親の呪縛
「似合わないから着替えて」
「太い脚」
「髪の毛変だよ」
「顔が丸いね」
小さい頃からずっとそうやって言われてきた。
容姿を管理するのも母親の仕事、と言わんばかりに。
「そうだよね」
「わかった、着替える」
「痩せないとね」
そう答えては、傷ついて悲しかった。
「先輩は明るい髪色が似合うよ」
そう言う後輩の言葉が青天の霹靂だった。
考えたことがなかった。
髪を明るくしたら、親はいつも顔をしかめた。
ずっと自分に似合うものが分からなかった。
ひとりで暮らすようになって
髪色も爪も服も、
お母さんが言っていた「似合わない」を選ぶようになった。
「買ってやれない、変だから」と拒絶されることがない今、本当は好きなピンクも、ギャルみたいなメイクも、厚底の靴も憧れだったし、地雷みたいな服も可愛くて好きなのを少しずつ取り入れるようになった。
たとえば、ピンク色の服だとか、フェミニンな服だとか、派手な色のサンダルとか、ささやかだけどそういうものを。
似合うかどうかが分からなくて、おどおどしながら人前に出る。
例えば今日髪を染めて、ピンクが強い髪の毛になった。
「可愛いよ、似合ってる。一番その髪型が好き」
髪の毛をさらさらと触りながら、友達はそう言ってくれた。
「本当に?ねえ、本当に似合ってる?わたし大丈夫?」と繰り返し聞いた。
「本当だよ、似合ってる」優しくそう言ってくれたのだ。
それでようやく、似合うんだと知れた。
わたしはまだ、選ぶのが怖い。
可愛くない、似合わない、変だよ
その言葉が怖いのだ。
友達ではなく、他の誰でもない、母の言葉がとてつもなく怖い。
大人になっても親の言葉は強力な魔法にかけられ、未だに抜け出せず、何かを手に取るたびに母の顔が思い浮かぶ。
どうか、どんなわたしでも「可愛いよ」「大好きだよ」そう言ってもらえますように。
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