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【おためし】作品は生命より重い! 美高美大の異常に平常な日常 27/140P

教育カリキュラム

磨奉美術学校へようこそ
覚悟はいいか?
 作品は生命より重い
 天啓
美高受験
 OG
 美術の高校は知らんけど
 カッター
 藝大まであと4年
 点数つくよ
 50点
ーー試し読みはここまでーー
美高
美大受験
美大
卒業後
磨奉
あとがき


磨奉美術学校へようこそ

覚悟はいいか?

 作品は生命より重い

作品は生命より重い
心臓を高鳴らせて27時
わたしが眠ったら
この電車に乗り遅れたら
この子は死産だ
折れないで 汚れないで

アルタート呼吸器に乗り
生まれながらの疾患名
宣告されたら
この子に生きる価値はないのか
産んだわたしも愚か者か

「こんなヘタクソな絵を描いたのは
 誰なんでしょうね」

よかった
我が子じゃない

完璧じゃない
あの子と
その親
隈から涙が
こぼれないように
完璧な
どこかのお子さんを
観ている
だけでした

取り違えたい

わたしを殺すことより
苦しい ああ死ぬか

 天啓

友達の冬休みの宿題が終わらない
遊ぶひとがいないなら
わたしひとりおわり 暇々
14:32
畳に大の字で睡眠
名前を
見るだけ書くだけ話すだけで
吐いちゃう
アイツの血脈まで殺気を飛ばす雪女
そんなことのために生まれておらず
天啓
舞い降りた四字熟語 だれだろうね
おそらく男

岡 本 太 郎
さんとは どなたです

ググって導かれ わたしの魂
他人を殺すくらいなら
この生命をかけて闘え
じぶんでできること
他人に任しおなじ呪詛を
繰り返すなら
じぶんが死んじまえ
おなじことを
繰り返すくらいなら
死んじまえ

シャーペンに焼かれた7枚のルーズリーフ
岡本太郎の 名言の写経
あなたは わたしの人生のひかり


美高受験

 OG

自由課題を手渡し
あの美術の高校に
行きたい
って伝えた先生
あの高校のOG

美術の内申が5になった
これがエコひいきってやつか
母校に合格したいなんて生徒がいたら
これが最大限の応援
このL字校舎は踏み台

廊下の吠える迷子に
遊ばれちゃってる先生
横暴な指揮官にはどうしても成れない

成らない自分を
選べました

ペーパーテストも満点
エコひいきに
実力で追いつき
下駄を履かせられるのなら
さらに上からの
景色見れるように

この背丈を伸ばすだけ
危ない方の道をゆけ
されど
だれも通らなかったことは
ない
先人が拓いた道も
ゆけ

 美術の高校は知らんけど

美術の高校は知らんけど
あんたは勉強できるから
心配はしていない

教科書もひらけない野球少年
教科書をわすれた赤ネイル少女
わたしだけは教科書をひらいて学べる
昨日の「?」のメモ 解き方を訊こう
30人へ スタコラサッサ 個別指導塾

国数英だけご教授願います
デッサンの塾にも週3通います
やること自分で決められます
わたしはさぞ育てやすかろう
 先週の小テストはまんまるビリビリ

進学実績のはなまるテープ
飾っていいです
けれど
系列違いますし
翠嵐湘南とは

そんなご立派な高校に
行けたひとは ここには
いなかったか

合格したら誇り
わたしがつかめればいい
塾に使われるでない
わたしはひとり
志望校も言わない
知らなくていいでしょう
知らんでいい 美術の高校

 カッター

紫外線の虹に見える自動ドアが開き
声を張れ 「ぜんぶください」

木片がキャピキャピ
てのひらから落ちる
木製ナックル
4H 3H 2H H F HB B 2B 3B 4B
星をかがげてのぼる螺旋階段

原初にかえろう
カッターと鉛筆は十字架
ベロンベロン
紙かごに落ちず
黒鉛が歪み伸びる
ひび割れ折れる

回しては削る鉛筆
換気窓からの風

廃れた井戸つき祖父の実家の
縁側から茶の間の風が吹く
よろめいたカレンダーは1972

3Bはふっくら指の腹に染みる影になり
4Hの芯は拘束受けいれず暴れて割腹死

艶やかにわたしを映す
鉛筆削り機は
頼れないや 強くなりな

道具に遣われていた
わたしの手が
いちばんべんりで強い

 藝大まであと4年

今から学べば
藝大合格できます
求めていないキュビズム
パースのルールは知っています?
なんなんだこのデッサンは

下手って思っちゃった
講評はお静かに
まぶた閉じて見てない 言わない言わない

美高受験組のとなり
藝大受験へ先発はひとり
メモに がむしゃらに
小指球部が真っ黒に
デッサンの余白が汚い

きみが
いつか上手くなりますように
予備校の食い物で
終わりませんように

分厚いメガネで
小さい目
から離れて
流れる汗

だれよりも
なぜ焦る

視野のせまい歩き方 ほら
そこに
開いたドアがある
ぶつかるよ

 点数つくよ

勉強できているか相互監視
定期テストの点数は二の次
音楽室からの帰り
「受験勉強どんなかんじ?」

デッサン70点は取りたい
練習が足りない 帰りたい
えっデッサンも 点数つけられるの
点数つけるよ 入試だもの

お遊びじゃないよ
名前が書ければ合格にする高校も
あるらしいが
わたしゃ 落ちぶれていないわ
だから予備校に通ってんだ

好き嫌いは
個人の気持ちだが
上手い下手には
基準があって
なんでもかんでも
感性のせいにしない

ある描き方で 競い合って
器用かどうか 証明して
いるいらないは
描きたいもの
に合わせて
出し入れするだけ

これはこれより点数高い
その理由を
アンタは訊かない

 50点

相模大野からの 相05
16 数えた 24分間
通路に立つしかなかった
ブレザーもセーラーも
みんな出ていく

背中だけのライバルから流れてくる
まだ触らないでいよう「はい 開始です」

歪み笑う楕円形
配置が決まらない1時間
ホッチキスの金具なんてブロック処理し
ていっか よくない
この4Hが誰かへ折れ跳ねる
落ちるかも なんて 「はい 終了です」

卒業ディズニー楽しくない
合否発表は1週間は先
デッサン悔いばかり
内申125 国数英はたぶん7割
救いたまえ内申点
併願校にはこの生命をかけて
行きたくないの
普通科高校はいやだいやだいやだいやだ
地元なんて捨てちゃいたいな

予備校へ紙ペラ1枚の成績開示
ファイリングした50点こっそり
「最低点ですね」

わたしより上ばかりがいる
見下したくないのは本望
行く意味がない 最高点なら

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