竜胆は若き日のわが挫折の色 田川飛旅子

若い頃の挫折といえば、失恋か大学受験の失敗だが、時季から考えると、おそらく失恋だろう。夏に燃え上がった恋は、女心と秋の空。ひと目盛りずつ遠ざかり、気づけば秋風が吹きはじめ、ぬくもりがほしいのにそっと避けられ寒さが身に沁みる。自分の思い込みに過ぎなかったと認識するのは辛く、生きる気力を失ってしまうほどに悲しい。竜胆は、竜の肝のように苦く、秋の精のように美しい。その鮮やかな青は、高貴で神秘的である。

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