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自作動画アンノウン・マザーグース解説

この動画を見てもらっていたときいくらか何かを感じたり、創作キャラクター(12番目の黒髪の天使 ルイ=ルクス=光、以下ルクス)にもどんな意味があるのかと関心を持ってもらったりしたので使用した楽曲やモーションや小物などについて語っていきます。

まずはじめに、この動画を作るきっかけとなったのは、自分の友人に彼の初めてのモデル動画を作ってもらったことからになります。自分がそれによってMMDモデルを手に入れたことから作ろうと思いはじめた最初のイメージは『キメラ(ATOLS)』だったのですが、2018年につくってもらったこの動画も大事だったので、その要素のまま作ることも決めました。なので2021年の2回めのアンノウン・マザーグースでの歌詞や踊りのモーションなどの整合性は元々はなかった状態でした。友人曰くこの楽曲を使ったのもノリとかっこよかったからだそうで。自分にも(その時のルクスには)その楽曲に見合うような過去も記憶も設定も物語も何もない状態だったのですが、つくっていくうちにその曲の持っていた不可思議な意味が通じるように感じてきて。この楽曲が有名な人の久しぶりの曲で、誰もが待っていたし誰もが納得した曲というのもうなづけることでした。こちらはそれを借りて勝手に当てはめていっただけでしかないので合っているというのは自分勝手な話なのですが、そうやって内包されたものが誰にも共感されたり琴線に刺激を与えることが出来るものというのはすごいことですね。

この歌の始まり、「あたしが愛を語るのなら その眼には如何、映像る?」から始まるのですが、この歌は全体を通して一人称がバラバラです。また、「世界」「誰か(例としてその眼に映すものやガラクタを投げつけた第三者)」なども含まれる曲で、登場する人が何人もいます。このことも彼にとっては重要な要素になっていて、彼はよく「僕は一人ではない」ということを創作上でいうのですが、それを表すことでもあります。そして、彼曰く「この世界は関わりの世界」。要するにこの時点で彼の創作の世界観が表される歌詞です。全体的にこの歌は彼の世界への観方や辿ったこと、辿ることを表すことになったと思うので、逐一挙げていると進まないので以降は少しつまむ程度に話を進めていきます。
彼ははじめにこの曲を使ってもらったときにこの曲の要素を引き継いだようで、動かして一番初めに口を利いたセリフが「君が透明(白)なら、僕は何色だ?」でした。この君というのはつくってくれた友人の創作キャラクターに対してですが、ルクス自身の言葉としても腑に落ちるものを自分は感じて、彼らしいことを始めにいったものだと思いました。彼のコートは黒地で裏地に様々な色が入っているということが強く特徴づけられているものですが、この彼、12番目の黒髪の天使になるまで自分の作ってきた黒髪の天使たちは色を持ったことがありませんでした。そのシリーズで彼が初めて色を持ったキャラクターで、この「色」というのも強い意味を持っていたりします。この動画、というか創作では赤は不可侵、神聖さ、青は影、彼の精神性の気高さ、黄色(金色)は共生、共存、繋がりや受け継がれることなどを表しています。

この自創作における各要素の意味(大雑把に)

動画でも確認してもらうとわかると思いますが、緑の部屋の中は青い影が落ちて彼には少しだけ光が当たっている状態で動画は進行していきます。彼から見て右には赤い扉がありますがこれには金色の有刺の鎖が絡まり施錠されています(この扉は映っても一瞬だけなので分かりづらいですね…)。この色や状態にも意味はあります。細かくは後半で。

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閉ざされたその塔の赤い扉

カメラモーションも自作していますが、動画の前半はやたらと狭苦しい動きをしていると思います。実際にこの部屋はかなり狭くつくっていて、動かすのも苦労しましたが、そこにも意図はあり、この部屋は広々とした空間であってはいけなかった意味があります。また、この部屋には殺風景な中で唯一置いてあるものとして、「たくさんの額縁」が飾られています。しかしその額縁は壁の一面だけにしか絵のあるものはなく、他の壁に飾られたものは(一つを除いて)絵がありません。これにも意味があります(この一つというのはアンノウン・マザーグースの歌詞カードです。画面から見て彼の左側に映っている額縁がそうです)。簡単に言えば、彼は「多面的だが、その様な一面しかない」という意味があります。つまり、この動画を作成した時点の彼は何も知らないし、何も持っていなかった人物でした。コンセプトを練っていた当初では飾られている額縁の中は絵ではなく実物の物が入っているというイメージがあったのですが、つくってみると平面の絵にしかなりませんでした。それは、この人が実物を知らない=知識だけの経験も持たない生まれたばかりのものという意味合いを持つこととなりました。描かれているものはすべて彼を表しているものです。その殆どの多くは映り込んでも何かすらわからないと思いますが、そのものがある場所や位置も多少意味が含まれています。

