今は夏。私は時々それを思い出す。
私は、修士から博士課程まで研究をして、オーバードクターまでしたが、学位を取らずに大学を辞めた。一度は諦めた研究者の夢だか、研究の生活はやはり魅力的だと感じ始めている。そこでなんとか今の仕事をしつつ、また大学に通いたい。
現在、エンジニアとして自社開発SaaSの開発に取り組む会社で働いている。中退後に就職して、半年経つ。エンジニアと言う仕事が未経験の分野であった事もあり、入社してからは業務で使う技術を覚えることに精一杯だった。忙しいことは幸いな事に、研究の事を少しだけ忘れさせてくれたように思う。しかし、業務にも慣れて余裕が出てくると、刺激が足りなくなってくる。その頭の余白に容赦なく研究欲が入り込んでくる。
もともとエンジニアを選んだ理由は、リモートワークが出来る事が1番の理由だ。リモートで働きながら、大学院に行ける可能性がある。とにかく可能性を残すための処置だ。しかし、働き始めてみると思いの外、自分に合っていると感じた。まず、エンジニアの業務の8割はプログラミングをするため、実装のためのリサーチし、理解する作業だ。研究では、論文読んでから実験系を構築するまでの作業に当たる。当たると断定しているのは頭の使い方が両者でほとんど変わらないからだ。
博士課程まで進んだ学生なら、勉強が苦にならない人たちであろう。流石に実験をする、と言うことは不可能だが、大学を卒業した後もある程度生産性ある活動をしたいのなら、エンジニアという選択肢は博士卒業後の就職先の最後の砦として考えておいていいと思う。幸いな事にエンジニアを新卒として取る会社の中には、勉強が出来て、自走できる博士課程の学生を欲している。
とりあえず私はこの仕事を続けながら、研究という活動も一緒に行っていく決断をした。今はそれらの狭間で何かできないか(分野でいうとバイオインフォマティクスや生物物理といった領域)と考えている。これらの分野も研究室に行かずともリモートで研究することが可能だ。
私の活動の多くは、デジタルの世界に移行する事になりそうだ。今でもほとんど外に出ずに在宅勤務をしている。空調の効いた部屋の中で、時々外が夏である事を思い出す。
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