UXDの基礎 Part2—無期限先物について
今回の記事は、UXD Protocolの本質的な概念についての2回目の投稿です。
前回の記事では、「金融派生商品」「デルタ」「デルタ・ニュートラル」の概念について説明しました。これらの講座的記事の目標は、技術的な詳細や数字を掘り下げず、直感的にUXDの素晴らしさを認識していただくことです。
この記事ではUXDをステーブルコインとして理解する上で欠かせない、無期限先物(PERP、Perpetual Future)契約について詳しく説明します。UXDとは、Solana上で無期限先物を利用して作られたステーブルコインであるからです。
先物
要約:先物契約とは、将来の一定期日に、契約締結時に決定された一定の価格で資産を売買する契約である。
「無期限」という言葉を加える前に、まず先物契約について説明します。二者間の先物契約は、ある資産をあらかじめ決められた日に、あらかじめ決められた価格で売買する契約です。
例えば私は1ヶ月後に、あなたからビットコイン(以下、BTCと表記)を50,000ドル(今日の価格は48,000ドル)で購入することに同意します。私たちの取引予定日は今から一ヶ月後で、予定価格は50,000ドルです。
では、このような契約を結ぶ理由は何でしょうか?先物契約は以下のような目的で用いられる傾向があります。
1.価格投機
もし私が、1ヶ月以内にBTCの価格が55,000ドルまで上昇すると考えた場合、この契約を結ぶことは理にかなっていると言えるでしょう。
なぜなら50,000ドルで購入しても、5,000ドルの利益が見込めるからです。
一方、あなたがBTCの価格が1ヶ月後に45,000ドルまで下がると考えている場合、あなたにとってこの契約を結ぶことは理にかなっています。なぜならその場合、あなたは私に50,000ドルでBTCを売り、5,000ドルを残し、別のBTCを45,000ドルで購入することができるからです。
先物契約では、2人が対等に反対方向の賭けをすることができます。
2.価格の固定化
例えば、私の甥っ子の誕生日が1ヶ月後に迫っており、誕生日には1BTCをプレゼントしようと思っているとします。なぜなら2013年に、甥っ子がある年齢に達したらプレゼントすると約束したからです。
1ヶ月後に1BTC必要なことは分かっていますが、今この瞬間に実際にBTCを買うお金はないので、最大でも50,000ドルでBTCを買えることを保証するため、あなたと先物契約を結ぶことができます。
一方、あなたは新しい車を買うためにBTCを売りたいのですが、あと1ヶ月は現金が必要ないと考えています。
あなたはBTCの価格が下がることを心配しているので、今日私と取引価格を50,000ドルに固定することにしました。先物契約は、将来二者間で行われる資産売買の価格を、今日確定することができます。
先物契約は、仮想通貨取引においては必ずしも現在実際に資産を保有していなくても資産の将来価格に賭けられるため、価格投機に利用される傾向があります。ただし、先ほどの先物契約の例では、1ヶ月後の期限日に、あなたは私へ1BTCを、私はあなたへ50,000ドルを送り、決済しなければなりません。
無期限先物
要約:無期限先物契約は、ある時点で資産を「決済」することなく、原資産に対してエクスポージャーを得る方法である。
先物契約について理解したところで、「無期限(Perpetual)」という言葉を付け加えましょう。上の例では、期日と事前決定価格を持つ契約で、期日にBTCと現金を交換(決済)する必要がありました。
無期限先物は、(1)期日をなくし (2)事前決定価格を市場価格に置き換え (3)決済を必要としない、価格投機の最も純粋な形態です。
この純粋な投機的要素が、2021年の年間取引高が数兆円に上るという、これらの契約の絶大な人気を説明しています。
その仕組みとはいったいどのようなものなのでしょうか?
