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夜な夜なリレー小説を錬成する百合オタクたち【じゃれ本】

※この記事はフィクションです。実在の人物や団体、架空のキャラクターとは関係ありません。

登場人物紹介
あまろ :東京喰種と進撃の巨人とワールドトリガーを養分にして育った
うどん脳:親子百合の大家として知られている
しーしー:ここ数ヶ月で沼津に詳しくなってきたらしい
とむはま:最近はずっと呪術廻戦のことを考えているらしい
ホドウ :ダントツで分かりやすい特徴的な文を書くのですぐ分かるらしい
shin       :哲学を絡めたオタク考察に定評がある
wisteria:社会人会員。今日カノの新刊を楽しみにしているらしい
yuzati   :地味に貴重なボイロのオタク

誰がどのパートを書いたのか想像してみよう!

ごきげんよう、東京大学百合愛好会のあまろです。

皆さん、リレー小説を書いたことはありますか?

今回私が独自調査をした結果、

  • 文才がないのでできない

  • 足手纏いになりそうで怖い

  • 書いてみたいが、集まってやるのは面倒くさい

  • やりたいと思ったが、一緒に書くような友達がいないことに気がついた

  • そもそもリレー小説という概念を知らない

といった意見が集まり、授業以外のプライベートでやったことがあるという人は皆無でした。

そう、リレー小説は難しいし面倒くさいのです!!

しかし、そんなリレー小説を簡単に書ける遊びがあります。
それが『じゃれ本』です。
じゃれ本とは……

リレー小説形式で、短くて不思議な物語「ショートショート」をみんなで書き上げていく新感覚の “遊び” です。

物語を書くなんて難しそう。他の人に迷惑をかけたらどうしよう…。そんなあなたも、この魔法の「じゃれ本」と、楽しむ気持ちさえあれば大丈夫。もちろん、物語や創作が好きな方も大歓迎です。

できあがった物語の完成度に唸るもよし、あべこべ具合に捧腹絶倒するもよし。

名作、迷作の数々を、ぜひあなたの手で生みだしてください!

『じゃれ本とは?』ーじゃれ本公式サイトより引用(https://jarebon.com/#ABOUT)

……というゲームです。

ルールは簡単。
参加者は、タイトル、そして前の執筆者が書いた文章のみを参考にして、物語の続きを書いていく、それだけです。
全体の流れなんて気にする必要はない。
自己主張の強いオタクたちにとってこれほど素晴らしい環境は存在し得ないでしょう。癖(ヘキ)に従い、脊髄反射で物語を綴ることのなんと心地好いことか!

そして『じゃれ本』の醍醐味は、何より出来上がった小説を参加者みんなでツッコミあいながら鑑賞することでしょう。

『こういう展開に持っていってほしい』『この設定を活かしてほしい』……

そのような期待は、好き勝手物語を紡ぐ参加者によって全て破壊されます

そのため、誰にも予想することのできないカオスな物語を量産できるのです。

そのため開き直ってとことんカオスな物語を紡ぐも良し、予測不能性に逆らって物語の体裁を保った物語を目指すも良し。
楽しみ方は様々です。

じゃれ本のルール

今回は百合愛好会らしく『百合小説』をテーマとして実際に遊んでみました。
出来上がった数十もの作品全てを紹介したいところですがそれは難しそうなので、今回は選び抜いた珠玉の6編、そして問題作7編を公開したいと思います。

中には理不尽なネタや上品とは言えないネタもありますので、苦手な方はブラウザバック推奨です。


シナリオ部門

優勝『借り物のクリスマスツリー』

小説としての出来栄えを評価するシナリオ部門、その優勝作です。

私の家はクリスマスを全然祝ってもらえなかった。仏教徒だからって言ってたけど、今から思えば絶対嘘だ。
だから私はクリスマスになるとミカちゃんの家に行った。おっきくてきれいなモミの木のある、ミカちゃんち!

