ふらりたどり着いた街にて 3
6/10(月)
週末のコーヒーイベントでたくさん買ってきた焼き菓子を朝から並べた。
こじんまりとしたお店が作る手作りの焼き菓子が、3つ4つ。
スーパーで買うクッキーも好きだけど、こんな風に人の手で丁寧に作られたお菓子にお金をかけられるようになったこと、嬉しいなぁと思う。
夜に自分の時間を作りたい。 3月までの暮らしのように、ギターを弾いたりどっぷり本を読んだり、フラッと飲みに行ったり、そんな夜が懐かしい。
6/11(火)
民間の庭で開花し始めた紫陽花と、群生するドクダミの花と、ヤマボウシと、プラ水槽で気持ちよさそうに日光浴をするタブレットサイズのでかいカメ。
通勤中に見かける生き物。
つい少し前にそのカメに「カオさん」と勝手に名前をつけた。クリープハイプのベーシスト・カオナシさんがたいそうな亀loverだから。ちなみに、カメと同じ家で飼われている元気いっぱいな番犬は「ガオガオ」と呼んでいる。よく吠えるから。
仕事が順調に進んで、ちょっとご機嫌な帰路。
19時を過ぎてもまだ明るい。先週までは爽やかに吹いていた風が、昨日今日はモワッと湿って熱を帯びている。 そんな季節の移り変わりに気が付いて、また嬉しくなった。だから、目に入った野花を摘んで家まで歩いた。
「花泥棒は罪にならないのよ♪」と学生時代にバイトしていた鍋屋の女将さんが教えてくれたことを、私は今でも覚えている。可愛らしく笑う女将さんが教えてくれた「墨田の花火」というガクアジサイも覚えている。
こんな日がたまにあるなら、まだまだ人生やっていけそうだよ。
6/12(水)
夏が来たかと思った。熱気を帯びた風と、 ジトっと重たい空気が髪の毛にまとわりつく感覚。もう夏が来ちゃったのかい?まだ梅雨入りもしていないのに。
夏が来る前に私はやらねばならない仕事がある。転勤したて&夏が始まる前のこの時期だからこそやっておきたい仕事。夏の番人としての大仕事。
朝イチでテキストを読んで、人柄を磨いてそこを強みにしたいな、とぼんやり考えた。スキルや専門性でモノを言うんじゃなく、もっと根幹の部分を豊かにしたい。栄養分とユーモアを蓄えたい。人柄で魅せろ私。そんな風に歳を重ねたいな。
そういえば今日は、ラッキーなことに美味しいコーヒーもいただいた。ちょうど一杯分あったオリジナルブレンドを「あ、飲んでく〜?」と綺麗なカップに注いでもらい、職場の人とひと息ついた。良い空間だったなぁ。優しい人に囲まれているよ〜〜。
朝に食べたスコーンが美味しくて、そのおかげで1日頑張れた。さらりと垂らしたハチミツが決め手。
6/13(木)
職場のゴミの分別について長老に尋ねた時、会話の最後で「この街はほぼ燃えるゴミだから〜」と言い残し立ち去る長老がかっこよかった。
「この街はほぼ燃えるゴミ」ってフレーズと私だけがその場に残されて、「…この街は燃えるゴミ」と復唱する。でっかい燃えるゴミ箱に、この街の全てがポイされるのを想像してみた。人々の生活も祈りも欲も、全部燃えちゃうんだ。可燃ゴミなんだ。そうかそうか。
今日は早くに職場を出られた。図書館に本の返却に行く。ついでに岡田尊司の「母という病」を借りてきたものの、この人の本は軽い気持ちで読めるものではないこと、読み切るにはものすごくエネルギーがいることが分かっているからどうしよう。いつ読もう。
帰宅してもまだまだ外は昼間のようだから嬉しくなる。 部屋の掃除と、明日からの出張の荷造りをする。その間冷やしていたグラスと炭酸水でハイボールを作る。 暑い日に飲むお酒はいつだってサイコ〜に美味しいから、まだ18時なのにふわふわ酔っ払ってしまった。
あ〜、なんかもう恥ずかしいくらいいけるような気がしてる。1人で酔うと私はサイコ〜になる。いろんなことを考えて、感度マシマシ、味わい深さマシマシの人間へ。昔はセンチメンタルモンスターと化していたけど、そういえば半年は恋をしていないからセンチメンタル要素は抜け切り、「人生」がむき出しに。1人で飲むお酒はすごく楽しい。
布団に入り今日会話をした人たちの顔を思い浮かべて、みんなぐっすり眠ってね、と念じた。
6/14(金)
6時に出発の遠出だったけど、窓からひんやりと吹いた風で4時に目が覚めた。朝4時の住宅街は静まり返っていて素敵だ。5時半に職場に着いたらすでに出勤している人がいてウケた。どうなってんの〜。
