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令和4年度 弁理士 特定侵害訴訟代理業務試験(事例問題1) 自作答案

はじめに

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本記事は、令和4年度特定侵害訴訟代理業務試験(いわゆる付記試験)の事例問題1について、勉強を兼ねて作成した答案です。

問題等は以下からダウンロード可能:

なお、内容はあくまで自分なりに作成した答案にすぎず、多くの誤りが含まれ、またより良い答案があることは確実です。その点ご理解のうえご活用ください。

問1

空欄1

(被告株式会社乙川製作所は、)別紙製品目録記載の製品を製造し、販売し、又は販売の申出をしてはならない。

空欄2

(被告株式会社丙山販売は、)別紙製品目録記載の製品を販売し、又は販売の申出をしてはならない。

空欄3

被告らは連帯して、金1,890万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

空欄4

本件発明は、高所作業等に使用されるハーネス型安全帯と従来の空調服を同時に使用することができないという課題(明細書段落【0004】)を解決するものである。この課題は、空調服の上からハーネス型安全帯を用いると、安全帯による圧迫の影響で空調服の冷却効果を発揮するための、空調服と身体の間における空気の流れが遮断されてしまい、また、ハーネス型安全帯の上から空調服を用いると、ハーネス型安全帯の背中部分にある命綱を取り出すために空調服の背中部分に穴を開ける必要があり、そのため空気が空調服の外へ漏れ出してしまう、という点にある。
本件発明では後者の形態を前提とし、命綱の取り出し穴から空気が漏れ出すことを防止するために、命綱の取り出し穴の形状を筒状にし(取り出し筒:明細書段落【0006】)、また取り出し筒の開口部に設けられた口紐によってこの開口部を緊縛し、空気の漏れ出しを防ぐことにある(明細書図4)。これにより、本件発明においては、取出し筒から空気が漏れるのを防止することができ、空調服内の本来の空気の流れを阻害することなく、その結果冷却効率を損なうおそれがない(明細書段落【0007】)
以上のことから、緊縛とは、字義的にはきつく縛ることを意味し、本件発明においては、取り出し筒の開口部から空気が漏れ出すことがないよう、開口部において紐を用いて命綱の周りを概ね密閉状態とすることを指すものと解される。

空欄5

前項で述べた通り、本件発明における緊縛とは、取り出し筒の開口部から空気が漏れ出すことがないよう、開口部において、紐を用いて命綱の周りを概ね密閉状態とすることを指す。
被告製品における実施形態、特に取り出し筒の開口部を緊縛する方法は、口紐を通しているコードストッパーを用いて筒部先端部分を収縮させることにより、命綱を固定して、命綱取出し筒の開口部を密閉している。
この実施形態では、紐の結び方、紐による開口部の締めつけ方に差はあるものの、開口部において、紐を用いて命綱の周りを緊縛することで概ね密閉状態とするものであり、緊縛により空気の漏れ出しを防ぐという作用効果においても本件発明と同一のものと解することができる。
従って、被告製品は構成要件Dを充足する。

空欄6

第1要件:対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと
第2要件:対象製品等との相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであること
第3要件:対象製品等のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであること
第4要件:対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではないこと
第5要件:対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないこと

空欄7

第1要件は「対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと」とされ、ここで、特許発明における本質的部分とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解される(マキサカルシトール事件)。
本件発明においては、従来の空調服との比較において、命綱を取り出す開口部を設けること、およびその開口部の一端を緊縛することにより空気の漏れ出しを防ぐこと、そしてこれらによってハーネス型安全帯と空調服を同時に使用することを可能にする点が、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する部分と解することができる(明細書段落【0007】)。
従って、開口部の一端を緊縛する方法それ自体は本件発明の本質的部分には該当せず、よって被告製品における実施形態は均等侵害の第1要件を充足するものである。

空欄8

第2要件は「対象製品等との相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであること」とされる。
「第4 文言侵害」の4(1)ないし(2)で論じた通り、本件発明において緊縛とは紐を用いて開口部における空気の漏れ出しを防ぐことを指す。
被告製品の実施形態ではコードストッパーを用いて筒部先端部分を収縮させることで緊縛を実現するものであり、本件発明において開口部の緊縛方法を被告製品の実施形態のものとした場合でも、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであることは明らかである。