ミカちゃんの家は基本的に何でも大きかった。きっとお金持ちなんだなぁと、小学生の私は思った。
それから、ミカちゃんの家でクリスマスを過ごすのが恒例になっていった。

小学6年生の時、ミカちゃんが転校して遠くに引っ越すことになった。
お金持ちのミカちゃん家はモノが沢山あったみたいで、引っ越しの時に近所の人に色々あげていた。私は、いつも見ていたツリーのことを思い出した。

あの木をこの先もこの場所で守り続けていきたい。そんな感情が湧いてきて、気づいた時には私は引っ越しを明日に控えたミカちゃんの家にいた。

「ミカちゃん、本当に行っちゃうの?」
「もう私にはどうしようもないじゃない、お父さんが引っ越すと言ったら引っ越すのよ」
ミカはそう強がるが、その目には涙が浮かんでいた。
「一緒にあの木を守ろうよ・・・!」

ミカは返事をしてくれなかった。
駄目だよ、ミカちゃん、あれはミカちゃんのだから。私のじゃないんだから。だから…
いつの間にか二人とも泣いていた。
次の日彼女は引っ越していった。

あれから10年がたった。
ミカのツリーは、私の物になってしまった。

作:あまろ,しーしー,とむはま,ホドウ,shin

とむはま:この作品が一番綺麗にまとまっている気がするな
ホドウ :いいですねぇ、話がちゃんと成立している
あまろ :固有名詞が生き残っているのが評価ポイントですね

芸術部門

優勝『副業ミジンコ』

どこか芸術を感じる作品です。

「ねえっ、ねえっ、帰ろ!」
放課後になると、毎日これだ。席がこんなに離れているのに、よくやるよ。
「荷物がまだだろ……」
「早く、早く!」
ぴょんぴょん跳ねてる。ほんと小動物だな、こいつ。

そんないつも元気に満ち溢れた「こいつ」なんだが、小動物どころか、実はかの超有名な微生物、ミジンコらしい。初めて聞いた時は耳を疑った。

コイツ、横から見るとカワイイが、正面から見ると気持ちが悪い。地球上の生き物とは思えない有様だ。

ようく観察すると、横から見る顔と正面から見る顔が同居している。
「.....ピカソか!」
この生き物はキュビズムを体現している!三次元に生きるコイツが、進化の果てにピカソと同じところに辿りつくとは!

そのキュビズムの体現者たるミジンコに、私は敬意を表して名付けたーーパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ(中路)・デ(中路)・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ、と。

「長すぎーー!!」
彼女のイナヅマのようなキックで私はかなりの距離を吹っ飛ぶことになった。勘弁してくれよ。せっかく美術史を学んできたのに。
着地地点は大阪。
「まいど!」
こいつ早すぎだろ。ハア。

…....しゃーない、ミナミで一当てしたるで〜! 個性強い街やから、美術学んできたことが生きるはずや!な? 自分もそう思うやろ?

And they all lived happily ever after.

作:あまろ,しーしー,とむはま,ホドウ,shin

shin        :意味がわからない
ホドウ :本物のミジンコになってるの酷すぎるでしょ
あまろ :芸術を感じる良い作品なのでノミネートさせちゃいましょう
しーしー:冷静に百合関係なくなってるかも

……以上2作品が、比較的穏やかかつ綺麗にまとまった作品になります。
つまり、以下で紹介する作品は『全然穏やかではない』かつ『話がとっ散らかっている』作品ということです。
あまりにも酷いので、一部note用に書き換えた部分があります。

ハジケ部門

【注】本部門以降、一部下ネタがあります。苦手な方はブラウザバック推奨です。

次点『東村山の女帝』

程よくハジケることのできた作品です。

東村山ーネオ東京の端、ほぼ埼玉の位置。
その哀れな土地は、ある女によって統治されていた。
フレデリカ"エンプレス”南。
東村山の女を束ねる、最強のアマゾネスである。

女帝フレデリカにはいかなる女も逆らうことが出来なかった。しかしここに一人反旗を翻そうとする女がいた。女の名前は、ヒッポリュテ

ヒッポリュテは、東村山の民を苦しめるフレデリカの横暴を見るに見かね、反乱を起こしたのである。
しかし、女帝フレデリカはその帝位に就いている限り、刃によっては殺せない。
聖剣・Liliestを除いて・・・

