ありがたかったポケットティッシュ

ちょっと前の話なんだけど、イオンに遊びに行った時の話。

その日はショッピングしたり、映画館で『TENET』って言う映画を見たりするためにイオンモールに早めに向かった。
久々のイオンモールで、じっくりといろんなお店を回り、今年の冬はどんな服にしようかなどと店員さんとも自然に会話も弾ませながらしばらく過ごした。喉が乾いてきたので、飲み物でも買おうと足早にフードコートに入ろうとした時、目の前にポケットティッシュが差し出された。ちょうど今から物を口にするところだったからありがたく受け取った。
渡してくださった女性が急に僕に話しかけ始めた。

「今、ウォーターサーバーの案内をしているところなんですが、ちょっとみていきませんか?」

なるほど、そう言う目的だったのか。
ウォーターサーバーは前から少し興味があったし、その方がどんな営業をしているのかも気になったので話に付き合うことにした。

「お水は、よく飲まれます?」

始まった。

「うん、味のついたものより水のほうが好きなので結構飲みます。」

家では結構水を飲む方だ。

「そうなんですね!実は今、このウォーターサーバーがテレビのCMにでる前で、無料でご自宅におけちゃうんです!送料もかからないのでお得ですよ!」

「ヘェ〜、すごいですね!無料なんですか。」

「そうなんです!3年間ずーっと無料なんです!」

「ほぉー」

「テラスハウスとかでも使われたことがあるんですよ〜テラスハウスって知ってますか?」

「あぁ、テラスハウスは最近少し話題になってますよね。」

その質問は今はあんまりプラスにならない気もする。

「そう〜、ですね、、いろんな場所で使われてるウォーターサーバーなので使い勝手はいいですよ!」

「そうなんですね〜、、」

「幅もあまりとらない形なので、邪魔になることも少ないです!」

「ふぅーん」

たしかに細長い形してるなぁとは思うが、大体のウォーターサーバーはそんな形だ。

「それで、お金がかかってくるのは水だけなんです!水も1980円とお手頃です」

そう言って、実際に注文できる水の入った容器を見せてくれた。

なるほど、12リットルのよく見る容器が1つで1980円か。もし置くとしたら月に1つは必要になるから、相当な出費だな。いつもはスーパーにある無料のお水を汲んで来てる。スーパーのお水は完全無料で掛かるのは最初に購入する必要のある専用の容器2個で1000円くらいだけだ。水にお金がかかってしまうのなら、今まで通りスーパーに汲みにいったほうがいい。それに、歩いて汲みに行くのもいい運動になってて、嫌いじゃないしな。
いや、待てよ?ウォーターサーバーを自宅に設置し、1個だけウォーターサーバーの水を買って、そのあとはその容器にスーパーで汲んできた水を足していけば、ウォーターサーバーの機能(冷たい水と熱いお湯が待ち時間なしで出て来る機能)を最初の1980円だけで手に入るのではないか?
これはお得すぎる!!

「いろはすとかを外で買うよりも断然お得なんです!!」

「そうなんですね〜、あ、この容器1個で結構な量が入ってるんですね?」

「はい!この容器すごいんですよ!水が減っていくとそれに伴って潰れていって、水がなくなって交換する際にはペシャンコになっているので、捨てやすくて、水の交換も楽なんです!」

え、ぺしゃんこ??
それってもう戻らないよね〜
そしたら、僕にとってこのウォーターサーバーを購入する意味がなくなった。

「それはすごいですね〜」

「普段はどのくらいお水飲まれるんですか?毎月お水を買わなくてはいけないという縛りもないので、必要な分だけのお水が購入できます。ふた月に1つとかのお客さんもいらっしゃいますよ!」

「ん〜、一日2回プロテインを溶かすのに使ったり、家にいるときの飲み物として使ったりするから、少なくともひと月に1つは必要だと思いますね。」

「それでしたら、月1980円だけで美味しいお水が手に入るんです!すごいですよね。月1980円だったら、家計にもあまり影響がないですし!」

「ん〜、スーパーとかに置いてある無料のお水を普段は汲んでいるので、これからもそれでいいかなぁという気がしてます。」

「そうなんですね!ただ、このお水には空気がたくさん含まれてて、とてもいいお水なんですよ!他のお水とは違います!」

「そうですかー」

「それに、月に1980円くらい、ほとんど家計に影響ないじゃないですか!それで家計が苦しくなる家なんて少ないと思いますよ!!」

ん?んん?
今、この人なっていった??
月に1980円は家計に影響がないって?
そんなことは全くない。
自分の感覚だと相当な出費の部類だ
なんなら、10月の電気代より高いではないか。

「ん〜、僕はもしかしたら、その少ない人のうちの1人かもしれません。」

戸惑いの表情を向けてきたようにも見えたが、それはほんの一瞬だった。

「なら、お仕事もっと頑張りましょう!」

は??

えーっと、とりあえずお断りしておこっと。

「もっと仕事をですか(笑)。えっと〜今回はウォーターサーバーはいらないなぁ〜。じゃ、もういきますね〜」

「あ、かしこまりました!」

僕はすぐにフードコートに入り、ちょっと値段が高い梨ジュースを購入し、彼女の耳障りな声が遠くでまだかろうじて聞こえるあたりで、しばらく考えた。

んー、やっぱり、もっと仕事をしましょうというのは初対面の人に言っていい言葉ではないなと思う。

僕はたしかに、同じ世代の日本人男性の平均年収を稼いでない。だけど、それは怠けているからとは自分では思っていない。自分のやりたいことがあって、そこに時間と体力を使いたいから、仕事は最低限度の生活が維持できる程度でいいと思い、仕事はほどほどにしている。

1人ひとり大事にしているものやことや人があって、そのために仕事をしている人もいれば、そのために仕事を減らしている人もいる。

何か病気を持っていたり、その他の要因で仕事ができない人だっている。

初対面で相手のことをほとんど知らない状態で、もっと仕事をしましょうというのは、あまりにも無責任で、相手のことを考えられていない発言だよ。

それに、ウォーターサーバーの営業なら、もっとその商品のいいところを伝えて、月1980円は高いけど、買う価値があるなって思ってもらえるように話すべきだよね。うん。

あーーー、これは今度ブログで書こうっと!!
今日はもう考えない!!気持ちを入れ替えよう!!

平日の昼間だからだろうか。フードコートには座席の2割ほどしか客がおらず、大声で喋る客なども居なかった。

「あ、この梨ジュースめちゃめちゃうまい!けど、冷たすぎて喉が痛いな〜。ふふ」

映画の開演までまだ時間があった。

梨ジュースを飲み終え、ゆっくりとウィンドウショッピングを楽しんだ。

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