「とり文庫」vol.9
こんばんは、かつらいすです。
このたびは千原こはぎさん企画・発行のネットプリント「とり文庫」に参加させていただきました。
わたしは短歌の穴埋め問題をつくりました。このページの最後に答えを載せていますので、解いていただいたかたはスクロールして答え合わせをしてみてくださいね。
「とり文庫」vol.9のテーマは『早春』でした。とても素敵な方々とご一緒できて嬉しかったです。ここからは、読者としての感想です。
電話では見つめる砂が一緒ってそんな遊びをきみはしてたね /雨虎俊寛「時のグラスを傾けて」より
小さくてかわいらしい早春の花、スノードロップが登場する雨虎さんの詩と短歌には、ほんのりとせつない恋がやさしく描かれていました。
うつむき気味に咲くスノードロップや、おそろいの砂時計、切れかけの蛍光灯など、ひとつひとつのアイテムから想いを馳せて、読んでいるこちらも追体験しているような気持ちになりました。詩と、ジセダイタンカの連作がリンクしているところもよかったです。
「でもほら、こうやって二番目につけたら第二ボタンじゃん」 /泳ニ「公園は春の話を聴いている土筆みたいなマイクロフォンで」より
タイトル自体が短歌というところがすでに素敵なのですが、この短編小説がまた良いです。制服の第二ボタンのゆくえに思わず微笑んでしまいました。
泳ニさんの短編はvo.9以外でも読めて、どれもとても素敵です。土筆は全部聴いていたんだなあ。
閉架ではおもに桜が公用語 /西村曜「早春賦」より
西村曜さんの短歌が好きなのですが、川柳もとても良いです。閉架とは、図書館のことでしょうか。利用者が自由に入れない書庫のなかでは、主に桜で言葉のやりとりがされている、未知の世界。そういえば、持ち出し禁止のマークは桜に似ていたような。なんだか不思議でおもしろいです。
ちなみに「とり文庫」vol.3の「春の花野」は俳句だったかな、そちらも好きです。
蒼天 細月を残して 陵上に絲杉有り 蓁蓁と枉気滿ちて 屹立すること峯よりもけはし /佐藤博之「Peintures de Vincent Van GOGH」より
※ すみません、「けはし」という漢字、調べてみたのですが手持ちのスマートフォンで変換できませんでした。「嶮しい」のかっこいい感じの字です。
書き下し文つきの漢詩で、音を味わいながら読みました。実はわたしも先日、美術館でゴッホの絵を見たのですが、月明かりのしたにそびえ立つような、うねうねと燃えているような糸杉に圧倒されました。
絵画から感じたことを詩にできる、というのが素敵なことだと思います。タンギー翁の肖像の短歌も温かい人柄が伝わってきて好きです。
ほんとうはいつでも正しくありたくてそろそろ離してくれませんか、手 /千原こはぎ「春に離れる」より
連作の一首目から、(これはあかんやつや、せつない、せつなすぎる……!!)と引き込まれながら読みました。めっちゃ、せつないです。春に離れる、というのは、離れてもそれぞれ暖かい場所に暮らしていける、ということなのだけれど、心の春と世界の春は、必ずしも同じではなく、そこがせつない。
きゅんとするストーリーが、好きです。
毎回、千原こはぎさんの短歌を読めて、ゲストのかたがたの作品もとてもすばらしく、フォントまでひとりひとりに合わせてデザインされている「とり文庫」、しかも20円でこの読み応えというお得感……!
千原こはぎさん、いつも素敵なネットプリントをありがとうございます!!
それでは、最後に今回の拙作の穴埋め短歌の答えを置いておきます。最後まで読んでいただいた皆さま、ありがとうございます。
冬眠の中にゆたかな海があり春がくるから探してほしい
蛙もそろそろ冬眠から起きたようです。みなさまもどうか素敵な春をお過ごしください。