ヒュッポリテは聖剣・Liliestを探すために小金井市に飛んだ。プライベートジェットだ。早速一般小金井市民に話を伺う。街の人が言うには、まずマイナンバーの登録が必要らしい。「死んだら祟るぞ河野...」

うどん脳:なんで小金井?
あまろ :しれっとミゲル*が混ざってておもろい
*呪術廻戦の登場人物

小金井駅前に設置された河野くん人形が、私のマイナンバーの発行完了を宣言する。
「ヒュッポリテのマイナンバーは、847553899744です」
たちまち私の人権は消し飛び、ホームタウンへ涙ながら帰還するのだった

ホドウ :ここで知らない名詞が4つも出てきて詰んだかと思った
とむはま:これ何で人権は消し飛んだんですか?
あまろ :マイナンバーがバレて悪用されまくったからです……

女帝は怒り心頭だ。
「ヒュッポリテ、この体たらくはなんだ。東村山の名に泥を塗る気か。」
私がしどろもどろになると、女帝は言い放った。
「戦争だ。貴様の人権などどうでもよいが、我への侮厚は許さん。」

かくして、東村山の地は戦火に包まれた。

作:あまろ,うどん脳,とむはま,ホドウ,yuzati

とむはま:話自体はよくできている気がする

【総評】
終始程よく意味が分からない。一人の人間が思いつくのは難しいストーリーでじゃれ本の強みが出ている。
小説としてはヒッポリュテとヒュッポリテの表記揺れが惜しい。

優勝『鳩ラグビー』

分かりやすくなったボーボボ世界と表現するのが適切な作品です。

「鳩でラグビーしよう!」明里がまた突拍子もないことを言い出した。このご時世に鳩ラグビーなんて許されるはずがない。

あまろ :いや最初から意味がわからない

「これはT大学農学部の研究でわかってることなんだけど、鳩ラグビーには一定の媚薬効果があるらしいんだよね」
そんな馬鹿な。また明里は私のことをからかっているのか?まぁ面白そうだし鳩ラグビーやってやるか。

shin      :???

やり出すと、意外と楽しい。そして、身体の芯が燃え上がるのを感じる。さすがは天下のT京大学。いや、それともそういう気持ちにさせた明里がすごいのか。なんにせよ、身体が熱い。

帝〇魂!!
明里の剛腕が鳩を時速285km(東海道新幹線の最高速度)で射出した。
私はその鳩を逃さずキャッチ、そのままタッチダウンを決めた。

とむはま:東京大学じゃないのか
ホドウ :叙述トリック?

「ポポーッ!」
鳩笛が鳴った。先制点だ。
「やるじゃん!」
「明里もね!」
見たか、空にはばたく私たちの友情!
次なる場が投入される。試合はまだ始まったばかりだ。
「くるっぽー!」

「ピギギョア!」
鳩が悲鳴を上げる。その隙に明里が前に出るのを私は見逃さなかった。
「ポポーツ!」
私達はそれからさらに点を重ねた!

気付いたら私たちは肌を重ねていた!気付かなかった!シームレスに幸せなキスをしていた!これが鳩ラグビーの媚薬効果...明里の言ってたことは本当だったのか!流石T大学!

作:あまろ,しーしー,とむはま,ホドウ,shin

あまろ :なにこれ

【総評】
平然と知らない世界の話してて怖かった。
比較的無難な作品の中ではこの作品が一番意味不明でありながら話の守備が一貫していて良いと思う。
結局何の話だったんだろう……

審査員特別賞『土葬される缶バッジ』

展開のハジケは控えめながら、尖ったキャラクター像を共有できた作品です。

役目を終えたものは、葬られなければならない。

ぴえ〜〜〜ん、推しピのエバッジ全部集めたのにかのてゃ(彼女のこと)に捨てろって言われた〜〜〜(泣)コンカフェバイトでたくさん稼いで全部揃えたのに〜(😢)
でもかのてゃのほうが好きだから〜〜〜涙

ホドウ :もう温度差で風邪ひきそう。ナイス舵切り

....…はあ。
泣き喚いたらスッキリした。
令和のワムウといえば、この私と言われている。
いいんだ、推しのバッチくらい、土にくれてやる。
だからかのてゃ(彼女のこと)のことくらい独り占めしてもいいよね?

