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とんぼ

おにやんまのブローチが首に掛かった冷感タオルに付いていた。
相棒のハンター。

「蚊の天敵おにやんまを着けたら蚊に刺されませんよ」

TVリポーターが40度を超える地域にわざわざ出かけて絶叫していた。
俵山はそこまで上がらないが、今日は小原バス停の気温計が31度を点灯。小原が31度なのか。
涼しい場所なんだけどな。

7月下旬からお盆まで、わたしたちは田んぼで作業する。
うちの法人というより、出資した農業法人の農薬散布なのだ。
山間地帯の田んぼは山を背負っている。
畔を歩けば蜘蛛の巣がまとわりつき、藪に踏み込むとハミやヤマカガシの気配に集中する。

蚊は後回し。
作業前に防虫スプレーを腕と首筋に吹き付けるから。
やつらは嫌な臭いを避けるようにスプレーのかかっていない皮膚を狙う。

血を吸う蚊は女の子だと聞いた。繁殖期の妊婦さん。
ヒトの血は妊婦に必要な栄養がある。
もてもてですね。
ムヒを塗っていたら事務所で慰められる。

相棒にその話を振ると、トンボがいいですよって。
彼はそれをつけると蚊に刺されたことが無いという

Tシャツで作業するわたしはノースリーブ。
去年までアームカバーをつけていた。
日焼け防止じゃなく防虫。
ホームセンターに売っているカモフラージュ柄のアームカバー。

アブが好む。一度や二度じゃない。
カモフラージュに着陸して、なんか吸ってる。
刺す、噛むじゃなくなんか吸っとる。
痒いじゃなく、アブのこれは痛い。

自衛隊員はカモフラージュ柄の隊服を着るが、アブに襲われることは無いんだろうか。
やす子さんに会うことがあれば、真っ先に聞く。

盛夏なんだけど、出穂したばかりの田んぼにいくつもトンボが舞っていた。
斑点米カメムシを食べてくれんかな。
トンボがいたら農薬撒かんでいいのにな。

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