見出し画像

#6 たきた(栃木県日光市)

2015年10月2日

豪雨被害のあと、しばらく日光を離れて北関東を転々とし、作業の区切りをつけるためにまた戻ってきた。
また来月来る予定とはいえイレギュラーな状況なので先のことなどわからない。
お世話になったお店にはとりあえず顔を出そうと挨拶回り。

今市の市街地にある定食『たきた』
昨年亡くなったお母様の後を継いで家族が切り盛りする町の食堂。

ここの餃子は日本一美味い。
今夜も瓶ビールと一緒に頂いて、うんうんと頷いた。
煮込みハンバーグも絶品なのだが隣の客が食べていたオムライスが気になって注文。
これまた絶品でボリュームも申し分無し。
ちょっと飲んで、しっかり晩ごはん。
そんな夜に打ってつけのお店だ。

『(現場の)大雨の被害は大丈夫でしたか?』
とお姉さんに聞かれて
『実はですね…色々ありまして、一旦切り上げることになりました。この餃子がもう一度食べたくて……』
と言ったらとても喜んでくれた。
隣の常連客も満足気に笑っていた。

今市の市街地には東京で見慣れた飲食チェーン店の看板は皆無で、どの店も個人経営の小さなお店ばかりだがそれが良いのだ。
『華まる』のママも昼間は別で働いていると言っていた。とんかつ屋のおじさんも『味には自信がある。でも自分が暮らしていけるだけのお金があれば十分』と笑っていた。ジョニーさんの店も商売だか道楽だかわからない。
東京の感覚をここに持ち込むのはナンセンスだ。ここにはここの暮らしがある。

自分も音楽をやっているから身に染みてわかるが
おそらく世界中のどこでも美味しいものを頂いたら『美味しい』の一言が大切だ。
外食でその一言のやり取りを可能にする距離感を得られるのはお互いの『顔』が見える小さなお店だからこそである。
良心的な飲食店の経営というのはおそらく大変なこと。それ故に敬意とお金を払いたいと思うのだ。