#4『かがみの孤城』感想
今回ご紹介するのは、辻村深月(つじむらみづき)先生の『かがみの孤城』という作品です。
*以下ネタバレを含みますのでご注意ください*----------------------
○あらすじ
主人公の中学一年生の女の子「こころ」は不登校がちで、子供育成支援教室(スクール)にも通えずに部屋に引き籠る生活を続けていた。そんなある日、突然光った自室の鏡に入ると、その向こうで彼女は自分と似た境遇を持つ6人の中学生と出会う。
悩みと葛藤を抱えた少年少女たちが送る、ファンタジー冒険譚。
○装丁について
本作ハードカバー版の装画を担当されたのは、ファンタジー系の作品を得意とする絵師として活動しておられる、禅之助さん。
この表紙は、私がこれまで出会った本の中でも一番好きなものの一つです。
美しい。なんと言っても美しいです。
画像では少し伝わりにくい感じもあるので、是非実物を見てみてください。輝きがあります。
あと、この作品を読み終わった後にもう一度表紙を見てください。どれだけこの表紙に細かな演出が施されているかわかるはずです。
○感想
これは、一言。
続きが気になって読むのが止まらない!
この作品、ハードカバー版で558ページあるんです。まぁ一冊の小説としては中々の文量ですよね。
しかし、なんと私は
2日で読んでしまいました!
いやぁ、止まらないんですよ。本当に。
しかも読み始めたのが夜で、1日目も夜中の3時くらいになって、「そろそろ寝ないと明日集中して読めなくなるな…」と思って仕方なくやめました。
こんなに続きが読みたいと思った本は初めてでした。間違いなく、私の
人生を変えた作品
になりました。
私はこの本を、
・思春期の中学生〜高校生とその親
に読んでほしいと思います。
この本の中には、"親には話せないけど、子どもが子どもながらに抱えている悩みや葛藤"が細かく描かれています。その描写がいちいちリアルなんですよね。
私も読んでいて、「あぁ、こんなことあったな」「同じ気持ちになったことあるなぁ」と何度も感じました。是非思春期の学生さんに読んでほしい一冊です。
また、本作には、"オオカミさま"と呼ばれる女の子が登場します。そう、表紙のオオカミのお面を付けた子です。
オオカミが出てくる童話
皆さん何を思い浮かべるでしょうか。
私は『赤ずきん』でした。
だからこそ、本作に出てくる"オオカミさま"は『赤ずきん』をモチーフにしたものだと思ったのです。
恐らく、何の事前情報も無しに本作を読んだ方は同じ様に思った人も多かったと思います。
しかし、まさかまさかでしたね…。
本が終わりに近づくにつれて、ここらへんの伏線回収と種明かしがもの凄いスピードで来ます。
このとき、初めて読んだ時の"全てが繋がった"感と言ったらもう言葉では表せません。
伏線の部分を何度読み返しに行って「うわー!気付かなかった!!」と思ったことか…笑
作中の至る所にヒントは隠れていたんですけど、悔しいことに私は初見では気づきませんでした。
だからこそ、恐らく初見の方は、読んでいるときに「???」と違和感がある方も多いかもしれません。
ですが、諦めず読み進めてください。最後に大どんでん返しが待っていますので。
まぁそんなこんなで、自分はこの手の本を読まないので、
「これがミステリーか!!」
と思い知らされましたね。
最高でした。
○最後に
作品としての構成は完璧ですし、「本格的なミステリーは難しそうで…」という方にもおすすめの一冊です。
あなたが今、学校に行きたくなかったり、友人との関係がイマイチだったりするのなら、もしくはそんな悩みを抱えたお子さんをお持ちなら、是非この本があなたに勇気を与えてくれるはずです。
○著者について
・辻村深月(ツジムラ ミヅキ)
1980年2月29日生まれ。山梨県出身。千葉大学教育学部卒業。
2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ロードムービー』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『V.T.R.』『光待つ場所へ』(以上、講談社)、『太陽の坐る場所』(文藝春秋)、『ふちなしのかがみ』(角川書店)など。
2010年に『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』が第142回直木賞候補作となる。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。
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