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製作中のテストショット
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製作中のテストショット2

ここでは彼は、ずっとどこかを見ながら踊っているのですが、この視線の先には窓があります。窓の先は青い海と空という広々とした世界(外界)です。はじめはこの見ているものや先に大した意味は見いだされないかと思いますが、「世界があたしを拒んでも 今、愛の唄 歌わせてくれないかな」の辺りからその意味が変わってくるのを感じられるかと思います。「あなたには僕が見えるか?あなたには僕が見えるか?ガラクタばかり 投げつけられてきたその背中」という歌詞の辺りで、先程紹介した扉も含めて窓の外が映りますが、ここはそれぞれ束縛を表しています。カメラの動きで扉を奥に映しながら背中を撮り、そのまま彼が見つめる先も映します。施錠された鎖が彼のがんじがらめを表し、何を思ってこの出られない部屋から外を見ているのかという意味です。部屋の中は基本的に影を強く映していますが、そこもこの外との対比を表すためのものでもあります。暗く、出ることも叶わず、小さな窓から光が覗き込むのを見るだけという。「それでも好きと言えたなら それでも好きを願えたら ああ、あたしの全部に その意味はあると」という箇所でカメラを引いて外から映すことによってその意味が強調されていると思います。それがあるだけで全てに意味はあると歌うこととそう歌う現実でもあります。ここの間奏部分で上げた手を下ろす振り付けがありますが、そこでは光に手を差し出すとともに別れを告げるシーンでもあります(ここから先は一部を除き光の差し込まないシーンとなります)。そしてこの箇所で天井が初めてきちんと映し出され、そこに青い瞳のある太陽と周りを取り囲む光(封じられた太陽)が描かれていますが、これは彼のことを表すものでもあります。

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上から見つめる青い瞳の太陽

この太陽は画面上が窓側、下が彼の背景として映っている側です。左目が映っています。  ……と思いましたがこうやって見るとテクスチャが反転して反映されてしまっていますね?この目はパッと見たときに逆の目に見えるようにしてどっちなのかわからなくするためにわざと逆さまの状態にして設置したものだったので、このことは予想外でしたがこれも意図としては合っているような(※テクスチャの貼り間違いはやってはいけないUV展開の常識です。気をつけなきゃいけません)。個人的には初めて作ったモデルその2なので良いと思います。

赤い色というのは彼の着ているベストの色であり不可侵、力の象徴=太陽。黄色(金色)の取り囲む刺々しい光は枷であり星は人々であり、彼をとらえたもの(柵はその場面を強調させるためのもの)。その太陽は彼を上から見下ろしている=彼のハイヤーセルフたる”力”の存在がこの彼を見つめているという構図です。彼は黒髪の天使というキャラクターですがその構造としては体に天使の力が宿り、そこに彼=ルクスの意識があり、彼はこの力の”影”と自称します。この力がこの世の彼のことを見ているのです。

「PICK UP PICK UP AGEIN(非公式の推測歌詞)」は音を歪ませていますがこれはサイレンのつもりです。ここから先は現実のもう一面、暗い箇所を表していくところかとも思ったので。その警告のようなイメージです。

