて、物語に戻ります。
どんなに疑われても、策略だけに留まらない情熱で2種族の信頼を勝ち取るサウロン。
それだけの器量を備えており、志高い人物でもあるが故にです。
最終的にはガラドリエルすらも納得させてしまい、ついにエルフの3つの指輪が作られる。
これでシーズン2完結でいいのではないでしょうか?
あと最後に物申したいことが一つ。
ガラドリエルとエルロンドの恋愛関係についてですね。
いらん。これは本当にいらん。
そもそもエルロンドはガラドリエルの娘と結婚するはずなので、ここが恋仲になるのはちょっと何かと複雑という問題もあるが、それ以前に。
ガラドリエルとエルロンドを物語的に恋仲で結ぶ理由が全く見当たらない。
それならば、サウロンとガラドリエルを恋仲とは呼べないが友人以上の複雑な関係になってしまう間柄として描いた方が、今後の展開的にも面白くなるのではと私は考えます。
前述したアンナタールと再びエレギオンで出会うガラドリエルを描きたいのも、物語の中でこの関係性を強調したいからというのもあります。
信を置いたかつての友だからこそ、本気で滅ぼす覚悟というものが際立ちますし。
兄や同胞を殺したモルゴスの腹心であるサウロンを許せない反面、彼の思想にも頷けるところがあり、時が経つごとに彼に心を許してしまうガラドリエルを描くのも面白い。
彼女は自身が想いを寄せるに至ってしまったアンナタールがサウロンなのではないかと内心では勘づいているが、思い違いであって欲しい。
だが彼自身に再び正体を明かされた時、彼を拒めるかどうかが分からない。
冥王の傍に寄り添う女王として、彼の誘いを承諾してしまうかもしれない。
そもそもガラドリエル達エルフはほぼ永遠を生きているので、その心情は単純な善悪では語れません。
長きにわたるモルゴスとの戦で多くを失い、彼らエルフは心に深い傷を負っています。
ただ彼らに寿命はなく、永遠にその傷と向き合っていかなくてはならない。
多くを犠牲にはするが実を取るサウロンのやり方が合理的な救いの道だと考えたとしても何もおかしくはないのです。
永遠の命があるが故に、時に冷酷にもなれる。
あまつさえ敵を愛してしまったら、その結末がどうなるのかは誰にもわからない。
そうした危うさが現れても、人間ドラマとして面白くなりそうです。
映画のガラドリエルは、1つの指輪を欲していました。
それは力への渇望からだけではなく、想いを寄せたサウロンの遺恨でもあるからだとしたら。
女王として、かつてやり方を誤ったサウロンの代わりに今度は自身が冥王となる選択肢を葛藤し続けているのだとしたら。
力があるのに自身の手でサウロンを完全には滅ぼそうとはせずに、運命に任せようとしているその姿にもある種納得がいくのではないでしょうか。
女王と冥王という対比はそれだけで魅力的なのですから、恋愛要素を取り入れるのであればやはりこの二人の間に芽生えさせるべきだろうと思いますね。
さて。まだシーズン3は公開されていないので、具体的な展開の提案に関しここでストップさせていただきます。
この世界観にまた浸れて嬉しい
いかがでしたでしょうか?
今回は、ロードオブザリング公開初期から長らく第二紀の映像化を待望していた自分なりの理想というものをまとめてみました。
有り体に結論を言うと、やはり今の『力の指輪』では自分は十分に満足できていないということになるのですが、真に語りたかったのはそういうことではありません。
ただ単に、自分の理想とする『力の指輪』を誰かと共有したかっただけです。
この時代の物語を、ハイクオリティで映像化してくれたことに感謝しています。
正直ファンとしては映像だけで物語は想像力で補填できますから、全然楽しめてはいます。
ただ、今のところファンにしか刺さってないのが非常に勿体無い。
映像が凄いからこそ、より高いものを求めてどうしても辛口になってしまうのですね。
例えこの力の指輪が思うような結果を残せなかったとしても、指輪物語の世界観は今後もどんどん映像化して欲しいと思っています。
映像化というものが途切れてしまうと、どうしても人々の目に触れることが少なくなってしまいますからね。
あらゆるファンタジーの元祖とも呼ばれるこの世界観自体が広く知られる機会が失われてしまうのは、ファンとして悲しいです。
例え映像化作品のどこかに満足いかない点があったとしても、この素晴らしい世界を知れるきっかけが与えられれば、それはそれでいいのではとも思っているのも本音です。
しかしながら。
かつて映画界を圧倒的なクオリティで唸らせたロードオブザリングに肩を並べる、現代基準で面白いドラマ作品を観せてほしいのも確か。
猛烈に叩くのは作品にとっても正直どうなのかとは思いますが、これほどの題材の作品が視聴されていない、話題になっていないのにはやはり展開力に問題があると心底感じています。
この作品には、本来もっと大きな価値がある。
流石は指輪物語だなと。
作品としての威厳を示して欲しい。
そうも思ってしまいましたので、今回割と酷評気味で具体的に意見させていただきました。
何よりも、この記事を書いていて非常に楽しかった。
映像化を待ち望んだ第二紀を自分ならどう作るかを考える機会を得られたのは、今回のドラマがあったからこそ。
中つ国に再び帰る機会を与えてくれた『力の指輪』には、感謝してもしきれません。
今後の展開として、
なども控えています。
今から楽しみで楽しみで仕方ない。
ロードオブザリング世界のユニバース展開、それは私が長らく夢に見てきたことです。
これから先、多くの人々の目にトールキンの描き出した世界観が魅力あるものとして遺っていくことを願って、末筆といたします。
それでは皆さま。
ものすごく長い記事を、ここまで読んでくださりありがとうございました。
ヴァラールの導きが在らんことを✨