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予定通りの旅行に飽きた時のための、不確実性と不便さを味方につける方法

過去に行った旅行を思い出してみてください。旅している間、ずっとワクワクしていて、今でも鮮烈な記憶が残っているような印象的な旅があったと思います。一方で、計画していた通りには進んだものの、出発前の期待を上回るほどには面白くならなかった旅もあると思います。この違いはどこから来るのでしょうか。それは、旅行にとって重要な要素である「発見」の量と質が関係しているのではないかと思います。

旅の楽しみの基本は「発見」すること

旅を楽しさの基本は、何かを「発見」することだと私は考えています。

見たことのないような美味しい食べ物や綺麗な景色を知ったり、自分が慣れ親しんでいるのと全然違う文化に触れたりするのは、まさに新しい世界を発見する体験です。一方で、旅を通して自分自身について新しい一面を発見することもあります。例えば、旅先では日常生活とは異なる環境に置かれるため、意外に自分は不測の事態でも臨機応変に対応できるんだなとか、普段は内向的だけど旅先では社交的に振舞えるんだなとか、気づくことがあるでしょう。逆に、得意だと思っていたことが全然そうでもなかったとわかることもあるかもしれません。

そんな、外の世界についての発見自分自身についての発見の両方がたくさん得られて、さらにその発見の質も高ければ、その旅の満足感が強くなるのではないかと思います。

「不確実」と「不便」が発見を生む

そこで、どうすればそんな「発見」が多い旅ができるのか、ということなんですが、私は「不確実」と「不便」が重要な要素だと考えています。

まず「不確実」について説明します。私たちは通常、旅行に行く前に現地のことをある程度調べて、「この絶景を見に行こう」とか「このレストランでご飯を食べよう」とか具体的に計画を立てますよね。でも、もし旅行中に本当に事前に計画していたとおり、事前に知っていた情報のとおりのことしか起こらなかったら、それは「新しい発見」としては物足りないと感じるかもしれません。むしろ、事前には予定していなかったことが起こったり、あるいはそもそも何が起こるかわからないという不確実性があることで、旅がより魅力的になるのではないでしょうか。

また、不便さも重要な要素だと思います。旅行ではない日常生活においては、不便なことなんてできるだけ少ない方がいいですが、旅においてはそうとも言えないのです。例えば、言葉の通じない場所で会話をするのは労力が要ることですが、自分のコミュニケーション能力や、他の文化との共通点や違いについても発見するいい機会になります。日本では簡単に手に入るような便利な道具や施設がないような場所では、どうやって代用しているのか、そもそもその道具の役割の本質は何なのかについて考えさせられるでしょう。

もちろん、不確実さや不便さは大きければ大きいほどいいというものではありません。全くのノープランで事前に何も準備しないで行くと、そもそもやりたかったことが何もできずに終わるリスクがあるし、何が起こるかわからないという不安が強すぎては、旅を楽しめなくなってしまいます。また、不便なことが多すぎると、旅の目的ではないところにエネルギーを使いすぎて楽しむ前に消耗してしまいます。

なので、旅に適度な不確実性と不便さを取り入れるには、計画と柔軟性のバランスが大切だと思います。とはいえ、昨今の技術の進歩により、旅の不確実性や不便さはどんどん解消される傾向にあります。だからこそ、旅行者が意識的に「適度な」不確実性や不便さを取り入れる工夫をしないと、快適だけど面白みに欠ける旅になってしまうかもしれません。

では、どうやって旅に不確実さや不便さを取り入れればいいのでしょうか。私の経験からいくつかのTipsを書いておきたいと思います。

不確実性を高めるためにできること

まず計画を詰めすぎない

旅行の計画を立てるときは、全ての時間を埋め尽くすのではなく、ある程度の自由な時間を残しておくことをおすすめします。予定がガチガチに詰まっていると、現地で偶然面白いお店やイベントの情報を知ったり、その場で面白い旅のアイディアを思いついたとしても、生かすことができません。また、時間に追われていると、そもそもちょっと不確実性のあることをやってみようという気持ちもなくなります。スケジュールに余白があり、頭の中に余裕があってこそ、予期しない出会いや発見が生まれるものです。

