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高校生、帰れない

1両編成の山陰本線

 山陰本線は下関から京都まで続く。どこの駅から連結がほどかれ、ポツンの1両になるか調べていないけれど、東萩駅から長門市駅を走る山陰線は1両だ。美祢線も1両。道路の無いところをバスが走っている風に見えて、ストレンジャーがこの電車に遭遇すると奇異に感じる。
 うろ覚えだが、拙者が玉江駅(萩市)に長門市駅から通った45年前、山陰線3両、美祢線2両だったような覚えがある。1両目は1,2年生男子生徒、2両目は1,2年生女子生徒で最後尾3両目が3年生。萩光塩、萩商業、萩工業、萩高校、全高校生登校時の統一乗車ルールが存在した。
 登校の電車は7:02発の1本しかなく、生徒の数がそこそこ多かったし、座ることはできなかった。そのかわり、部活が終わり19時台の電車はらくらく座れた。

あったまきた

 19時20分を過ぎた時間に悲痛な電話がかかってきた。萩に通学する高校生の親である。子どもが電車に乗れなかったから、玉江駅まで迎えに行かねばならぬと語気は荒かった。次の電車まで70分待つより家族の迎えを要請するのは不自然じゃない。俵山は長門市駅から車でさらに20分かかる。
 聞くところによると、19時11分発長門市行きの1両電車は満員で扉から中に入れなかったという。電車は発車時刻を過ぎても出発できず、車掌さんなのか運転手なのか、もっと奥に詰めるように誘導を試みていたそうだが、ほぼ100%高校生の乗客は動かなかった。
 動けなかったというべきか。
 
 その理由はいくつか思い当たる。
 ひとつは、乗客が満員電車に慣れていない高校生という事。都営地下鉄東西線で都心に向かう会社員ではない。身体が密着することに抵抗を覚えるし、だいたいスクールバッグや部活バッグは重いし大きい。
 もうひとつ、犯人はこれという理由があるのだが、最後にのべる。
 電話の主はあたまにきていた。怒髪を向けた先はJRの対応ではなく、強引に乗らなかった我が子に対して。こんな馬鹿で悲しいことが起きている。

陳情する

 翌日、長門市の産業戦略課担当者を通じてJR西日本に夕べの一件を陳情してもらえないかと頼んだところ、快く引き受けてくれた。バス会社、JRと連絡協議会を長門市はもっている。
 陳情の主旨は車両を2両に増やしてもらいたい。大昔は3両だったが、近年は2両だったはずなのだ。昨夏の大雨により、美祢線全線と山陰本線の長門市駅から下関の小串駅までが不通となった。JR代行バスで生徒は通学している。どちらのJR線も起点は長門市駅。長門市から西、南の生徒はバス通学、and、電車通学。1両編成にした理由は自然災害による利用客の減少に依るかもしれないと考えたからだ。

すぐに回答が届いた。

要旨

  • 年度初めの4月、列車での通学に不慣れなお客様が多い

    1. 座席に荷物を置く

    2. 車両の奥の方に詰めずドア付近に固まる

  • 1両で100名以上は乗車可能

    1. 利用者数から考えれば乗れる見込み

問題の本質がわかっていない

 課題解決能力がJR西日本に無いことがわかった。随分前に民営化されたが、国営に戻したほうがいいんじゃないのか。
 座席に荷物を置く行為は大人なら注意できる。乗客が高校生ばかりで他校、上下関係を計れば容易に行動できない。生徒個人のマナーによるところもあるだろうが問題なのは、「車両の奥の方に詰めずドア付近に固まる」。なぜ、ドア付近に固まるか分かっていない。理解しようとしない。ここが一番の問題なのに解決を乗客のマナーに委ねる。呆れたものだな。

 1両編成の車両にドアは前方、後方の2カ所だけしかない。奥に詰めるという事は、車両の真ん中に詰めてくださいということ。これではドアから一番遠くなる。終着長門市駅の手前駅、三見、飯井、三隅で乗降する高校生は降りるときに蓋がされる。その親は長門市駅まで迎えに行かねばならなくなる。多扉車両を用意すればいいだけじゃないのか。3扉か4扉の車両は、大きな会社なのだから所有しているだろう。その車両が不可なら、座席を一部撤去したり、クロスシートからロングシートに変更すればいい。

 乗客が問題だと言う旅客事業者。納得できる回答なら電話の主に伝えるつもりだったが、これでは硬質化した髪が天を貫く。


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