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#12『逆ソクラテス』感想



今回ご紹介するのは、伊坂幸太郎(いさかこうたろう)先生の『逆ソクラテス』という作品です。


*この先、ネタバレを含みますのでご注意ください。


○あらすじ

敵は、先入観!

自分の無知を知らない大人。
自分が一番だと威張っているいじめっ子。

みんなの先入観をひっくり返せ!


「自分の考えは正しい。」

そう思っているあなたは"逆ソクラテス"かも!?


○装丁について

本作の装画・装丁はこの方々。

装丁:名久井直子
装画:junaida     *敬称略


いやぁ、まさにジャケ買いする人は絶対買う装丁ですよね。一瞬でしたもん。

これを買わないと、何が"ジャケ買い好き"だ。

と思いました。

毎度毎度、装丁・装画をしてくださる方々、ありがとうございます!
皆さんのおかげで私の趣味が続いています!



○感想

読書好きでなくても誰もが知っている、伊坂幸太郎先生の作品です。

といっても、一年前まで読書をほとんどしてこなかった私は本作が初めての伊坂幸太郎作品だったんですけどね。


最初は、哲学的な難しい話かなーと思ってたんですけど、

めちゃめちゃ読みやすい!!

そしてめちゃめちゃ面白い!


・逆ソクラテス
・スロウではない
・非オプティマス
・アンスポーツマンライク
・逆ワシントン

の5つの短編集(各40〜60pくらい)で構成されているんですけど、どれも読みやすくてとても面白かったです!


一つ一つ紹介してもいいんですけど長くなるので、
今回は私が本作の中で印象に残った部分を抜粋してご紹介します!


1.「僕はそうは思わない」

本書の帯にも書かれるくらい、前半でキーとなる名言ですね。

『逆ソクラテス』の話に出てきます。

作中では、「子どもたちを先入観で見ている先生」が登場します。

ソクラテスといえば、「無知の知」の哲学を説いた学者ですね。

「自分が"知らない"ということを知っている」

これが無知の知です。

つまり、作中の「先入観が強い先生」は、

「自分の意見が正しいと思っているから、先入観で物事を見てしまう」
=「自分が"知らない"ことを知らない」
=「ソクラテスの逆」
=「逆ソクラテス」

というわけですね。

そこで、ある少年は言います。

「そんなの、先生の感想に過ぎないんだ。
今度同じようなことがあったら、言うべきだよ。

"僕はそうは思いません"って。」

作中ではさらに、
「言えないなら、心の中で唱えるだけでも」と続けます。


確かに、「自分が正しい」と思っている大人には、たまにはビシッと反論した方がいいですよね。
もちろん関係を悪くしたいわけではありませんが、理不尽に自分が被害を被ったりするのは良くありませんから、言うべき時にはしっかり反抗することも大切ですよね。

2.「転校してきて、やり直そうとしているんだったら、やり直させてやりたくないか。」

こちらは『スロウではない』に出てきます。

この話では、ある女の子(Aさん)が転校してきて、小さなことでそのクラスでヒエラルキーの高い女子(Bさん)の機嫌を損なってしまったときにBさんが

「Aさん、どうせ前の学校でいじめられて、逃げてきたんでしょ」

という発言をしてしまいます。

その後、クラスの他の子(Cさん)が担任の先生に
「Aさんは、いじめられていたんですか?」
と聞きに行きます。

そのときに、担任の先生がCさんに言った言葉です。

「Aさんがいじめられっ子だったら、何か変わるか?
それに、転校してきて、やり直そうとしているんだったら、やり直させてやりたくないか。」


なんだか、刺さりましたね。

結局のところAさんはいじめられっ子ではなかったんですけど、

確かに、"転校してやり直す"という本人にとっても周りにとっても大きな決断をしたのであれば、
少なくとも転校先の学校では、やり直すチャンスを与えてもいいのではないかと思います。


過去がどうだって、今その人が元気に過ごせているなら良いと思うんです。

もちろん過去は消えませんが、
時にはみんなで"敢えて今しか見ない"ことで、救ってあげられる心もあると思うんです。

このあたりはまだまだ話が出来そうですが、長くなってきたので今回はこの辺で。


3.「一番重要なのは、評判だよ。評判が、みんなを助けてくれる。」

こちらは『非オプティマス』に出てきます。

故意な授業妨害をする子どもがいるクラスに向けて、担任の先生が話した言葉です。

「先生にはバレなくても、周りのみんなは知ってる。あいつは悪い奴だ。あいつはずるい奴だ。大きくなってもみんな覚えている。良い評判とはとても言えない。」

「例えば、自分がいじめていた人が、大きくなって、もしかしたら仕事のお客様になるかもしれない。そしたらどうだろう?」

「みんなには、相手によって態度を変えるような人になってほしくない。見た目では相手がどんな人かはわからないし、相手を舐めていたら、あとで思っていたような人ではないとわかったときに困るし、気まずくなる。」


「だから、相手がどんな相手だろうと、親切に、丁寧に接している人が一番いいんだよ。」


このあたりはまとめて全て名言ですね。

若い人なら小中学生でなくてもあるあるだと思います。

私もこれを読んだとき心に刺さりましたね。。

「一番重要なのは、評判。」

確かに、他者と関わらなくてはいけない現代、そうかもしれません。


ちなみに、一番おすすめの話は、
『非オプティマス』ですね。

なんと言っても、最後のスカッと感がたまりません。
久々に気持ち良い話に出会ったと思いました。


○最後に

なんでしょう。
子どもの頃、こんなことあったなぁ、こんな人いたなぁ、こんなこと出来たら面白かっただろうなぁ、という懐古的な感覚が強かったです。

同じような感覚が、あなたの子ども時代にもあったかもしれません。


子どもの世界をここまで読みやすく表現できる伊坂幸太郎先生、恐るべしです。


この本に出会えて良かったです。



長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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それではまた!

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