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サワガニ姫

2022.2.26更新

山の中で筍を見つけ、掘っていたら怒られた。

ツワブキも見つけ、採っていたら怒られた。

どちらも持ち主がいるんだ。
「それはウチの筍なんだよ!」

じゃあこれはどうだ?サワガニだ。
寄生虫のいるサワガニまで採るなとは言うまい。
俺は30匹ほど採って帰宅した。

「もしもし、旅のお方」
いや、旅はしてないが俺に話しかけてるな。
なんだ?サワガニ姫か?

「その通りでございます。ここにいるのは私の配下のサワガニ、命を助けてやってください。」

また戻しに行くのかよ!
だが面白いので疲れた体に鞭打ち、サワガニ達を戻してきた。

「ありがとう、この御恩は一生忘れません」

さて、その夜マンションのピンポンを押す奴がいる。さてはきたな?恩返し!

あの時のサワガニ姫でございます、というのは人間の身体にハサミとツメがついた化け物だ!

「おい!人間になりきれてねぇぞ!」

「失礼しました。出直します」
なんだこりゃ、随分マヌケなサワガニ一族だな!

「人間の写真か絵を見せてください」 
爪だらけのサワガニ姫は何かを見て変身の練習をするらしい。
「これが人体の図だ」俺が真面目な人体図を見せるとサワガニ姫は食い入るように見た。

「わかりました」
今度こそ綺麗な女性になれるか?
かなり期待して待つこと15分、「もういいですよー」と隣室から声がした。
「!!」

そこにいたのは裸の男だった。

「おい!それは男…人間のオスの格好だ!」

「あらまあどうしましょう!でも私、この格好が気に入ったんですのよ」

「とにかくあんたは女で姫なんだからそんなもんぶら下げないでくれ。」
「じゃあ女の人の写真を見せてくださいまし」

俺はその辺にあるチラシのモデルを指差した。
「こんな感じかな」
「わかりました」

隣室に消えた男のサワガニ姫はすぐ戻ってきた。

「これでいいかしら?」
そこにいたのは…スーパーのおばちゃんだった。

「いいよいいよ、とりあえずそれが一番無難かもしれねぇ」

「よかったわ」笑うサワガニ姫は妙に迫力があるのだった。

続く

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