「おっさんずラブ 」ドラマと企業のコラボとそのメリット・宣伝戦略について

テレビ朝日で放送の「おっさんずラブ in the sky」をピーチの宣伝戦略の点に注目してウェブ記事をもとに纏めたものです。(執筆は2019年11月初旬のものです)

はじめに

(ここでは、2018年に放送された「おっさんずラブ 」をシーズン1、「おっさんずラブ in the sky」をシーズン2、また「ピーチ航空」をピーチとする)この11月2日より、「おっさんずラブ 」シーズン2の放送が始まった。前作、「おっさんずラブ」シーズン1は、視聴率としては平均4%ほど振るわないものであったが、SNS上で話題となり、その続編にあたる映画化がこの夏公開された。
そして映画公開中の2019年9月27日「おっさんずラブ in the sky」としてピーチ航空の協力のもと、シーズン2が放送されると発表された。ここでは「おっさんずラブ」 シーズン2と企業のコラボ、またその宣伝戦略という観点からまとめてみる。

ここでまとめたこと

人気ドラマであった前作の「おっさんずラブ」シーズン1のファン層はピーチのターゲット層に合っていたこと、SNSで人気となり大きなフォロワーを抱える同ドラマのフォロワーはピーチのターゲット層の一致するがゆえに、同じく広報戦略として成功例を持ちSNSに力を入れているピーチとしても理想的なターゲット層であった。

また元からのファンだけではなく、人気ドラマの続編として注目度が高く、関東方面への就航が発表されたタイミングでのドラマ開始は知名度も上がることも期待される。同ドラマのコアなファンのような顧客層、つまり何度もピーチを利用してもらえるような、特に女性の顧客を取り込むのが、より最終的な狙いと思われる。

また、その発表のタイミングも関東方面への就航拡大のタイミングを意識したと伺える点もある。それらを踏まえて、以下にまとめる。


人気ドラマと企業のコラボ:そのブランディング戦略

まず、人気ドラマと企業のコラボ:企業のブランディング戦略について述べる前に、この夏「ランウェイ24」という朝日放送テレビ(ABCテレビ)の制作により2019年7月7日から9月22日まで放送されたドラマに注目したい。

プロトタイプ?「ランウェイ24」

ピーチの全面協力のもと、よりピーチやLCCについての理解が深まる内容に

「ランウェイ24」は航空会社・Peachを舞台に副操縦士として働く主人公が、信頼される“グレートキャプテン”を目指していく姿を描いたドラマで、ピーチ航空が全面協力して制作されたドラマである。Peachで働く人々の実際の業務やエピソードに基づいて描かれているという。

朝日新聞Digitalの記事によると、ドラマに登場する制服はもちろん、機体、パイロットが実際に使用している訓練施設、シミュレーターも実際のものを使っており、「安全を最優先しながら、どう低コストを実現しているのか。ドラマを通じて知ってもらえるはず」と語っている。

加えてFly Teamのウェブサイトによると、ピーチはこのドラマのためにホームページを立ち上げており、以下のように紹介している。

ピーチがLCCとして、年間通して手ごろな運賃を提供するためのさまざまな「やりくり」が紹介されています。ドラマとあわせて見ることで、よりピーチやLCCについての理解が深まる内容となっています。

ピーチ航空による「ランウェイ24」特設サイト

次に、ピーチやLCCについての理解が深まる内容として、ここで「ピーチの秘密」として上げれている項目にも注目したい。
というのも、これらの項目が企業がコラボした目的として、視聴者に注目してほしいポイントである。ドラマでもある程度強調してストーリーの中で描かれる可能性が高いと予想されるからである。

