よく見る植物園の夢

意識の深い深い所まで潜って、かつての自分を思い出す。

僕は夢想家であった。言葉をつづり、音を編み、空想を描いて楽しんでいた。僕の生み出す独特の世界が好きだった。と僕は今更ながらに気づいた。なぜって、それらは一番もろくて繊細な核心部だったから。
空想の中は、消毒液の匂いがほのかにして、風がやさしくなびいていて、なぜか懐かしい気持ちにさせる。

朽果てた植物園と似ているのだ。
白く割れた瓶。錆びた鉄。空気中の煌めくほこり。部屋の隅はほの暗い明かりが差し込み、枯れかけの植物を映す。
あの寂れた研究室の中本を読んだのも、青い沼を1人で凪いだ夜もすべて夢であった。
夢の僕は僕を1番わかっていた。美しい言葉をつづっていた。その核こそ本当に大事にしたいものであって、自分とは何かを証明する本物だった。

いつかはわすれてしまう。

だんだん現実に帰ってしまう。
人間はわすれてしまう生き物なのだと、全て忘れた後に気がついたのだった。