父親。

私の父親は、死ぬほどマイペースな人だ。


マイペースで、自分にも他人にも優しい。食べることと電車が好きで、考える事はあまり好きではないらしい。

家にずっといろと言われなくてもテレビをつけて1日中ゴロゴロしてる人だ。

人にハッキリ意見してるのを聞いたことも見たこともない。流されたり、調子の良いことを言ったり、少し見栄を張ったように話す。

怒ることはしない。ふてくされるか、拗ねる。怒られたこともない。

母にはいつも文句を言われ続けている。尻に敷かれている。

買い物は好きだ。お金の管理はまるで出来ていないので、父が貯金している印象は皆無である。逆に前借りしたり、貸してと言われたことがある。
母が入院した時、父におつかいで家の財布を渡すと高級とまではいかないがお菓子を思ったより買われて後悔した。

パチンコや競馬はしない。こっそり吸っているタバコとよく飲む微糖のコーヒーで消えているんだろう。最近はアプリの艦隊ゲームに家族の共有支払いから課金しだしていつの間にか樋口さんが出家してる。

机からは100均で買った同じ文房具がちらほら出てくる。たまーにエロ本も見つけてしまう。若いな父よ

父のポケットマネーから買ってもらったものは、金物市の爪切りだけ覚えている。何か買ってあげるなんて、相当なことがなければ言われない。

基本的にだらしない。運動は嫌い。飯は飲むように食べるし、長男だったからなのか分けるとか残しておくという概念がない。強くもないのにビールは日に日に増える。

人には何か言いたいのに努力も嫌いな様である。
ほんを買って満足するタイプで、自己啓発本とかちらほら並んではいる。

基本的にイエスマンで、出来もしない事でも、クビになっても断れない。一時不景気や何やで大変だった。資格や特技がないのは辛い。

めちゃくちゃ打たれ弱い。そして食やタバコに走る。鬱にかかった事があるらしい。心療内科から封書が届いてた。

よく、嘘をつく。小さな嘘ではあるが、癖がぬけないらしい。流れる様に嘘をつく。わかりやすい嘘をつく。お菓子を食べたのに食べてないとか、そういう嘘をつく。認めない。

何か不調がなくても何かと病院に行きたがる。薬を貰って安心している節もある。医者がやめれるって言った薬を続けている。多分、メンタルが弱い分依存傾向も強いかもしれない。

気の知れた仲間といるのは好き。家族でいたり、買い物に行ったりするのは楽しいらしい。純粋に、家とか家族は好きらしい。



ここまで長々聞いて、良い印象をもつ人がいれば教えて欲しい。実の子が見た父親である。

いつも「やさしいお父さんだね」と羨ましがられた。やさしいだけである。

自分の記憶にはピアノのコンクールで入賞した時に歓喜のあまり後ろからガッと肩を捕まれ、死ぬほどゾッとした事が半分占めていて辛い。

でも、本人はいつでも「父である」事をなにか自分の確固たる存在の様なものに思っている風に見えた。本人は「威厳のある父親になりたい」と言っていたそうである。母はそれを聞いて呆れたらしい。

それが、私の父親である。



父は基本的に車移動などだけで、家族のことや、子供の内情に関わらない。母が自分の思う形にやってしまう事もあるし、まず何があっても入ってこない。

だから、学校の成績で何も言われたことがなければ友達の話をあまりした事もないし、相談なんてしたこともない。

そういえば何か教えて貰ったこともないな。

高校生の時に付き合った人が何となく父に似ていて、結婚でもしたらまるっきり父母じゃんとゾッとしたことがある。

自分が大人になっていくほどに、だんだんと父の影が薄れていく。部屋にこもることが多くなり、運動しないので体も衰えて痛めば病院へ行っている。

そして、私が妊娠出産するとなっても何も変わらない。母といざこざになったときに1ミリも参入してこなかった。
むしろ「寂しがってるから連絡してあげて」と言われて私の頭がどうにかなりそうだった。流石にそれはどうかと兄が何か言ってくれたらしい。

母方の祖父母が亡くなった時は、どうやらそれを自分の祖父母と重ねるのは難しかったようだ。
よく話題をふられては母が泣きそうになりながら話す場面を何事もなくすすめていた。


だから、小さい頃から父を頼りにする事はまずなかった。
母は父が出来ることを作って何かするけど、子どもたちにとってはあまり関係がない。父は存在だけの父だと思っていた。

優しくても、困ったときに助けてくれない人だ。


でも、自分にも似たところが山程ある。血は繋がっているらしい。



しかし、私が働くようになったきっかけで自分と向き合ってから、父親のやることや今までの環境を考えてみた事があった。

どうしてマイペースなのか。

最初は祖父母の話や接し方を思い出して「自分のペースで育ちすぎて他者に興味がもてない」「他人との関わりを持つ経験が少なかったからわからないのでは」

だから何度も言われたことを覚える素振りもないし、自分がしたいことに忠実なんだろうか。甘やかされて育ったからだろうか。と思った。


最近までは、本当にそう思っていた。


しかし、こないだ久々祖父母に会った時に考えが変わったのだった。

祖母は、とても優しくて繊細で、お金に関しては管理出来ない系の人である。父の大部分はきっとここから来てるんだろう。

あと、祖母には確かお母さんが小さい時に亡くなった話があった気がする。

祖母は「ご飯はどう?作れてる?」「お昼食べな」「晩御飯に持って帰り」と、育児してる者には嬉しすぎるサービスをくれてから、ぽろっと自分の時の育児も教えてくれた。

「あの時はじいちゃんが出張でね、頼るところもなくて一人で子供を見てたんよ。あんたのお父さんに手伝って貰いっばなしで充分関わってあげれんかったからなぁ」

父には双子の妹がいる。育児に携わる私だが、今ならその大変さが容易に想像つく。

ばあちゃんが大変な時、父はいつも一人で遊んで、小学校では荒れていたらしい。祖父は祖母に育児を任せっきりで仕事に打ち込み、祖母は限界だったそうだ。


その話で、妙に納得がいった。

そして、父への考えが変わった。


父は、十分な愛情を貰えないまま育ち、他者との関わりを持つ機会が圧倒的に少なかったが故にどうして良いかわからなかったのだ。

メンタルも不安定だから、いつものマイペースを保とうとする。タバコや薬や食べることに走る。

他者と関わる機会が少ないから、自分の事で他者がどう思うか分からない。だからイエスマンになる。


もちろん祖母は責められない。環境の辛さは痛いほど想像出来るし、寧ろ祖母にはもっと話を聞いてあの時の辛さを消化してって欲しいと思う。


物事には理由があると言う。

今回は父のことがわかったので理解はしたが、それでもそこから変化出来るかは本人次第だと考える。

だから、今までの事は納得しない。


まわりが変わることなんて早々無いのでおそらく父も変わらないだろう。

でも、声のかけ方は頑張って少し変えてみようと思う。

オムツ楽だなっていいだしてゾッとしたからな。


あなた、怠惰デスねぇ....

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?