と、そう上手くはいかないんだなぁこれが。次の日、かのてゃが別の女と歩いているのを見た。怨。せめてバッジを返してほしい。

すぐ元かのてゃをブロックして新しい推し金バを買いに行った。切り替え切り替え!

でも明くる日はなんと、新しい推しこと今かのてゃ(缶バッジで20k飛ばしちゃった!)を見かけた。今日はすっごくすーっごくいい日になるかも!

と思って家をでた矢先、
ききい〜〜〜〜〜〜〜!!!ドーーーーーーン!!!
目の前が真っ暗になった。

そんな....ここで終わりなの...?まだ彼女と結婚式もあげてないし..えっとあと...なんだっけ..来週のジャンプ読めてないし....アレ思ったより私って満たされてる...?いやでも死にたくない!

待って、ページ挟んだらなんで私が死ななきゃいけないのか忘れちゃったわ!
うーん、もう特に死ぬ理由もないし、復活しちゃっていいかな?
あたち、カノヨ(喃語で彼女の意)といっぱいぎゅーしてちゅーすりゅの!!

作:あまろ,しーしー,とむはま,ホドウ,shin

shin       :何なんすかね、これ
あまろ :とりあえず楽しそうだ

【総評】
元気があって良いですね

総合優勝

『右に偏った長距離ドライブ』

芸術性とハジケが両立した優秀作です。
ノーカットでお楽しみください。

私の一番の幼馴染は、昔からマ◯オカートをするといつも、ハンドルを切った方向に身体が傾いていた。
私はその症状は出なかったから、隣でやってるとよく肩が当たって、いつも笑い合っていた。

なんとなく、そのまま彼女とはずっと一緒で、なんとなく、私たちは付き合っているらしい。
それである日突然
「ドライブいくよ!」
の一声。
思えばこの時、マリカの傾きを思い出して止めておくべきだったのだ。

彼女の運転する車のサイドミラーは、右のそれだけボロボロだった。彼女の運転する車は常に中央のラインぎりぎりを走行しようとする。
それでいてハンドルを切るたびに身体を傾けるのだからたちが悪い。

彼女の車は運転席が右にあるせいでいつも隣に座っている私がサイドミラー係だ。ちなみに彼女は思想も右寄りで、車は右半分だけ太平洋戦争で負けてないことになっている。******するときは左側でやる。

ちなみに過去一度だけ車の右側で******をしたことがあるのだが、その時は絶頂時に「クる」と言っていたので、もしかしたら右半分はアメリカ領かもしれない。
だから私は車の左側に銃を乗せてバランスをとる

もちろん、いつも銃を車に積んでいるわけではない。だって、法を犯したくないから。道路交通法っていうのを守らないといけないって、自動車学校時代に教官から口すっぱく言われてきた。

でも今回は特別…
「もっとアツく燃え上がらせて!」
彼女は私にキスをして、私はショットガンをぶっ放す。
乾いた喉にテキーラを流しこむと、サイコーの気分だ。この国が少し好きになった。

作:あまろ,しーしー,とむはま,ホドウ,shin

shin        :これすごいけど……大丈夫ですか?
ホドウ :これね〜。これ良すぎるでしょ
とむはま:アメリカ映画の空気感を感じる。絶対ハリウッドだよ
あまろ :意味分からなさと臨場感のブレンド具合がちょうどいいかも
しーしー:凄まじい作品だった……

【総評】
畳み掛けるようなスピード感と全体のまとまりが良い。既存のネタを擦るでもなく、独創性もあり、完璧な西海岸の雰囲気を演出している。

終わりに

じゃれ本、めちゃくちゃ楽しかったです。
3人からオンライン(https://online.jarebon.com/)で遊べるので、ぜひ皆さんもやってみてください。
コツと言えるかは分かりませんが、

