働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」

2018/11月くらいに書いた記事です。
最近、神経科学の行き着く先を考えると結局知能という話になるのかなとか思ったりして、3周くらい回って人工知能面白いじゃん、みたいな気持ちに戻りつつあるので、懐かしいなぁとか思います笑

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働きたくないイタチと言葉がわかるロボット

どこで見つけたのか、多分Twitterで見つけたんだと思います。 

キャッチーなタイトルで、しかし扱う題材が面白そうで買ってみた。

物語はイタチが何故か汎用人工知能を作るために奔走する形で進んでいく。各章末には比較的専門的な説明が加わるので、詳しく知りたい人はそこをしっかり読むと良さそう。

最初は単なる自然言語処理の話しかと思ったが、著者は理論言語学と自然言語処理という2つの分野に居た人らしく、理論言語学的な内容も入っていた。

深層学習はブラックボックスの中身で何をやっているのか分からないと言われるが、それと対峙して(対峙するものなのかわからないが)理論言語学という分野に於いては、人がロジックを考えて「文章の意味とはどのようにして生まれるのか」と思考を巡らす。この過程が非常に対照的だが、しかし目的は同じであるところが面白い。

このイタチがなんとも怠惰で、楽をしようとして逆に辛いことになったり、という自分と重なる部分が多く(多くの人もそういう経験はあるんじゃないかと思うんだが)、非常に共感してしまったw なんとなく、この界隈の人々の元々のモチベーションを表現してるのかなとか。多分、筆者はイタチたちに研究しているときの自分の気持ちを重ねて物語を書いていたのではないかと思う。

BERT

汎用人工知能と言えばBERTと呼ばれる汎用言語表現モデルをGoogleが開発して最近話題になっている。おそらく、BERTの発表が早ければ上記の本でも紹介されていたのではなかろうか。深層学習だけでここまで来てしまったので、もしかしたら今回紹介した本の内容も多少はBERT後であれば変わっていたかもしれない。

Stanfordの読解力テストでヒトを完全に上回ったっぽい。

東ロボくん

新井紀子さんが東ロボくんで東大入試合格を目指していたが、数年前にリタイア宣言とともに「パターン認識じゃ真の読解力は作れない。むしろ日本の中高生はパターン認識くらいでしか問題を解いてないのでそれじゃ人工知能に負けるし、真の読解力を磨けてない日本の教育はアカン」(超意訳)といったことを主張し、当時すごく心に響いたのだが、それから高々数年でかなり良い精度の読解力に迫るものをGoogleが作ってしまったということになる。BERTのシステムはロジカルに意味が分かることとはまた違うようだが、データドリブンな帰納的な方法でもヒトに近い読解能力を得られることが分かってしまった。新井紀子さんの指す「不可能」を理解しきれていない可能性もあるが、あまり「不可能だ!」という言説にはあまり与しないようにしよう、とか思ったりしている。技術の進歩が速すぎて予測出来ない。 

人間がどんどん相対化されていくまさにそのプロセスの中で生きていくのはとても面白い。


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