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呆気なく振られたって人生は続くし予定のない週末は来る



そういうことですよ、皆さん。

2人の関係性が深まっていくのはここから…と思っていた時に呆気なく振られたって人生は続く。
週末は会えるかなぁ、寒いからまたお鍋にしようかなぁ、この前録画した金ローも見たいなぁ、なんてわくわくしていた土曜日は、なーんの予定もないまま始まる。
何も無かったら一緒に過ごしていたのかな…って考えようとしたら怖くなって、それ以上考えるのは辞めた。


土曜、朝10時。
そろそろ起きるか〜って怠惰な起床。
勤務表を思い出して、元推し(元彼って書くのがまだ慣れない)は午後から休日出勤か〜お疲れさまです、って心の中で頭を下げる。爽やかな人だから嫌な顔せず働いているんだろう。
パパッと顔を洗って、なんかしらして過ごす。

13時。
お腹が空いて老夫婦の喫茶店に。
元推しは気分が塞ぐと食欲喪失する人だけど、私はいくら落ち込んだってお腹は空く。落ち込んでいる時こそ美味しいご飯を食べたくなる。
お昼時を外してお店に行ったからカウンターが空いていた。パスタとカフェオレを頼む。カウンターのテレビを見ながら、時折り手の空いたお母さんと喋りながら過ごす。

1人で休日にご飯を食べに来るようになってもう4年目、老夫婦とは色んなことを話す。
今朝急に雪積もったねぇ。お正月は実家に帰るのかい?そうかそうか、それが良いよ。うちは娘家族も帰ってくるからお正月は11人もいるんだよ、忙しい。
湿っていて重たい雪ですね〜雪かきスコップ出さないと。野球の名門校に行ったお孫さんも、お正月は帰って来るんですか?あら、それは良かったですね。11人も集まるなら、おせち料理もたくさん作らないとすぐなくなっちゃいますねぇ。

なんて、他愛もない話。話しながらも手を止めず、コーヒーを淹れたりお皿を洗ったり、一つ一つ丁寧に作業をするお母さんの手元を眺めながら。誰にも奪われたくないあたたかい時間。
彼とは年末一緒に過ごすのかい?と聞かれて、実は別れちゃいました、と照れ笑いしながら軽く言う。
あら〜そうかい、合う合わないってあるもんねぇ。と、お母さんはそれ以上は触れずにいてくれた。

この老夫婦はお互い20代の初めに結婚し、お父さんが経営を始めたばかりのお店にお母さんがすぐ立つようになって、それから50年以上2人でやってきたとずっと昔に聞いた。阿吽の呼吸でお店を回す2人のパートナーシップの強さに時々惚れ惚れする。
「誰かとペアになるのも、ペアで居続けるのも、難しいですね」って嘆いたら「この歳までやってるとそれすらも思わないものよ」ってお母さんは言ってた。そんなものかな。

今の私にとっては「誰かと信頼関係を保つ」っていう営みが喉から手が出るほど羨ましくて、手に入れたくて仕方ない。誰かっていうのは友達や家族は勿論なんだけど、欲を言えばあの彼が良い。
テレビでは昼下がりの呑気な番組が流れていた。宇宙人に拉致されたことのある外人男性だとか、この血液型の遺伝子を求めた宇宙人が地球に迫ってきているだとか、とんだミステリーに迫っている。ほんと呑気だよなぁ。

あったか〜い


14時半
喫茶店近くの図書館。児童書フロアに初めて立ち寄って、仕事の資料を探す。
薄くてカラフルで可愛らしい絵本がたくさん飾ってある。本棚の角はまるくて、暖かい色をしている。ところどころ置かれている丸いソファも背丈が低くて、たまにちびっ子が深く腰掛けて絵本を読んでいる。
ここは天国?と思いながら本を探した。いつか子供ができたなら、あの親子みたいに休日は図書館に本を借りに来たいな。なんて思う。
今の所何の見込みもないけど、そんな夢見てても良いですか?
誰かとペアになって家族を作って、休日を穏やかに過ごす夢、途方もなく別世界に感じる。
でも、私ならいつかそんな誰かと出会ってそうやって過ごす気もする。そう信じる。