一般的な観光スポットではない場所に行ってみる

もちろん、人気の観光スポットにはそれなりの理由があるので訪れておくべきですが、そういった観光スポットだけではなく、地元の人が集まるようなマイナーな場所にも足を運んでみましょう。

人気の観光スポットは誰でも確実に満足度の高い体験ができるように環境や設備が整えられているものですが、その分、体験が均質化されていて、不確実性の高い体験はしにくいとも言えます。人気ランキングには載っていないような現地の日常のスポットでこそ、万人が同じように体験できるわけではないその場限りの体験ができる可能性が高いと思います。

観光スポット以外にどんな場所に行くかのアイディアが無い時は、自分の趣味や興味から決めるといいと思います。例えば自分が漫画が好きなら現地の本屋やアニメショップに行ってみるとか。ウィスキーが好きなら現地のウィスキー好きの人が集まるようなお店に行ってみるとか。たとえその地域でそんなに盛り上がっていないジャンルだったとしても、現地の数少ない熱心なファン達がどんな風に楽しんでいるのかを見るのは面白いと思います。

現地の人と会話する

新しい人との出会いはまさに不確実性を高めてくれます。レストランやお店の店員さんなどでもいいので、旅先で出会う現地の人たちとコミュニケーションを取ってみると、そこから新しい出会いが広がる可能性があります。日本の、特に都市部だと、店員さんとは必要最小限の会話しかしないことが多いですが、海外だと相手の持ち物とか服装をほめるような(「そのTシャツ良いね!」みたいな)ちょっとした会話を挟むことがよくあります。

現地の人と何か会話したいけれど特にきっかけがないという時、私はとりあえず店員さんにおすすめの商品(レストランならメニュー)を聞きます。たいていの場合、お店の人は自慢の一品を買ってもらいたいので、快く説明してくれます。そこでさらに質問をすれば話が広がっていくわけですが、この時、自分の好みやどういうものを求めているかを説明するのがポイントです。ここでいくらかの自己開示をすることによって、単なる事務的なやり取りではない、人間対人間のコミュニケーションに発展する余地が生まれるのです。もちろん、毎回楽しい会話に発展するわけではありませんが、少なくともおすすめ品の情報は手に入るので、それだけでも得るものはあります。

この流れである程度意気投合した店員さんに、他のおすすめのお店を聞いてみるのもいいですね。レストランの店員さんにおすすめのバーを聞くとか、おしゃれなショップの店員さんにおすすめのスイーツの店を聞くとか。センスの良いお店の店員さんは他の良いお店にも詳しいもんです。こうやって偶然の出会いを広げていきます。

また、現地の人ではないですが、他の旅行者に話しかけてみるのも、不確実性を取り入れるいい機会になるでしょう。特に海外を旅行している時は、異国にいる者同士で立場が近い上に旅という共通の話題もあるので、話もしやすいです。長距離の列車やバスでの移動中は、他の旅行者も退屈して面白い話ができる相手を求めていることがよくあります。また、現地で何かの見学やアウトドアのアクティビティなどに参加している時は、他の参加者も盛り上がった気持ちをシェアしたくなっているので、軽い挨拶から楽しい会話が始まるかもしれません。筆者の経験上では、フェスティバル等イベントの会場や、ハイキングなどの一人で参加することも多いアクティビティでは、すぐに打ち解けやすく、楽しい話ができることが多いです。

人に話しかける上でのポイントは、相手の反応が悪くてもあまり気にしすぎないことです。相手があまり話したくなさそうだったら、さっと切り上げてまた別の人に話しかければいいのです。

目的地を決めずにぶらぶら歩く

日程に余裕があれば、特に目的地を決めずに街をぶらぶら歩いてみる時間をぜひ作りたいです。まず、その街の中心となる場所(駅や大きな広場など)まで移動して、そこからとにかく面白そうな方向、わくわくする方向に歩き出しましょう。道を気ままに進んでいくうちに、偶然素敵なお店や景色に出会えたりするかもしれません。道に迷うことすら新しい発見のきっかけになり得ます。