 1. 「格安」航空会社とよばないで
 2.  これ、段ボール製!? 最速・最安・最軽量のチェックイン機
 3. 【interview】安全な空の旅を描くグレートキャプテン
 4. 関西空港にPeachの映えスポットあり!
  実はコストマネジメントの秘密がここにも。。
 5. コンセプトは空飛ぶ「電車」。
 6. 【interview】気軽な運賃の設定を操る女性職人
 7.  独自の機内アナウンス
 8.  機体は全てピカピカの新造機!
 9. 【interview】日々の安全運行を支える地上のパイロットディスパッチャ
 10. Peachで〇〇しました
 11. それ、おもろいんちゃう?な機内食
 12. 【interview】日本発のLCCの客室乗務員

ピーチは脚本の監修も行うことも発表しており、上記のような点がアピールポイントとしてどのように物語に関わってくるか、注視しながらドラマを見るのも一つのドラマの見方かもしれない。

登場人物の比較

次に、現在確認できる主な登場人物を「ランウェイ24」と「おっさんずラブ」シーズン2で比べてみたい。
ドラマ中に出てくる登場人物は、物語の核となるものであり、ドラマ内で何を描きたいか、また描くことが出来るかを示すものであるため、非常に重要なポイントである。

【ランウェイ24キャスト
 ・客室乗務員(3名)ジェンダーレスな客室乗務員も
 ・パイロット(グレートキャプテンを目指す主人公)
 ・副操縦士(2名)
 ・ディスパッチャー
 ・CEO
 ・和菓子屋職人(社外)

【おっさんずラブ】シーズン2キャスト
 ・客室乗務員(3名)
 ・パイロット “グレートキャプテン”
 ・副操縦士
 ・整備士(2名)
 ・広報担当社員
 ・客室乗務員
 ・ディスパッチャー

現時点でウェブページで紹介されている登場人物を比べてみると、ここではっきりわかる違いはランウェイ24は社外の登場人物がいることで、主人公の恋人役でもあり主要人物の一人である。

一方、おっさんずラブシーズン2を見てみると、社外の関係者が主要人物として存在せず、主に職場、その職場を中心とした舞台を背景に描かれるだろうという事が想像できる。また、おっさんずラブ シーズン2の方が同じ会社内での役職が多岐に渡っており、より社内での出来事や内容がドラマ内で描かれることが予想される。
他にもディスパッチャー、整備士、広報担当者などの職名があることから、社内で実際に起こったエピソードなどをこれらの職種を通した観点から盛り込まれる可能性が高い。

”グレートキャプテン”とは

また、ここで登場人物について一般的にあまり聞きなれない言葉について注目したい。”グレートキャプテン”という言葉である。
”グレートキャプテン”という言葉で調べてみると、元日本航空のパイロットで、現在は航空評論家の小林宏之氏のことを指している言葉のようで、原則、小林氏個人に対してのみ、尊敬の念を込めて称するのに使われている言葉のようである。
しかし、さらに調べを進めてみると、他にも”グレートキャプテン”という言葉を使った航空会社を見つけることができた。

それがピーチ航空である。

「ランウェイ24」の特設ウェブサイトからインタビュー記事を参照すると、”グレートキャプテン”を以下のように紹介している。

上空での天候の変化や、飛行機の操縦における豊富な知識や経験を持ち、長年に渡り安全運航に寄与している機長は「グレートキャプテン」と呼ばれています。
【interview】安全な空の旅を描くグレートキャプテン

そのような表現があるのか英語でも”Great Captain” でサーチしてみたところ、航空業界で上記のようなの意味を持つ事例は見つけることが出来なかった。(ちなみに”グレートキャプテン”は「おっさんずラブ」シーズン2中では、主要人物の一人、黒澤武蔵が演じることとなっている。)

以上から主に、”グレートキャプテン”とは元日本航空のパイロットの小林宏之氏を指しているにもかかわらず、その名称をピーチが独自に使用し、さらにブランディング戦略の一環としてドラマでも2シーズンに渡って繰り返し使い、この言葉を位置付けていることが想像できる。