15時半
近所に住む89歳のお友達にみかんを届ける。
ばあちゃんが毎年冬に送ってくれる四国のみかん、今年もその箱が届いた。明るいオレンジの果実はみちみちに身が詰まっていて、冬を乗り越えるエネルギーがここに詰まっているように思う。1人じゃ食べきれない量だから、数個持って89歳のおばあちゃんに届けた。
この方は御年89歳の超パワフルおばあで、私の憧れるシニア。ここでは林さんって呼ぶ。
アポなしでごめんなさい!って思ったけどちょうど在宅していたようで、「あ〜ランドちゃんか、上がれ上がれ」と手招きをされた。いつも通りニカニカ大きく笑っている林さん、顔見るだけで私は元気が出ます。
みかん届けるだけでゆっくり話すのは今度でも、って思ったけど、まんまと甘えて居間に上がる。
さっきまでは遠方に住む友達2人に電話をかけていて、このあと夕方からは同窓会に出席するらしい。赤いベレー帽と首に巻いた赤いストールがお似合いで、とっても可愛らしい。そしてとっても元気。
「今日は友達とたくさん話して、ランドちゃんも訪ねてきてくれて、いい日だ〜」と踊り出しそうな勢いだった。
林さんは私が訪ねるといつもコーヒーを豆から淹れてくれる。今日もゴリゴリとKalitaのミルを挽きながら、これまた丁寧にコーヒーを用意してくれた。おしゃれなカップ。マカロンの袋菓子も出してくれて、女子会のスタート。
新しい彼氏とはどうだい?って聞いてくれたから、それが、振られちゃいましたよ〜と眉を下げると、天井を向いておっきな声で「あっはっはっは」って笑う林さん。なぜか大ウケしたみたい。私も釣られて笑う。なんか楽しくなって来る。彼への気持ち、ちょっと和らいでくる。
私の話を林さんはうんうんと聞いてくれて、へなへなな私にたくさん言葉をかけてくれた。
この人は違うって神様が教えてくれたんだよ。最後はちゃんと、しっくり来る人と出会えるようになっているんだよ。過ぎたことは忘れる!くよくよしない!
青春のうちはたくさん悩んで迷ったほうがいい。その方が年取ってから思い出すことが多くて楽しいんだから!
これだけ長く生きてきた女性がそう言うならそうなんだ、と思えて来るこの説得力。すごい。

林さんはこれまでの人との出会いや思い出を一つひとつこまかく覚えていて、それを楽しそうに話してくれるおばあなんだけど、私はそんな林さんが大好き。
若い頃にお見合いをして半年ほど会っていた男性と(結局うまく進まず、夏の炎天下の野球観戦を最後に文通が途絶えたらしい)、十数年後にばったり交差点で再開した話をしてくれた。すれ違い様にハッと気づいて、あの時はありがとうとあの時はごめんなさいを言えないまま、お互い通過して終わったみたい。長く生きていけばそんなドラマが起こるのか…って、ひとつの映画を観た感覚になる。
ちなみに林さんに「元カノが忘れられない…って理由で振られました」と伝えたら間髪入れず「勝手にしやがれ!」とリアクションが返ってきて、思わず大笑いしちゃった。パワフルすぎる。こんなおばあになりたいよ私。
最後に、「迷ってうだうだしないから、そこは良い人素直な人なんだな」って優しいフォローもしてくれた。

2人で他にも様々話して、たくさん笑った。帰り際、よく熟れて今にもはち切れそうなくらい柔らかい柿をもらった。
その後2人で駅まで歩いて林さんを見送る。駅の地下通路の階段をスイスイと歩く姿を見て、そのたくましさに魅入ってしまった。

