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息子の変声期

小6の息子が変声期を迎えている。小さくてかわいかった坊やが大人になっていく様は、嬉しくもあり寂しくもある、と言うのは世の中のほとんどのママたちの気持ちだろう。

息子も息子で、

『あのさ、みんながちょっとずつ大人になっていくよ。なんか嫌だなぁ。』

と言ってきた。

母『どんな風になってきてるの?』

息子『あのね、わき毛が生えてきたりとか。』

母『えー、そっかあ。どうして嫌なの?』

息子『う〜ん。なんか寂しいな。』

母『それママもだよ。それに君もみんなといっしょに大人になるんだから寂しくないじゃん。』

息子『う〜ん。ずっと子どもがいい!』

そんな会話をした。かわいい。わたしも同じく小6の時に、女子が大人っぽくなっていくのが真剣にイヤだった。ピンク色の甘酸っぱい匂いが濃くなっていくような感じ。そして、自分も同じように女性へと変化していくことに何とも言えない気持ち悪さを覚えた。早く赤ちゃんが欲しいと言っている女子までいて、クラクラ目眩がした。

その時から、あ、わたしって中性なんだなぁと思った。恋愛対象は男の子だけど、自分だけは女性というカテゴリーに入っていない、入りたくないという感じ。中学生になっても体育会系女子とわーわーキャーキャー鬼ごっこしたり、ジャージで相撲するのが好きだった、笑。今思うと、女性という性に飲み込まれてしまうことに逆らっているかのようだった。


実家に帰った時に、親戚で集まり4つ上の従兄弟と再会した。


長女だったわたしは、お兄ちゃん達の存在が嬉しくて、近所に住む従兄弟の兄弟と野山をかけずり回って遊んだ。島だったので、海に魚釣りに行ったり、田んぼにカエルの卵やメダカを探しに行ったり。

3年生の夏、いつものように弟と従兄弟たちと磯釣りに出かけた。私は足を滑らせ潮溜まりにハマって、スカートもパンツもびしょびしょになった!

濡れたパンツをずっと履いているのが、あまりに冷たくて、誰にも気付かれていないはずと、帰り際パンツを脱いで従兄弟のかつぐタモ網に、こっそり丸めたパンツを入れた、笑。

弟に、姉ちゃん何それ?って聞かれたけど、ハンカチ、と答えた。誰かにそのうちパンツだと気付かれるんじゃないかと、かなりドキドキしながら、そして網の中に丸まったパンツ、自分で入れたにもかかわらず恥ずかしすぎて一言もしゃべらずに歩いた。

従兄弟はすでに中学生だった。物心付いた時から自分も男兄弟の一人のつもりで遊んでいたのだが、異性であることがだんだんと際立ってきて、もうそのパンツびしょ濡れになった事件の日からなんとなく、あまり一緒に遊ばなくなってしまった。


それから数十年が経過した。

先日、その従兄弟が、あの日の濡れたハンカチ(パンツ)のことを話して来た。あの時、タモ網に入れたのはパンツだったことを知っていた!笑笑。すべてを知っていながら黙っててくれて、パンツ濡れてウケるわ〜と思いながら、笑い堪えながら帰ったことを話してくれた。

ずっと一緒に遊んでいたかったのに、異性であることを意識して遊べなくなってしまったことも、もしかすると女性へと変わる自分を拒否することに繋がったのかもしれない。

子どもの成長を見守ることで、自分の子供時代を追体験する。当時は何てことのない、大人になるまでの積み重なる日々だと思っていたことも、しっかりと記憶され、鮮明に蘇る、自分を構成する確かな一つとなっていることに気づく。

みんな大人になってからもそんな大切な一日一日を送っている。みんなの大切な一日のなかに、少しでも笑顔でいられる時間、幸せだなって思う瞬間が散りばめられますようにっ。


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