【参考】小林宏之 (パイロット) - Wikipedia
パイロットの小林宏之氏 元日本航空パイロットで現在は航空評論家。

ピーチの広報戦略 ターゲット層(=女性)の一致

次に、ピーチの顧客ターゲット層に注目したいと思う。

ピーチのターゲット層は女性であり、それをはっきりと明言している。

ダイヤモンドOnline LCCのピーチが「SNSを参考に決める旅」を開始、若い女性を狙う | inside Enterprise
そもそもピーチは、大手航空会社がメイン顧客とするビジネスマンでもなく、普通の旅行者でもなく、20~30代の女性をターゲットとしてきた。そのため、機体カラーを桃色と紫色の中間色である「フーシア色」にしたり、ウェブサイトに女性誌のようなコンテンツを盛り込んだりした。
https://diamond.jp/articles/-/167968

ちなみに、同記事にはインスタグラムによるキャンペーンがヒットしたとの成功事例を紹介しており、顧客獲得のキャンペーンとしてSNSに注力しており戦略上、SNSが非常に有効であることを実証済みであった。その内容も同記事で見ることが出来る。

「この数年間、我々が行ってきたことを、根底から覆すような出来事が、今年の春に起きたんです」
 ピーチアヴィエーションの井上慎一代表取締役CEOが、そう打ち明けたのは、「新しい旅のスタイル」を提案するCOTABI(コタビ)という新サービスの記者発表会場だった。
 その出来事とは、昨年3月に1ヵ月にわたって行われたキャンペーンだ。フォロワーを多く抱えるインスタグラマーに、ピーチの飛行機に乗って旅をしてもらうように依頼。そして、旅の内容をインスタグラムにアップし、それを特設サイトにリンクしてPRしようというものだ。
https://diamond.jp/articles/-/167968

ピーチ広報もターゲットは、ビジネスユースではなく、新たなライフスタイル、例えば仕事帰りに海外旅行、買い物などのレジャー等で利用することを想定した女性、としている。そして、ピーチの社長もそれを様々な媒体でそれをはっきりと明言している。いくつかの例を以下に挙げる。

Peach Aviation CEO 井上慎一さんインタビュー - 大阪弁護士会
タ ー ゲットは、お客様の 6 割以上が20代〜30代で、全体の 5 割以上が女性です。最初からターゲットにしていました。
https://www.osakaben.or.jp/matter/db/pdf/2017/oba_newsletter-194.pdf
東洋経済 ONLINE  日本初LCCピーチ、「5年間の創業物語」の結末

『研究し尽くした結果が「女性狙い」』

「既存の航空会社は皆、ビジネスパーソンや旅行客というセグメントを狙う。われわれはそこで勝ち目はない。そこで目を付けたのが女性だった」
https://toyokeizai.net/articles/-/163713?page=2
C-station Peach流「新たな顧客の創りかた」がアジアの空を変える

『女性に愛されると男性はオマケでついてくるって!?』
我々のターゲットは、明確に「女性」です。(中略)女性をターゲットにすると局地的な勝利に終わらず、広がりがある。多くのご家庭で、購買の最終の意思決定者って女性ですよね。(中略)女性に愛されると、旦那さんやお子さんやお年寄りもついてきてくれるんです。
さらに、女性には発信力があります。(中略)女性を味方につけると、自分たちでは開拓できない広がりがもたらされるんです。
https://c.kodansha.net/news/detail/42/

そして、女性の「発信力」を実感したケースが登場する。

「この数年間、我々が行ってきたことを、根底から覆すような出来事が、今年の春に起きたんです」 ピーチアヴィエーションの井上慎一代表取締役CEOが、そう打ち明けたのは、「新しい旅のスタイル」を提案するCOTABI(コタビ)という新サービスの記者発表会場だった。 その出来事とは、昨年3月に1ヵ月にわたって行われたキャンペーンだ。フォロワーを多く抱えるインスタグラマーに、ピーチの飛行機に乗って旅をしてもらうように依頼。そして、旅の内容をインスタグラムにアップし、それを特設サイトにリンクしてPRしようというものだ。