  • 描き始めやすいタイトルにすること

  • 小道具を訳もなく引き摺らないこと

  • 日和らず話を展開させること

の三点を大事にすると良い作品ができる気がします。私たちが睡眠時間を捧げて辿り着いた答えです。
参考までにぜひ。


〜オマケ〜

今回私たちは数十編の小説を錬成することに成功しましたが、その全てを紹介することはできません。
そこで、受賞は逃したものの読み応えのある作品を何作かここに供養したいと思います。

『カリカリなアルバム』

彼女の部屋に初めて招かれたとき、真っ先に目に入ったのは、本棚の卒業アルバムだった。

一見何の変哲もない、高校の卒業アルバムのように見えたが、よく見ると何かがおかしい。

アルバムの顔写真をようく見ると、全員が河童のような、毛先の尖った髪型をしている。そう、この高校の卒業生は全員が速水もこみちの卒業写真と同じ状態にいる。

もちろん授業ももこみチズムに従うものだった。家庭科の授業の第一回目では、キッチンをオリーブオイルで流し清める儀式を執り行う。花子は全身を使ってオリーブオイルを散布するすみれの艶やかさに気絶した

オリーブオイルの華やかで重たい香りが薄らいで、すみれに介されていることに気づいた。恥ずかしくてすみれの腕から逃れようとしたけど、余計に強く抱きしめられてしまった。

どれだけ激しく藻掻き、逃れようとしても、そいつの腕は私の首から離れない。恐怖が私を支配する!!

(引用:恐山心布(おそれざん しんぷ)『恐怖を飼いならす』, 新潮新書,189頁,2019年7月)

アルバムといえば、井原西鶴の卒アルをご存知だろうか?
井原西鶴は高校時代、大学ノートにクラスメイトのナマモノ百合小説を書いていたという黒歴史があります
井原西鶴の卒アルには、その完結版が記されている

作:あまろ,とむはま,shin,wisteria

面白いかもしれないが小説としての完成度が低く、受賞には至らず。

『雨漏りする宇宙』

注:記事公開日時点で単行本未収録の呪術廻戦のネタが含まれます

ぴちょん ぽつん ぴちん ぽつ
星のしずくがワームホールの口先から雫となって零れ落ちる。
高重力により潰された星々が量子宇宙流体となり流れ出ていく。

それって実質『愛(マナ)』、ですよね。だって私の想いも圧縮されて遠くの宇宙に流れていく。ああ、あの宇宙に住む我が最愛の友の元まで届けばいいのに。

星たちが誇らしげに瞬く夜が来るたびに私はそう思うのに、今日の星空は意地悪な黒い雲たちに隠されて、彼らの涙さえ舞い落ちてきた。あの子から、私がいるこの場所は見えているだろうか。

あの子の宇宙と私の宇宙は、きっと交わることがない。それでも、雨漏りほどでいいから、2つの宇宙の間に小さな破れ目があったとしたら。

あなたとわたし、2つの宇宙の対衝突により生まれる仮想の質量を押し出すーーーつまり、無下限呪術 虚式「茈」である。

「九網 偏光 烏と声明 表裏の狭間 虚式『茈』」
五条悟の詠唱付きを止めるものなど、何もない。
世界はまた、無に帰した。

宇宙は無から生まれ、いろいろなものが現れて、そのなかの豆粒みたいな私たちは宇宙よりも大きな想像力を働かせて、無を再発明する。

でも、私たちの間にあるなにかだけは、「ない」のではなく「ある」のだと、そんな気がした..

