見出し画像

詩:0050 忌引

価値観の違いによって
ここ10年は共通の話題がなくなってしまったが
今年の三が日に
老人ホームに訪れたときには
精神を昂らせる薬で
異様に活発になった細い折りたたまれた傘のような右手と
「ひさしぶりにしたね」と握手はできた

和解できたのかはわからない

わたしの名前は覚えていたのだろうか

「喪中です」と申したところで
年賀状を送りあうようなことは
このご時世では友人間でももうなく

友引と仏滅には葬式はしない仕来りだけを早朝に頭にいれて
求職活動の日程調整の文面を想定する

冬は夏より人がよく亡くなる
葬式場も火葬場も空いているのだろうか
祖母も面接相手も待たせてしまう

わたしは喪主ではないので
父のモバイルwi-fiを利用して
老人ホームの来賓席で
葬儀屋さんが来るまで
コーディング作業をしているだけである
今からポートフォリオサイトのTOPに戻るボタンを配置する

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?