おとぎ話二次創作BL〜桃太郎&浦島太郎&カチカチ山&舌切り雀〜
おとぎ話の二次創作を書くと性癖があぶり出されるというので書いてみました。「桃太郎」「浦島太郎」「カチカチ山」「舌切り雀」の4作です。わたし版お伽草紙。
個人的には「桃太郎」と「カチカチ山」に性嗜好がモロに出たなと思います。「浦島太郎」と「舌切り雀」は難しかった!
ちなみに「浦島太郎」に登場する乙姫のモチーフはオトヒメウミウシです。
全てBLなのでご注意を!!グロい話もあります!!
桃太郎
桃太郎は鬼の腕の関節に刃を突き立てた。四肢を切り落とされた美しい鬼は顔を歪ませて悲鳴をあげる。桃太郎はふわりと笑った。
「痛いですか?痛いでしょう」
鬼の傷はすぐに治る。傷口はみるみる内に塞がった。桃太郎は鬼の胴体に馬乗りになり、よだれを垂らして歯を食いしばり苦痛に耐える鬼の顔を乱暴に掴む。キッと強く睨みつけてくる鬼を、桃太郎は恍惚の表情を浮かべて見下ろした。
「その顔が見たかったんですよ」
人を多く食らった鬼は非常な美形になる。特に鬼ヶ島という無人島に住む鬼は殊更美しい男の鬼で、食われた者達はみなその美貌に油断したところを襲われたという話だった。
鬼の噂を聞いた桃太郎は、犬居、雉丸、猿山という三人の武士を連れて鬼ヶ島へ向かった。三人とも腕利きの武士である。人食い鬼を討伐せんと正義感に駆られて桃太郎と共に島へ向かった。
しかし桃太郎の目的は違う。あわよくば、人智を超えた美しさの鬼を生きたまま捕獲できないかと思索していた。
桃太郎は、鬼を飼いたいと思っていたのである。
鬼ヶ島には一人の鬼しかいなかった。その鬼こそが標的としていた鬼であり、桃太郎はその顔を見るなり息を呑んだ。
なんと美しい鬼か。
必ずこの鬼が欲しい。桃太郎たちの戦いが始まった。
鬼は強かった。最初に雉丸がやられ、次に犬居が倒れた。猿山が息絶えた頃、桃太郎は鬼の両足を切り落とした。身動きのとれなくなった鬼の両腕を切り落とす。鬼の傷はすぐ治るものの、切り落とされた四肢は再生しないようであった。桃太郎は内心ほくそ笑んだ。
芋虫のように後ずさる鬼を馬乗りになって捕まえ、首に刃を突きつける。刃が少しだけ触れた首から鬼の血がたらりと垂れた。
「交渉しましょう。私のものになるか、首を落とされてここで命を落とすか」
鬼は動揺した。この男は一体何を言っているのだろう。しかし首を切り落とされてはもう生きられない。
「お、お前のものになる、お前のものになるから、命だけは、命だけは」
鬼の声は震えていた。必死の命乞いだった。桃太郎は哀れな鬼を冷たい眼差しで見つめていた。
「私の肉を食わないと約束できますか?」
「や、約束する、もう人は食わない」
「いいえ、さらに美しくなってもらうために人は食ってもらわねばなりません。その肉は私が調達いたしましょう」
鬼はますます混乱した。俺のために人肉を調達する?もっと美しくなるために?