「ほぼ初めましての御一行をアテンドする」が今回のミッションで、そんなことしたことないから私なりに気を配りまくった日。「はいコレ!」とお弁当を手渡され知らないだだっ広い公園に1人取り残されたり、だから1人ピクニックをしたり、子羊のように縮こまりながら会議に出たりしてなんとか1日の業務を終える。
宿のある繁華街は、この一年で3回目の再訪。「お久しぶりです」と神社にお参りをしてから河口の公園を夜にお散歩した。1度目は元彼との最後のデートで来て、2度目は好きなバンドのライブのために1人で来た。その頃は前の職場の元推しと付き合う?くっついちゃう?の時期で、(もし一緒に来てたら何か変わってたかな)とふと思った。1度目も2度目も、大切なものが何なのか私は分かっていなかった。だから2人とも逃してしまった。今ならわかる、振り解いてはいけない手がどれなのか、大切な人を思いやるために選ぶべきものがなんなのか。 今になって分かってももう遅いのに、今やっと分かった。それに気づくための今回の出張だったのかもしれないな。全てがつながっているように思えてきた。「バカは私だったな」としみじみ思う今の私も、未来のどこかのシーンの伏線なんだろな。
お酒を飲んだわけでもないのに、なんだかとっても感傷的。夜の海風を浴びたせい。
6/15(土)
色んな人間が一生懸命に命を燃やしているのを、一日眺めて過ごす。
某炭治郎じゃないけど、戦う人、挑む人、悔しさを全身で浴びる人、周囲との愛や感謝で溢れている人を目にすると、(魂を燃やしているなぁ)(体の内から溢れるエネルギーで光っているなぁ)と思うようになった今日この頃。眩しく燃える命の集合体、いいもの見た。
今日は自分でも珍しく、人にちょっとしたモヤモヤを覚えたのだけど、少し間を置いてから(…人に求めるものが多すぎた)と思い直して怒りを解消。 人に対して怒りたくなる時って、相手に期待するものが多すぎるか、自分にゆとりがない時か、そのどっちかなのだと思う。今回は完全に前者だった。(相手はまだここまで想像力が及ばないってだけで、私が期待しすぎちゃったかな。私の説明も足りなかったよな)と考え直したことでモヤモヤは消えた。
「ランドさんって人に怒ることあるの?」と知り合って間もない間柄の人たちによく聞かれる私にも、怒りのスイッチはある。でも大抵、その気持ちを解いていくと、自分の考え方の偏りが原因だったりする。
夜、私の親鳥こと元上司も出張でこっちに来ているらしく、おじさま方の飲み会に飛び入り参加。どうでも良い事でワハハと笑い合える良き夜。私が社会人1年目の4月から何かとずっとお世話になっている親鳥も偶然同じ街に来ているんだから、ご縁って不思議だ。繋がるべき人とはこうして自然とご縁が続いていく。
6/16(日)
アテンド完了〜! 無事に帰って来れたから良かったね、良い経験ができて良かったね、と建前を述べて演出しつつ、(これで良かったのか…??ここで満足して終了して良いのか…?)と心のうちでは不完全燃焼。
きっと去年までの私だったら心の底から(良かったね〜!めでたし!)と円満に終えていただろうけど、私も1年でめきめき変化したんだろう、そこでは満足できなかった。相手に期待していたものが大きすぎて肩透かしを喰らった気持ちで帰宅。
モヤモヤが晴れないから1時間ドライブし、それでも晴れないから友達に電話して聞いてもらった。スキンケアしながらとめどなく話す。友達も作業の片手間で聞いてくれるからちょうど良い。落とし所もオチも特にない、仕方のないモヤモヤについて吐き出すと、一通り聞いてから笑ってくれた。あざっす。彼はこの前仏像の鑑賞に目覚めたらしく、3体並ぶ仏像に込められた意味について自分なりの解釈を話してくれた。世界は広い。
怒りを覚えたりモヤモヤしたり、普通に生活しているとそちらの起伏が少ない私だから貴重な出張だった。喜怒哀楽をチャートにしたら「怒」だけがスコンと抜け落ちているような性格だから。 ここに焦点を当てたら、もっと自分の思考のクセや偏りに気がつけるんだろう。 そういう意味では、新しい刺激になったかなぁ。
内面を磨け、人間性を深めろ、人柄で魅せろ、私。
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