カニ釣りバイト


オレは、33歳のサラリーマンだ。18歳で高校を卒業して以来、高卒で大手会社トトタに務めている。23歳で結婚し、25歳で第1子を授かり、28歳で第2子目、4人家族の順風満帆な日々を送っている。今日は、10年目の結婚記念日で家族でお祝いしていた。その中で、妻から新しい命を授かったことを聞いた。家族でとても喜びその日はとても幸せな気持ちで眠った。

次の日、いつも通り会社に出勤すると、みんな焦っていた。何事かと思うと社長が「株が大暴落してこのままじゃ倒産だ!」と言っていた。そのままトントン拍子で事は進み、あっとゆうまに会社は倒産した。そしてオレも、あっとゆうまにニートになってしまった。まいったことだ。妻も子供もいるのにこれからどう生活をしようと参っていた。妻にこのことを伝えると、とても怒った顔で「子どもが2人いて、お腹に赤ちゃんもいるのにこれからどう生活するつもり!1ヶ月以内に仕事を見つけないと離婚よ。離婚!」と言われてしまった。幸せだった昨日から最悪な日になってしまった。早く仕事を見つけるために、inneedを見ていると何よりも目に止まった仕事があった。「カニ釣りバイト」こんなものあるのか。小さい頃からカニ釣りが好きだったオレはウキウキしてそのバイトの説明欄をみた。

「バイト募集中ー初心者大歓迎ー
海で割り箸にエサをつけてカニを釣る仕事。
好きな時間に出勤可能◎自分の時間を確保出来る。
1ヶ月で2000匹以上釣ると船に乗りカニ漁に行き、年収1000万円超の高所得者になる。」

と書かれていた。
オレは、心に決めた。1ヶ月寝る間も惜しんで働き高所得者になり離婚を避け妻と子供をこれからも養っていくんだ!と。

まずは、バイトを応募し、面接に行った。すると、そこには70歳くらいのおじいちゃんの面接官がいた。そこでこんな説明があった。
「このバイトは忍耐力が必要なんじゃ。だが、その他にもコツがある。それは、いい餌を使うことじゃ。その中でもカニが好きなのは滅多に取れないんだが、ある生物の内蔵なんじゃ。他のものでいくと、イカの塩辛なんて好きだな。そして月に1度網を使ってカニをとっていい日が現れるんだ。その日は、天気が悪くみんな外から出ない。だがその日行った者だけがチャンスを掴み取るんじゃ。この話を聞いてどうだ?このバイト挑戦してみるか?」
そう言われ、オレは「はい!挑戦してみます!」と勢いよく答えた。家に帰り妻に「次の仕事が決まったよ」と伝えると妻はとても安心し嬉しそうな顔でオレのことを見てきた。その顔を見たオレは頑張らないといけないという気持ちになった。

そこからの毎日は、朝早く起きて塩辛をエサにしてカニ釣りをし1日50匹前後釣っていた。だが、このままだと毎日行っても2000匹には到底及ばないと焦ったオレはある作戦を立てることにした。おじいちゃん面接官が言っていたある生物の内臓を見つけだし、月に1度の網の日に勝負に出ようと。そこからのオレは、Amozoで買ったたくさんの動物の種類の内臓をあげることにした。ウサギ、馬、たぬき様々な内臓をあげても全くびくりともしなかった。ある日、ブタの内臓をカニにあげるととても勢いがよく次々とカニが釣れた。カニはブタの内臓が好きなことが分かったオレはあることが頭に浮かんだ。網の日の前日、オレはあるエサを手に入れに行った。とても手強かったが、手に入れることに成功した。

いよいよ、月に1度の網の日がやってきた。その日は天気も悪く雷がひどく、やはり行く人はとても少なかった。そんな中でもオレはあるエサを、カバンに入れ海に向かった。海は想像以上に風も雨も強く立っているにもきつい状況の中、家族を養っていくためにもオレはエサを海に投げた。すると今まで見たこともないくらいのカニが集まってきた。オレは雨も風も気にしないくらい夢中になり、網を使いカニをどんどんすくいあげた。その結果1日で2000匹以上釣ることができた。

すぐ家に帰り、妻と子供に報告するととても喜んだ表情で泣きオレに抱きついてきた。オレは、この幸せのために沢山のモノを犠牲にしてきて良かったな。とその時心の底から思った。
その日眠りにつくとある夢を見た。家族5人で豪邸に住み、食卓を囲み大きな蟹を幸せそうにみんなでお話をして食べてる夢だった。

これからの明るい未来を楽しみにし、とても幸せな気持ちで、朝目を覚ますと家の外が大変騒がしかった。玄関では妻がとても混乱していた。何事かと思い窓の外を見ると警察が何台も止まっていた。オレは血が騒いだ。急いで逃げないと。と思った時にはもう遅かった。オレは捕まってしまった。なぜ捕まったかというとエサのせいだ。ブタのエサが反応が良かったことから、ブタの内臓に似た人間の内臓をエサにしてしまったのだ。つまり網の日の前日に取りに行ったエサっていうのは人間を殺してとった内蔵だったのだ。カニを2000匹釣り高所得者になり、家族を養うことしか頭になかったオレは、簡単に人を殺してしまったのだ。

最後に見た、妻の顔は昨日見た嬉しそうな顔からとても憎しみと悲しみの顔に変わっていた。またしてもオレは、幸せだった日をあっとゆうまに最悪の日にしてしまった。結局手に入ったのは、妻でも子供でも仕事でも幸せでもなく、刑務所だった。

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