「わかった、肉は食うがお前だけは絶対に食わない、約束する」
「交渉成立ですね。これからあなたを担いで運びます。少しでも私に歯を立てるようであればその瞬間首を切り落としますので覚悟してください」
「わ、わかった」
鬼は桃太郎に担がれた。底知れない恐怖で奥歯がガチガチと鳴った。
桃太郎は山の中の小さな家で手足のない美しい鬼と暮らした。桃太郎は山に迷い込んだ人間を殺してはその肉を鬼に与えた。鬼はますます美しくなった。二人の住む山は神隠しの山と呼ばれ恐れられた。鬼はやがて桃太郎に懐いた。二人は血なまぐさい家で幸せに暮らしたのだった。
浦島太郎
浦島太郎という青年は実直な男として有名だった。彼はある日、浜辺で子供達にいじめられている亀を助けた。
「痛かったであろう。傷などはないか」
問うと亀は流暢に答えた。
「浦島太郎様、助けて頂きありがとうございます。お礼にあなたを竜宮城にご案内したく存じます。いかがでしょうか」
「竜宮城とは」
「乙姫様という大層美しい方が治める、海底の城でございます。なに、海底にあるとは言っても、私に掴まって向かえば城では呼吸ができますからご安心ください」
「ふむ。せっかくのお誘いだ。行くとしよう」
「かしこまりました。私の背にお掴まりください」
浦島太郎は亀の背に掴まって海底を泳いだ。見ると真珠のように光る美しい城が海底に建っている。亀の言った通り、城に到着すると浦島太郎でも呼吸ができた。海の中にあるのに、と浦島太郎は不思議に思った。
亀の案内で城内を進むと、天女のように美しい女中たちが次々と頭を下げた。突き当たりの大広間へ着くと、高座に大層美しい男が座っているのであった。浦島太郎は男の美しさに驚いた。
「浦島太郎殿、よくぞいらっしゃった。私が乙姫である」
乙姫と名乗った男は、紫で縁取られ、黄色の地に紫の斑点模様の着物を身につけていた。足は無く、代わりになめくじのようなひらひらとしたものが見えている。
「乙姫殿、あなたは人間ではございませんね」
「左様。私は海牛の人魚である。今日は私の亀を助けて頂き誠に感謝する。盛大にもてなそう」
乙姫は高座からぬるりと下り、浦島の席の隣に鎮座した。宴が始まった。この世のものとは思えない最高級のもてなしに浦島太郎は面食らった。
「乙姫殿。私には有り余る幸せです。このままでは元の世界のことを忘れてしまう。私を帰らせてはくれませんか」
「なるほど、確かにその通りだ。では、この箱を持って行くと良い。この箱は決して開けてはなりませぬぞ」
浦島太郎は乙姫から小箱を受け取った。真珠でできた美しい箱だった。
「それは何故ですか」
「そういう決まりだからです。帰りも亀に案内させましょう」
浦島太郎は亀に乗って地上へ戻った。亀に礼を告げ、家に帰ると何やら様子がおかしい。家族はどこにもおらず、家も廃屋のようであった。浦島太郎はたまたま見かけた人に村のことを聞いた。なんと驚くべきことに、竜宮城へ向かう前から百年もの月日が経っているようであった。孤独に苛まれた浦島太郎は小箱の存在を思い出し、乙姫の忠告を無視して箱を開けた。小箱から吹き出た煙を浴びた浦島太郎は百年分歳を取った。小箱の中には「再び竜宮城へ戻ってくだされば、あなたを若い姿に戻し、長寿を授けます」という書が入っていた。
「乙姫様。浦島太郎様はまたここに戻ってくるでしょうか」
亀は乙姫に聞いた。乙姫は水晶を通して、小箱を開け年老いた浦島太郎の姿を見ていた。
「なに、彼は必ず帰ってくる。亀よ。再び彼を迎えに行きなさい。今度は絶対にこの城から帰さない。いや、彼は帰ろうとしないだろう」
「かしこまりました」
亀は大広間を出て再び浦島太郎を迎えに行った。
亀と乙姫はグルであった。乙姫は物を映す水晶を通して浦島太郎を見つけ、その実直さに惚れ込んでいた。必ずや彼を自分の城に住まわせようと画策し、亀を利用して浦島太郎を自分の城へ案内させたのである。
浦島太郎は城へ戻ってきた。乙姫は書の通り浦島太郎を若い姿へ戻し、人魚と同じだけの長命を与えた。浦島太郎は元の世界に帰ろうとはしなかった。二人は海底の城で幸せに暮らしたのだった。
カチカチ山
とある山に、非常に性悪な美しい雄タヌキがいた。タヌキは山に住む老婆を騙して殺し、その肉を汁物にして老爺に食わせるなど残酷な所業を行った。
老爺には仲の良い雄のウサギがいた。老爺はウサギにタヌキへの復讐を依頼する。依頼されたウサギはしばしの逡巡ののち頷いた。
ウサギは、性悪で、奔放で、蠱惑的なタヌキに惹かれていたのだ。しかし老爺の頼みも断れぬ。ウサギは考えた。
「殺してしまえばタヌキは私のものになるのではないか」
ウサギは何事もなかったようにタヌキに接近し、金儲けの話を持ちかけてタヌキに芝刈りをさせた。ウサギはタヌキが担いだ藁にカチ、カチと火打ち石を使って火をつけた。