空欄9

(1)被告乙川と被告丙山は、製造会社と販売会社という、同じ商品(すなわち被告製品)について同じ商流にある会社同士である。したがって、乙川と丙山は、両社各々が被告製品を扱うことによって当社特許権の侵害行為に至っただけというわけではない。
(2)乙川は丙山の完全親会社(乙川が丙山の発行済株式の全てを保有している)である。また、乙川、丙山にはそれぞれ3名の取締役がいるが、そのうち2名は同一で、さらにそのうちの1名が乙川と丙山の代表取締役を兼任する丁野花子である。
(3)乙川と丙山が異なる製品を扱うことは基本的になく、本件でいえば、乙川は、製造した被告製品を他者に譲渡することなく全て丙山に譲渡し、丙山は、乙川から譲受した被告製品を一般向けに販売している。このような商流で被告製品を製造、販売することは、専ら乙川と丙山の代表取締役を兼ねる丁野花子が決めたことであり、被告らは、丁野花子の決定のもと、被告製品の製造、販売という一連の侵害行為を共同して行っているといえる。

空欄10

(…特許権者が自らの特許権に係る発明を実施していなくても、)侵害者による特許侵害行為がなかったのあれば相当の利益が得られたであろう(という事情が存在する場合には、…)(ゴミ貯蔵器事件)

空欄11

(本件についてみると、)原告は、本件発明を実施した空調服は扱っていないものの、本件発明とは別の構成を有する同等の性能を備えた空調服を製造、販売している。被告乙川や被告丙山による被告製品の取扱いの開始により、原告が扱っている空調服の売上げは半分に落ち込んでいる。
従って、被告乙川や被告丙山が被告製品を販売することによって本件特許権を侵害した結果、被告が損害を被っていることは明らかである。

空欄12

被告乙川は、被告製品を1着あたり1万円で被告丙山に譲渡している。
被告製品1着を製造等するために必要な費用(材料費)は多くても5,000円である。その他の費用としては、一般的な人件費等といった被告製品の製造・販売に直接関係しない固定費用が挙げられるが、こちらは、被告製品1着あたりで敢えて計算すれば、1,000円となる。
そして、令和2年11月1日から令和4年4月30日までの間に、被告乙川は合計で少なくとも3,600着の被告製品を被告丙山に譲渡している。
従って、被告乙川が被告丙山に被告製品を譲渡したことにより被告乙川が得た利益は、少なくとも1,440万円(=(10,000ー5,000ー1,000)×3,600)を下らない。

空欄13

被告丙山は、被告乙川から仕入れた被告製品を1着あたり1万2,500円で一般向けに譲渡している。被告製品1着を販売するために必要な費用は仕入費のみで、これは前述のとおり1万円である。その他の費用としては、一般的な人件費等といった被告製品の販売に直接関係しない固定費用が挙げられるが、こちらは、被告製品1着あたりで敢えて計算すれば、1,250円となる。
そして、令和2年11月1日から令和4年4月30日までの間に、被告丙山は合計で少なくとも3,600着の被告製品を一般向けに譲渡している。
従って、被告丙山が一般向けに被告製品を譲渡したことにより被告丙山が得た利益は、少なくとも450万円(=(12,500ー10,000ー1,250)×3,600)を下らない。

問2

(1)ア

拒むことができる。
契約上「BからAへの移転登録に必要な書類の引き渡しは、Aによる代金の支払いと引き換えになされる」「Aによる代金の支払いは、B事務所で行われる」旨定められているが、Aは単に代金の準備ができたことを電話でBに通知したのみであり、債務の本旨に従った履行と言えない。
従って、同時履行の抗弁権(民法533条)により、Bは自身の債務の履行である書類の引き渡しを拒むことができる。

(1)イ

拒むことができない。
Bは必要な書類を準備した上でその受領をAに催告している。契約上書類の引き渡しはB宅で行われることとなっており、Bの債務は取立債務にあたる(民法484条第1項)。この場合、Bは書類の準備をした上でその旨をAに通知すれば履行遅滞を免れる(民法493条)。従って、Aは同時履行の抗弁権を主張することはできず、代金の支払いを拒むことができない。

(1)ウ

相殺は無効である。
Aに対する売買代金債権には同時履行の抗弁権が付着しており、またBは自己の債務である書類の提供を行っていない。このような場合これを自働債権として相殺することは、この同時履行の抗弁権を喪失させることとなりAに対して不利益となることから、できない。

(2)A

請求の認諾(民事訴訟法第266条)

(2)B

訴えの取下げ(民事訴訟法第261条第1項)

(2)C

同意(民事訴訟法第261条第2項)

(2)a

2.できない

(2)b

1.する

(2)D

和解調書(民事訴訟法第267条)

(2)E〜G

第91条第1項第2号

(2)H

強制執行(民事執行法第22条第7号)

(2)I

請求の放棄(民事訴訟法第266条)

以上

解答は以上です。

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