ここで、インスタグラムによるキャンペーンがヒットしたとの成功事例を紹介しており、その有効性を実感していた。


先に、ピーチの顧客ターゲット層について調べてみたが、ここで、「おっさんずラブ」のフォロワーに関するデータを紹介したい。

おっさんずラブ公式Twitter

おっさんずラブのアカウントは2016年12月11日に開設され、シーズン1が始まったころにはフォロワー6万人を超え、最終回を迎える頃には25万人オーバーとなり、ドラマのフォロワー数としては有数のフォロワー数を抱えていた。
現在(2019/11/10)では約33万人のフォロワー数をかかえ、ドラマだけのランキングに修正すると、「おっさんずラブ」の公式Twitterは上位から5番目の数である。

 ・HiGH&LOW OFFICIAL 729,644
 ・Netflixドラマ TERRACE HOUSE 528,698
 ・テレビ東京系列 勇者ヨシヒコ 370,580
 ・日本テレビ4・7月期新日曜ドラマ あなたの番です 339,147
 ・LIFE!人生に捧げるコント 338,660
 ・おっさんずラブ 333,579

出典:「映画・テレビ・ドラマ」Twitterフォロワー数ランキング 1-50位 | meyou [ミーユー]

ちなみに、2019年秋ドラマのTwitterだけに限ってみると以下のような結果となり、おっさんずラブの公式アカウントが2位のほぼダブルスコアでフォロワーが多いことが分かる。(2019/11/18時点)

 1. おっさんずラブ 336,785
 2. 相棒 178,861
 3. 孤独のグルメ 136,005
 4. 同期のサクラ 104,916
 5. 時効警察はじめました 87,522
 6. シャーロック 76,984
 7. グランメゾン東京 59,682
 8. モトカレマニア 49,959
 9. Doctor-X 48,525
 10. まだ結婚できない男 46,648

出典:2019年秋ドラマのTwitterアカウントまとめ | meyou [ミーユー]

おっさんずラブ公式Twitterの特徴

おっさんずラブのフォロワーについて、followerwonk社で調べてみると、具体的な年齢層までは不明ではあるものの、全体の40%以上が5年以上のTwitterユーザー、4-5年が9%である。
つまり約半数が比較的長期にわたってアカウントを保持しており、それら層からの支持を得ている事が分かる。そのためおそらく10代ではなく、それ以上の年齢層のフォロワーから構成されている可能性が非常に高い。
これ以上の年齢層の特定は難しいものの、Twitterの年齢層の分布を考慮するとおおよそピーチのターゲット層と合致しているか、それほど外れたものではないと想定できる。
また、男女別での割合を同followerwonk社の調査を見てみると、かなり男女の特定が難しいものの、男性1に対し女性が3.02の割合となっており、女性の割合がかなり高い調査結果となっている。

【参考】
Twitter Japanさんのツイート: おかげさまで日本での月間利用者数が4500万を超えました。
Followerwonk: Tools for Twitter Analytics, Bio Search and More

なお、先に放送された「ランウェイ24」のフォロワー数についても注目したい。放送終了後のデータではあるが「ランウェイ24」のフォロワー数3500名ほど、それに比べ「おっさんずラブ」のフォロワー数は33万人で約90倍以上であり、同じくピーチが監修したドラマでも波及効果の違いは一目瞭然である。(ちなみにピーチ公式のTwitterのフォロワーは12.6万であり(2019/11月初頭現在)「おっさんずラブ」公式Twitterと比較すると「おっさんずラブ」の公式Twitterはその約2.6倍となる。)