「何の音だ?」
その音を不思議に思ったタヌキはウサギに問うた。ウサギは内心、火だるまにしてしまうと死体は持ち帰りづらいな、などと考えながらしれっと答えた。
「ここはカチカチ山と言う。カチカチとした音が鳴っても不思議ではない」
タヌキは背に大きな火傷を負った。タヌキは死ななかった。ウサギは薬だと言って唐辛子入りの味噌をタヌキの背に塗った。タヌキは痛みに苦しんだ。ウサギはそれを見て大変興奮した。必ずやこの美しいタヌキを自分のものにしようと決意した。
タヌキはタヌキで、ウサギのことを信用していた。ウサギが自分に惚れていることを見抜いていたのである。しかしまさかそのウサギが自分の命を狙っているとは露ほども思っていなかった。
タヌキの火傷はじきに癒えた。ウサギはタヌキが美しい姿に戻って良かったと思った。できればこの美しいままに殺してしまいたいと考えた。色々な殺害方法を思索し、最も美しく、なおかつ騙しやすく殺せるのは溺死ではないかという結論に至った。ウサギはすぐに小さな船と大きな船を作った。小さな船は木製のしっかりとした船だったが、大きな船は泥でできていた。タヌキが大食漢なのを知っていたウサギは、漁を口実にタヌキを海におびき寄せた。タヌキは案の定、たくさん魚を乗せられるからと大きな船を選んだ。ウサギは小さい船に乗った。いざ海に出ると、タヌキの乗った泥舟はどんどんと溶けた。タヌキは溺れた。
「ウサギ、助けてくれ、助けてくれ」
泳げないタヌキはウサギに必死に助けを求めたが、ウサギはその姿を熱い眼差しで見つめて微笑むだけで、手を差し伸べてはくれなかった。タヌキは絶望し、これまでのウサギの所業は全て自分を殺すために行われたことだとようやく気付いた。自分に惚れているはずのウサギが何故自分を殺そうとするのかタヌキには理解できなかった。タヌキは溺れ死んだ。
溺死したタヌキの死体を網で掬ったウサギは、冷たくなったタヌキを抱きしめてくつくつと笑った。タヌキの瞳に最期に映ったものが自分であったことをウサギは大層喜んだ。揺れる船の上で、ウサギはようやく自分の腕の中に収まったタヌキの死体に接吻をした。陸に上がってから死体を犯した。ウサギは約束通りタヌキを倒したことを老爺に伝えたのち、タヌキを剥製にした。剥製にする際に出したぬめぬめとしたタヌキの臓物をさらに犯し、ウサギは充足感に包まれながら剥製を眺め眠りについた。
舌切り雀
とあるところに誠実な男と欲深い女の夫婦がいた。男はある日怪我をした雀を助け、家で献身的に世話をした。雀は男に恋をし、大層懐いたが、男の妻は雀を厭わしく思っていた。
ある日雀は女の用意した障子の糊を食べてしまった。雀はそれを知った女に「この性悪雀め、舌を切ってやる」と裁ちばさみで舌を切られた。乱暴に家から追い出された雀は泣きながら自分の住処へと帰っていった。後になって事の顛末を知った男は雀の住処へと向かった。雀の住処はオンボロな小屋だったが、男が入ると、茶色の美しい羽織を着た肌の白い若い男が座っていた。その美しい若い男はあの雀であった。雀は切られた舌を見せながら、呂律の回っていない声で男に言った。
「奥様には大変悪いことをいたしました。謝罪させてください。そして、あなた様には大変お世話になりました。このご恩は一生忘れません」
「いいや、舌を切るなんてやり過ぎだった。こちらこそ謝らせてくれ。俺のところで良ければいつでもまた遊びにおいで」
「ありがとうございます。ささやかですが、精一杯のもてなしをさせてください」
雀の仲間たちはみな口々に男への感謝を伝え、ありったけのご馳走を用意して男をもてなした。最後に雀は二つのつづらを男へ差し出した。つづらは大きなものと小さなものの二種類だった。
「どうかお好きな方をお持ち帰りください」
「なに、こんなにもてなしを受けてさらに何か頂くとは、いくらなんでも貰いすぎだ」
「よろしいのです。私の命を助けてくださったお礼ですから」
「では、小さいつづらを頂こう。それで私は十分だ」
雀はこれが男との今生の別れだと思って深く頭を下げた。その目には涙が浮かんでいた。男はいじらしい雀の姿に胸を動かされたが、小さいつづらを背負って自宅へと帰っていった。家でつづらを開けると、中には金銀財宝が入っていた。それを見た女は「大きいつづらを持って帰ってくれば良かったのに!」と憤怒した。女は雀の住処に押しかけた。女は雀の美しい姿に嫉妬し、無理矢理大きなつづらを奪い取った。女が住処を出てすぐにつづらを開けると、つづらの中からたくさんの魑魅魍魎や蛇が溢れ出した。女は魑魅魍魎に食われて死んでしまった。
妻を喪った男は再び雀を家に住まわせた。雀は好いた男と二人、幸せに暮らした。
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