作:あまろ,とむはま,shin,wisteria

呪術のオタクが並んでしまったせいで五条悟が200%茈をぶっ放してしまった回。RIP

『そっとリクライニングする遺伝子』

数年前、某国の高明な科学者が発見した遺伝子は、ある奇異な性質を有していた。
遺伝子が別の人の遺伝子に少しずつ『寄りかかる』ように似ていくという性質である。
それが『リクライニング遺伝子』だ。

『リクライニング遺伝子』の存在が初めて疑われたのは、発見される数十年前のことだった。ある女性の晩年の遺伝子が、長年寄り添ってきたパートナーの遺伝子と酷似していたのだ。

「遺伝子が身を預けているようだ」
生物学会は騒然であり、また大勢が興奮した。

だが、この『リクライニング遺伝子』を悪用する邪悪な軍団の登場が、歴史を変えていくことになる。

軍団員は新幹線に乗り込むと、後ろに座る乗客に断ることなくそっとリクライニングをしだした。それもかなり深めのリクライニングである。

リクライニングの角度が137.507764°をさした時、軍団員の1人が気付く。
「これは..黄金角!」
黄金角とは円周を黄金比で分けた時の角度だ。黄金角のリクライニングに、周囲の乗客から拍手がやまない。

拍手はやがてまとまりとなり、1:1.618の間隔で拍手が鳴るようになった。黄金比の拍手は空間を裂き、会場は『あちら側の世界』と繋がった。

ああ、なんて美しい世界なのだろう。
『あちら側の世界』から、遺伝子の波が押し寄せてくる。どうやら、『リクライニング遺伝子』はまだまだ序の口で、もっと美しい遺伝子の存在は間違いないようだ。

作:あまろ,しーしー,とむはま,ホドウ,shin

怪作。シュールなSF作品に仕上がった。
芸術部門ノミネート作品だが大衆性を欠き、惜しくも受賞を逃す。

『対等な大道芸』

「今日は路上ライブをやります」
私たちは、バンドを組んで、初めての路上ライブを迎えた。
ライブの場所に行って、当然の如く、観客は少なかった。
ただ、隣にはもう一組、路上ライブをやっているバンドがいた。

私たちのバンド同様、隣のバンドも観客は少なそうだった。私は、演奏よりギターボーカルの子がとても可愛いことにばかり気がいってしまっていた。路上ライブを終えて、私は思わずその子に話しかける。
「あ、あの!」

「私のライバルになってください!」
正直、私は可愛すぎる上歌が世界一上手いので、ぶっちゃけバチモテるんだけどお、あのギタボの子なら私と張り合えるっていうか?
ーーはあ、何言っているんですか?

あのギタボの子は、「あなたは私のライバルに値しませんわ」と言った。こんな世界一番可愛い私にそんなことを言うなんて許せません!
私は実力を披露するために、春○影を歌った。

「なんで『春日影』やったの!?」
挑発に乗って春日影を歌いきった私の横から現れたのは長崎そよだった。私もギタボの子も思わずお互い目を合わせる。どうしてこんなところに長崎そよがいるんだ?

それは私がそれを望んだからだ
完璧な私に見合う女を
人は一人では生きられないのだ
だから望んでしまったーー架空の人物を
願いは今日、顕現した
さようなら、孤独な日
こんにちは、アニオタの私

作:あまろ,とむはま,ホドウ,shin,匿名

いきなりMyGOが始まってしまった回。
履修していなかったアンカーの困惑が見て取れる。

『縦回転するポカリスエット』

うおおおおお!
ポカリスエットが激しく縦回転している!
止めようとしたキムは弾き飛ばされ星になった。
「先輩!あれじゃ部活できないアル!」
メイメイが叫んでいる。なんとかしなくては。

私は咄嗟にジョジョ七部を引っ張り出した。
そこにはこの世の全てがあるからだ。
黄金の回転を習得し、高速回転するポカリに回転を伝える。
メイメイは感動して顎が外れた。
顎はずれたアル〜〜!!

