退職後の小話

時系列があれなのだが、少しだけ余談を。




この記事を読んでくれている方は、退職前にシンデレラがいた話は覚えておられるだろうか。詳しくは退職の内容を書いた記事に載っているが、なにを隠そう引き継いだ後輩のシンデレラ姫である。



ガラスの靴という平凡をメルヘン城に落としてしまった姫は、魔法も解けてそのあとアップアップしながら運動部的ノリノリ先輩や他の先輩、同僚にサポートを受けながら勤務していたそうだが、世間はそんなに甘くない。


そして、勤務地はバリバリの昔ながら伝達高速の田舎と言っても過言ではない。失言なぞ地域にとって恐怖でしかないのが私の印象である。いやあのどかな良い所ではある。坂がなければ。


さて、言いたい事は何となくわかったかもしれないが、退職後も業務の事で連絡したり、電話をしていた私ではあったが、何を返しても「わかりました」返信マンの彼女に本当に何が分かっておるのか問いたいのだよ。


どれだけ「いや彼女の意見を」と先輩の助言を参考にしても折れてもツッコみたい気持ちを抑えながらも、自分の意見はちゃんと言ってくれる子だったので、その抽象的な表現を汲み取りながら自分の意見も返したり、まとめる。上手いのかはわからないが、分からないなら言っては欲しい。

逐一送るのもどうかと考えながら数か月。まずは1か月が経過。


運動部的ノリノリ先輩と久々にラインしたと思ったら姫が心配で乳母の様に尋ねるとなんとか・・!と答える辺りもうヤバイのでは?と思いながら、何となく嫌な予感がする。しかしその時点ではま~また見てくわ~辺りでこっちがハラハラしながら本当よろしくお願い致します。なんて言いながらその日は終わった。


これは直感だが、多分前回の記事で言ったかもしれないが、姫は演奏者になりたいのではと思っていた。弾き方が、自己表現で他者に合わせる感じには見られなかったからだ。練習している曲を聞くと堂々とショパンエチュードです!とキラキラしながら言い、レッスンの日は必ず引き継ぎに来なかった。物語を作ったり作曲も好きだと聞いたし、おそらく、この子は自己完結する演奏が向いている。

でも、今あなたがする仕事や引き継いで欲しい仕事はリハビリに近いもので、自己完結の演奏技術が求められていない。相手を観察し、相手に沿った演奏をする仕事だ。時にはしない事だってある位の。


心の奥では、いわずとも思ってはいたものだった。それでも彼女は気づいた事を聞けば言ってくれるので、希望を持つ事にしたのだった。怖い所を言うとするなら、あとは他人と上手くコミュニケーションが取れるか、正しく失礼なく話せるか、といった点であった。先輩がいればそこは何とかなるはずだ。


さて色々語ってしまったが、この予感は決して間違いではなかった事を先に言っておく。



それは私が退職して数か月。2,3か月たった位だろうか。




何と、副施設長から電話がかかってきた。




彼女が退職したいと言ったそうだ。



今は皆で話を聞いているが、一度説得というか、聞いてあげて欲しいとか言われた。しかし私は新郎から「退職したらもう関係ないから、戻る事は考えない」と言われていたし、友達からも同じ様な事をいわれていたので、取り急ぎ彼女の直属の上司である、運動部的ノリノリ先輩に交代して貰った。


「なんか、他人に興味がない感じ。元々こんな感じやと思ってなくて、この仕事自体もやりたかった事じゃない感じなんよ」


と言われたが、どうしろと・・・!?


いやそれ否定したら自分なんでそれの専門出たんだよ・・となってしまうが、他人に興味ないとかもう向いてないのでは・・・


と思わずマイルドに口に出てしまった私の意見とほぼ同感な感じで先輩も答えていた。いやマジで。


ひそかに一番恐れていたことがなんと数か月でおこってしまったのだった。




その上先輩曰く、保護者同伴の会議で業務の説明をした時もやらかしたらしく、(あんまり知らないとか何か言ったらしい)他職種からもあまり評判が良くないと聞いた。流石に副施設長と施設長が焦って呼び出した所、辞めると言い出したそうだ。

おまけに向いてないやら実は研修の時から迷ってたやら言い出す始末で、差しがに先輩が不憫に思えて仕方ない。

てか私のこの教えるのに悩んだ時間と苦労は何だったんだ。先輩が教えた言葉は何だったんだ。ただの無駄じゃん。マジかよ。なら研修期間に相談して欲しかったわ。と色々うずまきながらも今一番に申し訳ないのは先輩である。

と同時に、やっぱりな、と採用した徳長施設長に心で言う。



それからまもなく彼女から一切の連絡もなしに、そのまま姫は城から出た切り帰ってこなかった。


何がともあれ会えた縁なので、健康である事は願っている。




とは言え、え、でもそれじゃ同僚が辞めれないのでは、と焦ったが、自分の後継ぎが予想通り同僚になって安堵と共に申し訳なさでいっぱいになった。求人が出て、私も後継ぎをやんわり探す事になった。彼女には本当に負担ばかりかけている。分からない所を2・3聞かれると、あとは連絡が来なくなった。上手くやっているんだろう。

しかしその彼女もやっと退職し、私の1か月前に式を厳かに挙げた。本当に綺麗だった。が、まさか披露宴で新郎と付き合っていた事を知らなくて、とか言われるとは思ってなかった。クソう。綺麗だから許してやるよ!ごめんね!!幸せそうな彼女を見て自分のことの様に嬉しかった。

彼女は自分の式にも来てくれた。本当に真面目で、良い人である。



さて、姫のいない、同僚もいなくなった城は1人先輩を除いて、今や心機一転ほぼ運動部的ノリノリ先輩も辞めて見知らぬ土地である。


城がどうなるかは、神のみぞ知る。



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