Mango Marketsなどのデリバティブ取引所で、「BTC-USD」の無期限先物のポジションを持つことにしました。
このポジションを取るには、証拠金という形で担保を提供する必要があります。証拠金は、私が取引で大きな損失を出しても、発生した損失を支払うための十分な資金があることを取引所に保証するものです。
無期限先物は「デルタ契約」であると言えます。
もし私が1BTC分の担保でBTCの「20デルタ」にエクスポージャーを持ちたいと考えており(20倍のレバレッジでBTCをロング)、あなたが1BTC分の担保でBTCの「ー20デルタ」にエクスポージャーを持ちたいと考えている場合(20倍のレバレッジでBTCをショート)、我々はBTCの価格変化の20倍を相手に支払うというデリバティブ契約を今日結ぶことで合意できるのです。
お互いに1BTCを担保に入れることで、損失が大きくなった場合でも相手への支払いが行えることを保証します。この場合、レバレッジが20倍なので、BTCの価格が5%変動しただけで、どちらかが1BTCの損失を被る ( 20BTC × 5% = 1BTC ) ことになり、つまりBTCが5%変動したら、どちらかが相手の1BTCを受け取ることになります。
しかし5%以上の変動があった場合、相手の支払いを保証することはできません。
そこで契約開始時には、1BTCを超える損失を防ぐために、あなたと私の間の無期限先物契約は、以下2つの条件のうちの1つが起こるまで「永遠に」継続することに合意します。
条件1:BTCが5%上下する
レバレッジが20倍であるため、価格が5%動いた場合はどちらかが初期証拠金である1BTCを全額相手に支払わなければなりません。
条件2 : どちらかがデリバティブを他者に売る
これは、あなたまたは私が取引を終了して、他の人にポジションを売るということを意味します。このオプションを行うには、決済取引が必要であることに注意してください。
例えばBTCが2%下がった場合、私は20倍のレバレッジ(20デルタのポジション)をかけていたので、「2% × 20BTC = 0.4BTC」の負債があることになっています。
そこで、私はあなたに0.4BTCを支払い、この新しい価格で私の代わりに20デルタのポジションを取る人を探します。
無期限先物の実践
実際には、MangoMarketsのようなデリバティブ取引所にとって、無期限先物の市場を作る最も簡単な方法は、「バーチャル」BTC取引市場を作ることです。
通常のBTC市場では、ユーザーは市場に参入して「3BTCを買う」といった注文を出し、この3BTCの代金を支払ってウォレットに3BTCを受け取ります。
その代わりに、「バーチャル」BTC取引市場を設立し、人々がBTCの注文を出すことができ、BTCの代金を直接支払うのではなく(売却する場合は代金を受け取ることなく)、「バーチャル」取引市場が全員の「購入」「売却」BTCを追跡すると考えてみてください。
バーチャル取引市場から退出するには、ユーザーは売買したBTCの損益を決済しなければなりませんが、実際にBTCを送ったり受け取ったりすることはありません。したがって、この市場はユーザー同士が直接BTCを交換するのではなく、ユーザーの仮想的なポジションからの利益と損失のみを決済することになります。
バーチャル市場はすべての人のBTCのエクスポージャーを追跡する、「架空の台帳」と考えることができます。
先程の例で言えば、あなたと私がそれぞれ「20倍」と「-20倍」レバレッジをかけたい場合、次の手順を踏むことが出来ます。
私はバーチャルBTC市場に参入し、証拠金担保として1BTCを預けます。
20BTC分の現金を持っていなくても、「バーチャル」BTC市場に、仮想市場でのその時点のBTC価格で20BTCを「買う」注文を出すことができます。
私の損益はBTC価格の変化の20倍動くことになります。BTCの価格が1ドル動くごとに私のポジションの価値は20ドル変化します。
私は、2つの条件のうち1つが起こった場合、市場から「退出」させられます。
BTCが5%下がり、1BTC ( = 20BTC × 5% ) を失い、証拠金担保を失った場合
私が所有するバーチャルの20BTCを仮想市場で他の人に「売却」することにした場合
結論から言うと、これはまさに「デルタ契約」で説明した通りになります。この仮想的な市場を通じて、BTCの20倍のエクスポージャーを得ることができました。
契約の終了条件は上記と全く同じで、自分がすべてを失うか、他の人に売ることにした場合は契約が終了します。このような「無期限先物契約」は実際に行われています。
ファンディングレート(資金調達率)
しかし、上記のバーチャル市場の構築には少し問題があります。このバーチャル市場では誰かが売買するたびに、このバーチャル市場のBTCの価格が変化します。