黄金の回転を得たポカリスエットは、やがて天国に至る。
ジョジョでもそう言ってる。
回転するポカリスエットは、黄金の光を放ち始めた。
そして、私とメイメイは光に包まれる。

回転しているポカリスエットは、横回転しながら、縦回転もしている。
これはこの世界には絶対にあり得ないことだ。
私とメイメイは一瞬でこの状況を理解した。
これは四次元世界に向かうポータルに違いない。

私メイメイは四次元に向かうポータルに飛び込むことにした。このポータルがいつどこにつながっているかは、ポカリスエットの回転方向が表しているはずだ。
そして私はどこかに飛んだ。

着いたところは凛風の家だった。凛風は私の元カノで、中学生の時に付き合っていた。懐かしさにふけっていると、急にポカリがジャイロ回転を始める。驚いている私に後ろから「メイメイ?」そこには凜風がいた

「凛風!メイメイを知ってるの!?」
「私が忘れられないの…?私も…」
「先輩、檀風を知って…!」
人間関係が拗れ、ポカリのジャイロ回転はカオス領域に突入していく。

ポカリの回転は、人間関係だけではなく世界の因果をもらせた。
ルイジアナの少女が蛇口を捻ったことにより火星は3つに割れ、地球には無数の隕石が降りかかる。
凛風・メイメイの二人は、今日プリキュアになる

それは、ポカリの回転が起こした災厄から地球を救うため。
凛風、メイメイの二人は、キュアストーンを掲げ、叫ぶ。
「変身!プリキュア!」
そして、二人は宇宙に飛び立っと、隕石に向かって拳を振り上げる。

どーーーん。隕石が砕けた。
それは、二人が相当な速度を持つからだ。第三宇宙速度を超えた二人は、地球から、太陽から遠ざかっていく・・・

私たちは広大な宇宙にたった二人で投げ出されてしまった。地球まで帰る手段なんて思いつかない。

音も届かない無重力空間で彼女の口が何かを伝えようと動く。聞こえずとも察した私は彼女の手を握り、そっと口づける。私と彼女はひとつになって縦に回り始める。
最後のキスはポカリスエット味だった。

作:あまろ,うどん脳,とむはま,ホドウ,yuzati

超大作であり怪作。世界観が狂っている系の作品。
登場人物が一貫していなかったため、作品としての評価は低い。

『吸血鬼お嬢様は今日も街を物色する』

「今日もいい天気ですわ!美味しい美少女の血を吸いたいですわ!」
私、吸血鬼お嬢様は美味い美少女を探していますわ。
そして、楽器を携え、緊張している美少女グループを見つけたのです。

「まぁ、あの娘たちの血はきっと美味しいですわ! 恰好の獲物ですわ! でもあの緊張っぷりはいただけません。血がマズくなりますわ!」
バンドらしき彼女らの緊張を和らげることにしますわ〜

吸血鬼お嬢様はバンドのボーカルの子の血を吸おうかしら?と歌を聴く。
「悴んだ心震える眼差し 世界で」
「なんで春日影やったの!?」
そこに現れたのは長崎そよだった。なんでここに長崎そよが?

それは私がそれを望んだから
完璧な私に見合う女を
じゃない。
吸血鬼の圧倒的な膂力が雑な天丼展開を粉砕する。
この世界に、そよりんはいらない。
メタバースが結合し、解体し、世界が流転する。

『吸血鬼お嬢様は今日も街を物色する』、完ーーーー
と言うのは、私の斬魄刀・鏡花水月によって作り出した幻想です。
実際メタバースなんてものはなく、吸血鬼お嬢様は今日も元気に街へ女狩りへ繰り出していた

斬魄刀・鏡花水月を懐に隠し、吸血鬼お嬢様は街に出る。
あくまでこの斬晩刀は、護身用。
普段の「物色」に、こんな物騒なものは要らない。
女を魔力でたぶらかし、血を吸う。それがお嬢様の日常だった。

斬魄刀・鏡花水月を懐に隠して、女を物色するのは、今日、すごく強そうな女が現れると言われているから。
その女は接近してきた全ての女を魅了し、歌を以て誰も抗えなくする。

だが、懐に隠した鏡花水月の力をもってすれば、どれだけ彼女の歌が魅力的であろうときっと抗える!
私は彼女に魅了されたりなんかしないんだから!

「砕けろーー鏡花水月」
私が斬魄刀を開放する。魅了の歌を歌う彼女の精神を支配するために。これで勝った!
「!」
ここで気付く..彼女が、ボーカルの彼女がずっと目を閉じていることに!

鏡花水月が、破られる……
「雷の呼吸……」
目を閉じたまま彼女がつぶやく。
マズイッ!

