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ミニレクチャー④「自殺予防とセルフケア」

 東京大学相談支援研究開発センター/ピアサポートルームは、東大の構成員が長期休暇中の生活リズムを維持しながら運動不足を解消し、また健康的に新学期を迎えるために、2022/2/14〜3/24の平日にオンラインエクササイズというプログラムを開催してきました。
 ヨガやピラティスのLIVE配信など曜日ごとにメニューは異なり、木曜日には相談支援研究開発センター等の先生方による、健康に関するミニレクチャーが行われました。その内容は非常に参考になるものであったので、今回はミニレクチャーの要約とピアサポーターの感想を公開します!
 今回は3月10日に行われた、学生相談所の大塚先生による「自殺予防とセルフケア」というテーマでのミニレクチャーの紹介です!

レクチャー内容の概要

 3月は自殺予防月間です。大塚先生から、自殺予防とセルフケア、自殺を相談された際の対応についてレクチャーしていただきました。なお、亡くなられた方やご遺族の気持ちを尊重し、「自死」と表記されることもありますが、国の取組みや調査研究では「自殺」が用いられることが多いため、この記事では「自殺」と表記します。

1.自殺の認識と現状
 自殺にまつわる以下の俗説を聞いたことがあるでしょうか。「自殺を口にする人は自殺しない」「ほとんどの自殺は予告なく起こる」「自殺について話すのは良くない」。これらの俗説はすべて誤りです。もし、友人などから相談を持ち掛けられた場合はまずはじっくり話を聞くことが大切だそうです。相談された場合の対応については後ほど紹介します。
 日本は他国と比べ若者の自殺が多く、大学生の自殺はとくに3月に多いです。大学生の自殺は2020年以降増加していますが、新型コロナウイルス感染症との関連は「不明」とされています。
 自殺対策の主な取り組みとして、法律、精神保健的アプローチ(うつ病対策や企業の産業医義務付けなど)、自殺予防教育、未遂者支援などが挙げられます。

2.「死にたい」と思ったときは
 いくつかの調査によると、日本において「死にたい」と思ったことのある若者は50-60%程度います。また、2020年発表の調査研究によると「本気で自殺したい」と思ったことがある若者は20%超です。自殺したいとは思わないけど「むなしい」「消えたい」という大学生からの声はずっと聞かれているそうです。自殺までいかずとも、心や体は十分頑張っている状況かもしれません。「しんどい」時は自分を労わりましょう。

 カウンセラーの伊藤絵美さんの『セルフケアの道具箱』を参考に、「とにかくしんどい時の対処Ⅰ〜とりあえず、落ち着く系〜」を紹介していただきました。抜粋すると、①自分の考えていることを書き出す/叫ぶ。②grounding=地に足をつけること。下へ下へと身体の力を落とす。③肌触りのいい毛布やタオルにくるまれる。④ひたすら単純作業をする。⑤漸進的筋弛緩法などが紹介されました。

 レクチャーの中で漸進的筋弛緩法を実践しました。この方法は思い詰めてない時でも緊張したときなどに有効です。方法はこちらです。①両肩(手、顔など)に力を入れる。②10秒間力を入れる。呼吸を止めないようにする。③一気にストンと力を抜く。脱力している感覚を感じる。筆者もレクチャーを聞きながら行い、力が緩まるのを実感しました。

 次に、「とにかくしんどい時の対処Ⅱ〜誰かとつながる系〜」を紹介していただきました。例えば、①「自分の心をひとりぼっちにしない」と心に決める。②好きな人、あこがれの人の名前をかき集め、イメージする。③相談できる専門家や機関の情報を探す/集める/書き出す、などです。思い詰める前に「しんどくなったら相談できそうだな」という人を思い浮かべておくことが大事です。

3.「死にたい」と明かされたときは
 最後に、もし人から「死にたい」と明かされたときの対応についてレクチャーしていただきました。
 「死にたい」と明かされたときはTALKの原則を思い出しましょう。TALKとは、TELL:伝える(心配を言葉にする)、ASK:尋ねる(はっきり聞く)、LISTEN:傾聴(訴えや気持ちに耳を傾ける)、KEEP SAFE:安全確保(危険な時は独りにしない)の頭文字です。冒頭で、「自殺について話すのは良くない」という俗説は誤りと紹介しましたが、聞く方も無理せずに話をすることが大切です。

 今回のミニレクチャーは、自死にまつわる考え方を見直す機会となりました。以下、参加者とともに受講したピアサポーターの感想です。

感想

・最初に紹介された俗説「自殺を口にする人は自殺しない」「自殺は予告なく起こる」「自殺について話すのは良くない」は自分自身も耳にしたことがあったので考え方を直したい。

・新型コロナウイルス感染症との関連は「不明」が9割超とは知らなかった。てっきり関係が大きいと思っていたが、2021年は例年と同じ傾向ということで驚いた。

・緊急事態宣言が出され制限の厳しかった2020年3月の自殺者数は少なく、対面授業が再開され、著名人の自殺が報道された秋ごろ増加していたことに驚いた。メディアとの付き合い方も考える必要があると思った。

・自殺支援の取り組みにいろいろなことが行われていると初めて知った。それでもなかなか若者の自殺率が減らないことに問題の難しさを感じた。

・「しんどい時の対処法」は様々な箇所で実践できそう。辛いときや緊張した時に活用してセルフケアを心がけたい。

・レクチャー内で漸進的筋弛緩法を実践して、PCの前で固まっていた筋肉がほぐれ効果を感じた。

・人を助ける時のTALKの原則はとても参考になった。

・適度に周りの人に相談することが大事。ピアサポーターとしても他の人に相談する大切さを伝えていきたいし、専門的な相談までは業務上できないが、すこしでも誰かの不安の解消に役立つ情報、場を提供していきたい。

東京大学ピアサポートルーム
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