「おっさんずラブ」のような注目度が高い人気ドラマの続編であれば注目度も高く、しかもドラマの熱狂的なファン層いることでも有名である。それらのファンがピーチのファンになってもらえれば、この先繰り返し使ってもらえるような息の長い太い顧客をつかむことができる。これらを考慮すると、「おっさんずラブ」のTwitterはピーチの広報において、ターゲット層がしつらえられた非常に効果的で理想的なツールだったのではないか。
なおかつ、おっさんずラブの層はグッズや書籍、映画も繰り返し見るなど「細分化されたパトロン」とまで言われるほど、熱心なファンが多いのが特徴である。この層を取り込むことが出来れば、長く利用してもらえる層として非常に魅力的な対象と写っても不思議ではない。

『劇場版おっさんずラブ』をアラフォー女性たちはなぜ10回観るのか? | 文春オンライン

つまり、おっさんずラブのファン層はPeachにとって、宣伝戦略上、顧客獲得のための理想的なターゲット層であり、もともと「おっさんずラブ」は深夜帯のテレビ番組でSNS上での評判がヒットにつながった作品であった。
人気作品であるドラマとのコラボは話題性もさることながら、より繰り返しピーチを利用するようなコアなターゲットを絞った形での広報戦略の一つとして、公式Twitterを取り込むことは非常に有効な手段であると考えられる。

ピーチの広報担当者も朝日新聞Digitalで「前作は社会現象にもなった人気作。ピーチを知ってもらうきっかけになるのでは」語っており、ピーチ側の期待の高さを伺うことが出来る。

インスタグラム:武蔵の部屋

次に、「おっさんずラブ」シーズン1のSNSの成功例の一つにあげられるインスタグラムの「武蔵の部屋」について見ていきたいと思う。
この武蔵の部屋は「おっさんずラブ」シーズン1放送の際に開設され、同アカウントは番組終了時の2018年6月時点で約50万、シーズン2開始時点で約52万のフォロワー数を誇り、ドラマでのランキングに限ると、61万人のHigh & Low に次ぐフォロワー数で2位となっている。

その内容はヒロインである武蔵が春田を思うあまりに隠し撮りをするという設定で運営され、武蔵の春田に対する乙女な恋心をつづったもので、いわゆる「裏アカウント」的な位置付けであった。
しかしながら設定の斬新さとタグの秀逸さで人気となり、公式のアカウントよりフォロワー数が増えてしまう逆転現象が生じてしまい、おっさんずラブの人気を支えたSNS戦略の立役者の一つとも言われるほどであった。

そして、その裏アカウントは第97回ザテレビジョンドラマアカデミー賞でザテレビジョン賞 1位に選ばれた。

そのような人気であった武蔵の部屋のインスタグラムだったが、シーズン2が始まる直前の10月28日、シーズン1の投稿がすべて削除された。
そしてその直後、武蔵の部屋のコンテンツはシーズン2の投稿が2枚残るのみとなり、約52万のフォロワーをかかえたアカウントはそのままシーズン2のコンテンツへと引継がれる形となり、シーズン1で好評だった写真やタグはもちろん、フォロワーから寄せられたコメントも突然見ることができなくなった。

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続編(シーズン2)放映のタイミング

次に、近年のピーチ航空と「おっさんずラブ in the sky」シーズン2までの流れを時系列で追ってみたい。
時系列を見ても分かるように、おっさんずラブシーズン1の放映時の2018年の春には、既にバニラエアとピーチの統合は決まっており、翌年である今年2019年末までには両社の統合を完了する予定であった。

さらに、シーズン2となる「おっさんずラブ in the sky」の放送直前にはピーチ航空の関東方面への航路拡大の集大成となるバニラエアとの統合が完了したと発表が行われたが、この発表はおっさんずラブジーズン2の放送の前の日であった。