「あ!あんなところにギャルのパンティーが!!」
「な、ナニイ!?」
かかったな、今キミはパンティー見たさに目を見開いてしまった……
後悔してももう遅い
キミの視界に鏡花水月をシューーーーーーーーーウ!

「......!?」
気がつくと、お嬢様は屋敷にいた。
「美味しそうなギャルは・••・・・?」
「寝惚けないでください、朝の支度ができてます」
「...?」
頭を下げるメイド、その後ろ手には鏡花水月が握られていた。

作:あまろ,うどん脳,とむはま,ホドウ,yuzati,匿名

天丼展開を阻止したかと思いきや登場した鏡花水月がなぜか最後まで引きずられてしまったという問題作。参加者は大いに反省した。
オチは評価の価値あり。

『何も受け付けない神さま』

私は死んだらしい。あまり記憶は無いが横断歩道を渡っているところにトラックが突っ込んできたような……
ここはどうやら天国らしく、目の前には女神らしき人がいる。

(これから異世界転生しそうな展開だな...)
「あの、女神様、これってもしかして私死んだからチート能力貰って異世界転生する感じですか」
「いいえ」
「え?」
「あなたはここで私と過ごしてもらいます」

「え?異世界転生じゃないの?」
「いえ、あなたがバチクソタイプだったから、私と暮らしてもらうんです」
なんたる神だろう。私の魂をここで飼い殺しにする気なのだ。
……狙うしかない、神殺しを……

「もしもし?宇部市の担当者さんですか?」
私は下界の市役所への直通電話をかけた。
もちろん、宇部市の工作所で制作中のロンギヌスの槍を受領し、神を殺すためである。

「はい。宇部市工房課です」
「あの、頼んでいた、あの女、いえ、神を殺すロンギヌスの槍の受領をお願いしたいのですが」
「はい。え〜……少々お待ちください」
天界の住人を待たせるとは、随分な態度だ。

ムカつくけど、無事、彼女、いや、神を殺すロンギヌスの槍を受領した。私は槍を持って彼女のところに赴いた。あなたを殺せる槍を持てば、あなたはもう私を無視できないのだろう。振り向いて私のことを見て欲しい!

しかし、ロンギヌスの槍を神に突き刺すも、手ごたえがない。神を殺す槍であっても私が持てば神に無視される。
どうして彼女は何も受け付けてくれないのだろうか?
私はすすり泣く。

「待たせたわね!」
絶望する私の前に現れたのはフランドール・スカーレットだった。彼女は『神殺しの剣<レーヴァテイン>』 を持って私のそばに降り立った
「私が隣で支えてあげる、一緒にあいつを倒しましょう」

(BGM:亡き王女の為のセプテット)
「なんで私の曲じゃないのよ!」
フランと私、ふたりでの神殺しが始まった。
チェーンソーを構え、未来を見据える。
「神を斬り、道を拓く!」
「やってみよ人間ン!」

「ま、参りましたでげす……」
この惨めにも首を垂れる無様な髭面のジジイは神といい、主に天界で人の運命をポテチを食べながら弄んで暮らしています。
神はバチクソ老体で、私とフランの攻撃に耐えられなかったのだ

神、もとい髭面のジジイを蹴り飛ばす。
こんな奴が、天界で人の運命を好き勝手していたかと思うと虫唾が走るが、ボコボコにしたからどうでもいい。
そして、私とフランは抱きしめ合う。
「やったね、フラン!」

しかし、その瞬間、サヤが槍を持って、歩いて来た。
「なんで私を見てくれないの?」「もうこの世界やだ」
「諦めないで、私のような花のような綺麗な女の子は、そう簡単に振り向かないの」
しかし、もう遅かった

作:あまろ,うどん脳,とむはま,ホドウ,yuzati,匿名

エヴァと東方のコラボレーションにより、ニコニコ動画最盛期を思い起こさせる仕上がりに。
この作品とポカリスエット,吸血鬼お嬢様は、同じ回に錬成された姉妹作であり、迷走が窺える。

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…………記事の締めが思いつかない!



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