安心する美味しいコーヒー


20時
小雨が降って足元はびしゃびしゃ。雪が雨と混じって溶け始めている。そんなこと気にしないことにしていつもの居酒屋に向かう。
マスターはいつも通り、音量を大きめにしたテレビを見ていた。
いつもは美味しいご飯をメインにマスターとお喋りするけど、今夜は飲むぞ!!と決めていた。席に着いたら先にそれを伝えて、ジョッキのハイボールを注文する。
テレビでは芸人さんがテンポよく出てきて、細かすぎるモノマネを披露している。めちゃ面白い。
はい、今日のお通し、と白子の揚げ出しが出てきた。このお店でこれが出て来るといよいよ冬を感じる。出汁に浸ったホクホクの白子は、口の中でふわりととろけてしまう。
マスターには私の仕事の話や恋の話を逐一報告しているから、遠距離彼氏との一件も、元推しとの急接近ももちろん話していた。
2杯目のハイボールを頼みながら、マスターにも恋の終わりをご報告。
なぜ??!と驚かれつつ、事の経緯を話したらこちらも「なんじゃそりゃ」ってリアクションだった。
人と人との付き合いって何が上手くいって何が上手くいかないのか、わっかんないよなぁ、とマスター。
このマスターは2回離婚して3回結婚している人。20歳近く年下の今の奥さんと結婚してからはもうずっと、「この人と結婚してよかった」と幸せな気持ちで過ごせているらしい。家庭の話を聞くたび、こちらまで幸せな気持ちになる。
過去2回の結婚も一生添い遂げる覚悟をしての結婚だったけど上手くいかなかったから、何が良くて何が悪いのかはわからん、と言うことだった。
私の父ほどの年齢のマスターにだってまだわからないことがある。まだ道の半ばにいる。そしたら、27の私はもっともっとわからないことがあって当然だし、この先の道はどうにでも拓けるはず。そう思えてきた。

テレビの向こうで面白いネタを披露し続ける芸人に、ありがとうという気持ちが湧いてくる。
お酒を飲んでマスターとお喋りする居酒屋で、どうにもならない気持ちを少しは忘れさせてくれるから。
次から次へとネタを浴びながらケラケラ笑っているうちに、どこへもやり場のない気持ちのことを忘れさせてくれるから。
声を出して笑えるって、それは幸せのひとつかもしれない。

う〜〜〜ん、冬の味覚〜〜〜!!



23時半
家に帰ってきた。
予想外に別れても人生は続くし、いくらうんざりしても予定のない休日はやって来る。時間は止まらずに進み続ける。
私は時間ができたら誰かに会って話をしたくなるし、人生に雲がかかった時には自分より長く生きている人に救いを求めたくなる、それは確かだなぁと思った。
今の私を見てくれる人、今の私と時間を共有してくれる人、今の私の目の前にいる人を大切にしようって、やっぱりそこに辿り着く。
(2ヶ月前に長い恋を終わらせた時も同じことをnoteに書いたよな)
私がこの街を好きな理由は、私の居場所が色んなところにあるってこと。人と顔を合わせて心を通わせて会話ができる、そんな場所が点在しているってこと。
ほんと〜に良い街に来たものだ。



元推しは一度塞ぎ込むと一人ぼっちでどんどん孤独の淵を彷徨うタイプ。
彼が丁度そんなタイミングだった週末に私は友達とロックフェスに出かけていて、なかなかラインもできなくて、それがきっかけで週明けに振られたんじゃないかと思えてきた。
(そう話したら、「高校生かよ」と幼馴染に一蹴された)
どうか、いつか、彼が孤独な気持ちと上手に付き合えるようになりますように。
一人ぼっちで塞ぎ込むのも良いけれど、そんな気持ちを紛らわす術を身につけて、自分の力で復活できる人になれますように。あなたの周りにはきっと、あなたの孤独を癒してくれる人がいるはずだよ。あなたはひとりじゃない。


(彼に直接伝えられない気持ちは、これを読むあなたと私のここだけの話ってことにしてください。)


















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