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Androidでも、USBメモリーでLinuxのインストールディスクが作れるようになっていた


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USBメモリーからの起動の前史的な話

パソコンでは、USBメモリー(Microsoft用語ではUSBフラッシュドライブ)からOSが起動できるようになってずいぶん経つ。

最初の対応機種は知らないが、少なくとも2003年発売のThinkPad X31には既にUSBメモリーから起動する機能があった。しかし、Windowsでの利用は進まず、一般大衆に認知されたのはWindows 8でUSBメモリー版が発売された2013年、10年ほど遅れてからではなかっただろうか?

そのため、WindowsXPの時代でも一部機種ではUSBメモリーから起動できたが、それを知らない人は多く、Windows 8と同時期に普及したUEFIこそがUSBメモリーから起動するための最低条件と勘違いしている人までいるようだ。

実際UEFI世代になって、USBメモリーからの起動が利用しやすくなった側面はある。また、UEFIやGPTとMBRの違いなどで、新しいトラブル要因も生まれていて、GPT仕様で構成されたUSB接続の起動媒体は、非UEFIのPCでは基本的に起動できないという問題もあるようだ。

それ以上に、2003年から2015年までの期間、XP,Vista,7などが採用されたPCでは、USBメモリーからの起動に、さまざまな煩雑な要素があり、起動不能と錯誤させられるようなものがあった。

2つの要素を設定しなければUSBメモリーからの起動ができない製品も多く、あたかも多要素認証のように、行為を妨げるべく作られているかのようなパソコンもあった。詳細は別の機会にまとめるとして…

その点、メーカー製PCに比べれば、いわゆる自作PCに使われるM/Bや、それと同等のM/Bを採用するショップブランドPCなどでは、比較的容易にUSBメモリーから起動できる製品が多く、自作PCerの間では、かなり早い時期にUSBメモリーからの起動はあたりまえのものとなっていた。

本題

発端となったのは、USBメモリーでLinux系OSのインストールディスクを作るという、今や定番となった行為を、スマートフォンでやりたいという人の質問を見たこと

しかし、その質問は否定的な回答が押し寄せ、質問者を叩き潰し、Q&Aサイトにありがちな、逃げ出すような回答締め切りに追い込まれたように見えた。

実際は、Google PlayやApple App Storeなどで検索してみれば、ISOイメージをUSBメモリーに書き込むアプリがあることがわかるはずだし、それすら調べずに否定的な回答を並べることも横暴だ。

また、わずか二時間半で回答を締め切り、誤った回答だけで終了するような状況を、当たり前に生み出し続けているQ&Aサイトの仕様にも問題がある。

否定的な意見にはいくつかの要素があって

スマートフォンではそんなことはできない
スマートフォンではROOT化しなければできなず、ROOT化のリスクを負うことは割に合わない
ISOイメージをブータブルに転換する特殊なアプリが必要だが、それがスマートフォンには存在しない
費用的な問題が大きい

といったものだが、前述したようにROOT化不要のISOイメージをUSBメモリーに書き込むアプリは複数、Google Playに登録されている。

Apple App Storeには無いかもしれないが、質問者がスマホと表現している場合は、十中八九Android端末と考えていいだろう。

ISOイメージをUSBメモリーで起動できるように転換する作業は、昔は必要だった。2002年まではCD-RやDVD-Rが主流だったためインストールディスクイメージは単なるISO9660仕様のイメージファイル、fileコマンドで見ればこんな感じだった

$ file lupu-528JP.iso 
lupu-528JP.iso: ISO 9660 CD-ROM filesystem data 'lupu-528JP' (bootable)

しかし、現在のLinux系OSではUSBメモリーでの起動を前提としたハイブリッドISOイメージが主流となっている。手元にあるもので確認すると2012年のPuppy Linux系のものがUSBメモリー未対応に対して、同年のUbuntu 12.04LTSのmini.isoが既にUSBメモリーに対応している(10.04LTSのものは手元にない)

$ file mini_12.04LTS.iso 
mini_12.04LTS.iso: DOS/MBR boot sector; partition 1 : ID=0x96, active, start-CHS (0x3ff,255,63), end-CHS (0x3ff,255,63), startsector 0, 56824 sectors

いわば、転換が必須と考えるのは、10年近いほどの時代遅れの考え方だが、一方Windowsでは、未だにただのISO9660のISOイメージが配布されている。既に普通のDVD-Rには収まらない5.4GiB(5.7GB)もの巨大なISOイメージを、USBメモリー前提では無い形式で配布しているのだ。

$ file Win10_21H1_Japanese_x64.iso 
Win10_21H1_Japanese_x64.iso: ISO 9660 CD-ROM filesystem data 'CCCOMA_X64FRE_JA-JP_DV9' (bootable)
$ ls -lh Win10_21H1_Japanese_x64.iso 
-rw-rw-r-- 1 root root 5.4G  618 00:44 Win10_21H1_Japanese_x64.iso

こういったWindows特有の時代遅れな状況を、当たり前のことかのように錯誤することで、Windowsユーザーがおかしな発言をしてしまうことは、USBメモリーからの起動の可否の文脈でもよく見られるものだった。

部分的にはLinux系OSのほうが先を走っていることを、多くのWindowsユーザーは認識していない。

ただ、費用的な問題が少しあるのは事実で、対象とするパソコンがDVDドライブ搭載であれば、円盤で解決するという提案も安上がりだとは言える。

何より、Windows PCがある場合、標準のISOBURN.EXEでインストールディスクの作成ができる。(ISOBURN.EXEはエクスプローラーによるISO書き込み機能の実体)

なお、私が使っているmicroUSB端子を備えたUSBメモリーは当時二千円以上していた。現在も1000円前後、type Cのものは千数百円で販売されていて、DVD-Rのほうが安いことは間違いない。

もっともネットカフェでDVD-Rを書き込んできたり、付属ディスクをあてにLinux雑誌を購入すれば、必ずしも安く済むとは言えなくなる。

もちろんLinux系OSに慣れていない人であれば、Linux雑誌を購入すること自体は推奨できる。ただ、技術者でもなければ誌面の大半の記事は無意味で、割高感が高いのも間違いない。

ゆえにmicroUSB端子やtype C端子を備えたUSBメモリーを購入することも、悪くない選択肢だと言えるだろう。

インストールディスクとして使った後は、ほかの用途に転用することも可能だし、インストール後のDVD-Rよりは価値があるはずだ。



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