<2018年>
- 3月22日:親会社であるANAが、2019年度末をめどに、バニラ・エアと統合することを発表
- 4月21日:おっさんずラブ(シーズン1)放送開始
- 6月2日:おっさんずラブ(シーズン1)放送終了
- 10月23 日:ピーチがバニラエアへ役員の派遣を発表 
- 11月23日:バニラエアとPeachの統合に向け、役員体制の変更を発表
- 12月7日:劇場版おっさんずラブ制作を発表

<2019年>
- 1月1日:ANAホールディングスからバニラ・エアの全株式を譲渡され、完全子会社化
- 1月7日:早河洋代表取締役会長兼 CEOが「年頭挨拶」にて、
      ヒットドラマの第二弾を制作・放送することを発表
- 3月22日:ピーチとバニラエアの統合発表会見
- 8月23日:劇場版おっさんずラブ 公開
- 9月27日:おっさんずラブ公式Twitterでシーズン2となる「おっさんずラブ in the sky」が発表される。
- 10月27日 ピーチが関東方面へ航路拡大を発表(成田空港を拠点としネットワークを拡大)
- 11月1日  Peach とバニラエア統合完了の発表
- 11月1日  テレビドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」特別機運航を発表

首都圏での路線拡大のタイミング

おっさんずラブ(シーズン2)の放送開始時期が他のドラマより少し遅れていたことを考慮すると想像ではあるものの、このピーチとバニラエア統合完了の発表に合わせた可能性は十分にある。
ピーチの井上CEOもこの10月27日、記者団の質問に以下のように答えており、ドラマとのコラボに期待を寄せている。

認知度向上については「これまで首都圏では路線数が少なかったが、今回の統合で路線数も増えており認知度は少しずつ上がっていくと思う。合わせてドラマなどとのコラボを通じて認知度を高めていく努力もしていきたい」
https://response.jp/article/2019/10/28/328104.html

ピーチの就航国への知名度アップ効果も

次にピーチが就航する地域も注目したい。
現在、ピーチの就航国は、香港、台湾、韓国(ただし、2020年には運休予定)、タイとなっている。
実は、これらの国々はタイを除いて「おっさんずラブ」シーズン1の放映国でもある。
「おっさんずラブ」シーズン1は韓国、台湾、香港の各配信プラットフォームで、同クールにおける日本ドラマの視聴数ナンバーワンを記録し、今回も同様の国々で配信予定が予定されているという。また、シーズン1の続編である劇場版のおっさんずラブも台湾、香港にて上映された。
このように人気ドラマの配信を通じて、来年のオリンピックへ向けてますます増えると予想される来日訪問客へのアピールが出来ることも視野に入れていた可能性がある。
https://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove/news/0019/

総括

ここまで「おっさんずラブ」を中心にピーチの宣伝戦略、ターゲット層、放送のタイミングなどについて調べてきた。

人気ドラマであった前作の「おっさんずラブ」のファン層はピーチのターゲット層に合っていたこと、人気ドラマの続編として注目度が高く、知名度も上がる。
同ドラマは視聴率は決して良くはなかったもののSNSで人気となり、社会現象とまで呼ばれるほどのヒットとなった。

Twitterだけではなく、インスタグラムも含めると80万以上という大きなフォロワーを抱えるドラマのフォロワーは、ピーチのターゲット層の一致するがゆえに、同じくSNSに力を入れている同社としては理想的なターゲット層であった。

勿論、それ以外の層にドラマを通じてピーチを広くアピールすることも狙いの一つではあるが、同ドラマのコアなファンのような顧客層、つまり何度もピーチを利用してもらえるようなコアな顧客を取り込む狙いがあったと想像できる。

また、その発表のタイミングもピーチのバニラエア統合という関東方面への就航拡大のタイミングを意識したと伺える。

「おっさんずラブ」は注目度の高いドラマだけに、名前を広めることについては成功する可能性が高いと思われるが、どの程度、ドラマのコアなファン層に受け、それがピーチの購入者層に繋がるかどうか、またドラマでどのようにピーチの意向が反映されるのかを一消費者として注視していきたい。


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