買いたい人、売りたい人が多すぎるとこの市場のBTCの仮想価格が実際の市場価格と乖離する可能性があります(他の市場と同様、需要と供給で市場価格を決定しているため)。
無期限先物は原資産であるBTCの価格に正確に追従させたいため、それでは困ります。
そこで実際のBTCの価格から大きく乖離しないようにするための仕組みが必要となります。
仮想価格を市場価格に近づける仕組みをファンディングレート(資金調達率)と呼びます。
ファンディングレートを理解するためには、そもそも仮想の価格が市場価格からどのように乖離するのかを理解することが近道です。
仮想価格が市場価格を上回っている場合、バーチャル市場で多くの人がBTCを買いたいと考えていることを意味し、したがって価格を押し上げることになります。
多くの人がこの仮想市場でBTCを買いたいと思えば(例えば大半の市場参加者が価格が上がると思っている場合)、仮想価格は実際の市場価格より高くなるかもしれません。
一方、このバーチャル市場でBTCを売りたい人が多ければ、仮想価格が市場価格を下回る可能性もあります。
バーチャル市場のファンディングレートは、人気のあるポジション(例えば買い)から人気のないポジション(この場合は売り)へ定期的に支払われるものです。この支払の頻度はデリバティブ取引所によって異なりますが、仮に8時間ごとだとしましょう。すると8時間ごとに、仮想価格が市場価格を上回っていれば、BTC無期限先物を買った人が、無期限先物を売った人に支払いを行います。
例えば、BTCの仮想価格が48,200ドル、市場価格が48,000ドルだとすると、この仮想市場でビットコインを「買った」人は、売った人にこの8時間の支払いで合計200ドルを支払うことになります。代わりに仮想価格が50,000ドル、市場価格が48,000ドルだった場合、ファンディングレートの支払いは2,000ドルとなります。価格が動けばファンディングレートも変動します。
実際のところ、ファンディングレートの計算式はもっと複雑ですが、直感的に理解していただくための説明としてはこれで十分です。
ファンディングレートの考え方は、市場参加者が取引所で逆のポジションを取り、仮想価格を市場価格に近づけるインセンティブを与えることになります。
例えば、私がBTCは今後数時間あまり動かないと考えた場合、200ドルの支払いを回収するために取引所で1BTCを「売る」ことは理にかなっていると言えるかもしれません。
私がバーチャル市場でBTCを売れば価格は下がり、ファンディングレートによる「裁定(アービトラージ)」がなくなるまで、他の人々もそうし続けることになります。
つまりファンディングレートは、無期限先物契約の価格が原資産の価格と一致するようにするという目的を持っています。
無期限先物の例
佐藤くんは、Mango MarketsにおけるBTCの価格に5倍のレバレッジをかけることにしました。デリバティブ取引所に行き、"BTC-PERP "をクリックし、証拠金としていくらかの担保、例えば0.5BTCを預けます。
そして、バーチャル無期限先物市場で2.5BTC(証拠金の5倍)を「買い」ます。これは、約12万ドル分のBTCを約48,000ドルの価格で購入したことになります。
なぜなら、彼はBTCを買い、BTCの仮想価格は現在の市場価格を上回っているからです(執筆時、市場価格が48,355ドルであるのに対し、無期限先物価格は48,383ドルです)。Mango Marketsは1時間ごとにファンディングレートを支払いが発生するので、仮想価格が市場価格を上回るごとに、佐藤くんは支払い義務を負うことになります。今日のファンディングレートの平均支払額は0.0003%であり、1時間ごとに佐藤くんは以下の額を支払うことになります。
1時間あたり0.36ドル、1日あたり8.64ドル、1年あたり3153.6ドル(ファンディングレートが変動しない場合)
ファンディングレートが30日間一定で、BTCが5%上昇したとします。30日が過ぎた時点で、佐藤くんの総利益はいくらになるでしょうか?
利益 = (5% × 120,000ドル) -(0.0003%) × (120,000ドル) × (24時間) × (30日) = 5740.80ドル
彼の最初の入金額0.5BTC(24,000ドル)に対して、30日間で約24%のリターンとなりました。この期間、単に0.5BTCを保有していた場合得られたであろう5%のリターンと比較してみてください。
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公式ウェブサイト:http://uxd.fi/
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