かばん2023年11月号評 5首選
かばん2023年11月号評を書かれている雛河さんが選んだ歌の中から5首を選んで、二人の評を比較したりしながら、自分なりに歌の世界に近づいてみたいと思います。
まずは、雛河さんとぼくが共通して選んでいた2首について。
ほじくったあとのキウイの皮くらい頼りない助け舟だけど出す 岩倉曰
「頼りない助け舟」が「ほじくったあとのキウイの皮」であるところに、二人とも反応しています。
でも、その助け舟は無駄じゃない、という読みで共感しています。結句の「だけど出す」という、やむにやまれない感情のあふれ方が、その教官の源じゃないかと感じています。
ものすごく態度の悪いレジ係 無理していないから大丈夫 島坂準一
上の句の「レジ係」に驚きながらも、下の句の「大丈夫」に至る作者のまなざしに共感しています。
短歌に込められるポエジーは、反転の目線というか、突き放されてしまう物事や人に対して包み込もうとするエネルギーの放出として現れることもある。それは、自分を許す行為でもあるような気がします。
3首は、雛河さんが選んだ中から、気になった歌を選んで、感じたことを書いてみたいと思います。
正しいこと言うのはすごい簡単だ誰も見てくれない逆上がり 夏山栞
逆上がりがすぐにできなくて、放課後ひとりで鉄棒にしがみついていたことを思い出しました。やっとできるようになった瞬間は、誰も見ていなかった。「できた」という事実の裏側に、数えきれない「できない」が埋もれている。その埋もれているものの重さが、雛河さんが指摘する「重力」なのかもしれない。その重力を感じて「正しいこと」を言おうとすると、難しいものだ。
凡長な地球の歴史から見ればわたしは一瞬、岩はまずまず 小野田光
「凡長な」で地球の歴史をかたずけてしまう衝撃の初句。「岩はまずまず」と「わたし」が思っているところが、ぼくも面白いなと思います。よくよく考えてみると、「わたし」は、地球の歴史も俯瞰して見ているわけで、自分より長い年月をかけて生まれた岩も「まずまずだよね」と褒めて?いると思うとかなりスケールが大きな歌に見えてきました。
YouTube二倍速にて視る人の時間二倍に伸びるものかな 大黒千加
こういう視点は大事かなと思いました。意味の二重性が自然に感じられるような歌は、狙ったか結果論かという技術的な観点から読むだけではなく、読み手として「動き」のある歌として読めるのが、醍醐味なんじゃないかなと思います。その醍醐味を感じて「おもしろい」と思う心こそナチュラルなのではないかと。
以上でした。書かれた評について反応する評もあっていいよね、という点に共感して書いてみました。
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