私は、初めて訪れる都市では少なくとも滞在期間の3分の1ぐらいは、気ままな街歩きに当てるようにしています。例えば、その街でどんなものが流行っているかに気づいたりとか、旅行者があまり使わないような公共の施設(図書館とか小さな公園とか)が意外に充実していることを知ったりとか、色々な発見があって面白いです。

不便さを高めるためにできること

言葉(英語)の通じにくい場所へ行く

言葉が通じないからこそ、ジェスチャーや表情、限られた語彙を使ってコミュニケーションを取ろうとする経験は、自分自身の新しい一面を発見するチャンスになります。最近は大抵の観光地では英語が通じることが多いですが、国によってはまだ全然英語を話せる人が少ないところもあります。そういったところに行って片言の現地語で会話するのは、コミュニケーションにおいて本当に重要なのは何かに気づいたり、不自由な状況で自分がどれぐらい上手く立ち回れるのかを発見するいい機会になるでしょう。

また、現地の人達が英語を話せる場合でも、あえて現地語でのコミュニケーションにトライしてみるのもいいかもしれません。全然勉強していなかったとしても、スマホの助けを借りればある程度何とかなります。日本人もそうですが、自分たちの言葉を一生懸命に話そうとしている外国人を前にすると、親近感を感じてしまうものです。現地の人達とより心理的な距離が近くなって、現地の文化を一段深いところまで理解できるようになるかもしれません。

公共交通機関を使う

タクシーやツアーのを送迎を使うと楽ですが、あえてバスや路面電車など、現地の公共交通機関を利用してみましょう。路線図を解読したり、降りる駅を見つけたりするのは大変かもしれませんが、それも旅の醍醐味です。外国の場合、国によっては日本より不便なシステムを使っていることもあれば便利なシステムを使っていることもあり、それを体験するのもまた発見があって面白いです。ただし、国によっては公共交通機関を使うのが危険な場合もあるので、その点は注意が必要です。

文化的な共通点の少ない地域に行く

自分の育った環境とは全く異なる文化圏を旅することで、自分の常識が通用しない状況に置かれます。戸惑うこともあるでしょうが、異文化を受け入れ、適応しようとする過程で、自身のサバイバル能力も問われますし、価値観を問い直すきっかけにもなるはずです。

日本の都会に暮らしている筆者の経験上では、インドや南米などの地理的にも国の経済レベル的にも差が大きい場所ではもちろん文化の違いを激しく感じますが、国内でも離島や山間部などの地域に対しては、やはり違いを感じます。人口が少なくて他の街とも距離が離れているけども自然との距離は近い、というような地域には、やはり独特の文化や価値観があります。

注意点

不確実や不便を取り入れるということは、少しずつ危険が増えるということでもあります。偶然性を楽しみながら安全に旅するためにも、下記の点には気をつけましょう。

  • 危険なエリアには近づかない。危険なエリアは事前に調べて迷い込まないようにする。特に危険だという情報がない場所でも、見た目から危険な雰囲気を感じたら引き返す。

  • 怪しい人にはついていかない。基本的に路上で向こうから話しかけてくる人は怪しい。怪しい人が紹介する店にも行かない。

  • 体調が悪い時には無理しない。旅先ではちょっとしたことで体調を崩しがち。体調が良くない時はできるだけ楽な方法を選んでしっかり休む。体調が悪いと危険に気づきにくくなるし、そもそも不確実や不便なことに対して前向きに楽しめない。

終わりに

旅を通じて得られる「発見」は、日常生活に戻った後も長く心に残ります。不確実性と不便さは一見すると避けたいものですが、実は旅を豊かにするための重要なスパイスです。これらを上手く取り入れることで、自分にとってより深い意味のある旅、忘れられない旅を実現することができるんじゃないかと思います。私もいい旅をもっとしていきたいです。

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