「ねえ、愛を語るのなら 今その胸には誰がいる」とまた歌が始まりますが、ここも彼にはある重要な意味を含んだ場所として自分には解釈しました。先程太陽=ハイヤーセルフと出しましたが、この人は一人格ではないのです。この楽曲の歌を作るに当たりUST(歌唱データ)を複数人からお借りしたり、歌声も配布されているデータ以上に音階やパターンを増やしたりしてこの曲の歌唱を作りましたが、そこも一人ではないことからも来ていたりもします。また、はじめに作ってもらった動画とこの動画で歌っているUTAU(歌唱ツール)のキャラクター設定に二重人格めいた箇所もあり、その部分も借りてこの楽曲での歌唱をそのようにしたという背景もあります。彼がこの動画ではいわゆる”歌唱”をしていないのは、彼が歌っているわけではない=他の人に歌われた歌ということでもあったりします(そのためキメラの方では彼が歌声を持たずとも歌唱しています)。
「孤独なんて記号では収まらない 心臓を抱えて生きてきたんだ!」という箇所はつくっているときから違和感のある場所で、それというのも彼は上記のようにまだ人生を生きていないので怒りを覚える過去も生きてきた記憶もまだ持ちませんでした。つくっているうちに年月が経ち、彼も一人のキャラクターとなっていった時間はありますが、これをつくったイメージとしては”その時現在”のつもりだったので、上の反転文字では”心臓を抱えて生きていくんだ!”と文字を変えました。この上の文字は誰かの考察には”画面内で歌っている初音ミクに対しての表示”や”曲の聞き手と作者の関係”などがあるようですが、そのようにまだ生きていない自分と生きてきた自分を繋ぐ箇所としてもイメージはしました。
「ドッペルもどきが 其処いらに溢れた」からは不協和音で少し気持ち悪い音程にしたつもりですが、ここらへんはそのように不穏な状況、信用ならない奴らばかりがいる箇所なのでそうしました。部屋の内部も暗くしてカメラワークも曖昧だったり、変な動きをしたり、ちょっと気持ち悪くしています。「あたしは知ってるわ この場所はいつでも あなたに守られてきたってこと!」ではそれが払拭される場面なのでここでは光が差し込みます。ここにおいては光が照らされますが「痛みなどあまりにも慣れてしまった 何千回と巡らせ続けた 喜怒と哀楽」でまた失われていきます。この箇所も反転文字では”痛みなど慣れてしまう 何千回と巡らせていく”と未来への形になっています(上の文字は未来への姿のつもりですが。他にも変更した箇所はあります)。

「どうやって この世界を愛せるかな」では綺麗だと多く言ってもらった彼の瞳が多色的に輝く場面です。「いつだって 転がり続けるんだろう」と世界の行く先を見つめ続ける場面だからです。そして「ねえ、いっそ 誰も気附かないその想い この唄で明かしてみようと思うんだよ」と歌が流れて彼は何かを扉に向かって投げる様をします。これは何を投げたかというと”死ぬ権利”です。この部屋はたくさんの額縁以外にあるのは扉と窓だけですが、彼がどうやって入ったかを考えるなら扉からと考えることが出来ると思います。では逆にここから出るにはどうするのか、ここから出るということはどういうことなのかということを考えると、施錠された扉を壊すか、窓から飛び降りるかのどちらかになると思います。この施錠された扉というのは、誰が施錠したのかはこの鎖の色、人々の思いです。それは誰かと繋がっているという意味も誰かに閉じ込められたということも表します。彼が腰に巻いた金地の布は”他者との繋がり=相手へ奉仕する慈しみの心”を表す装飾なのですが、そのように彼を取り巻く人への思いによって彼は人たらしめられているということでもあります。彼が自身の不自由を嫌いこの世も嫌って元いた場所へ帰ることを望むなら生まれた今で、それ以降ここに居るならもう元にも戻ることの出来ない身です。それでもこの唄でこの世のことを確かめたいと帰る権利を捨ててここに残り、この世で生きていくことを表します。部屋は2番のサビから徐々に暗くなっていっていますが、一人閉じ込められたこの人生の行く末(の不安)を表していたりもいます。「あなたなら何を願うか あなたなら何を望むか 軋んだ心が 誰より今を生きているの」では手をこちらに伸ばしてカメラには届かず、空を掴んだ手を彼が見る動きをしますがそのように諸行無常、盛者必衰を感じた場面として作りました(対作としてキメラがありますが、この曲との共通点としてそれらがあると思って作成しました)。
「あなたには僕が見えるか? あなたには僕が見えるか? それ、あたしの行く末を照らす灯なんだろう?」という箇所で場面は大きく変わります。彼の目が輝きながらカメラが近づき、暗く狭い部屋は消えて、光と青空の下、青い海に覆われた化石状の土台に彼はいます。そこは一面青色と白の世界で今までのカメラの動きより遥かに自由にのびのびとした動きをしていると思います。彼を閉じ込めている部屋(塔)は彼が気がつけば(その見方を変えれば)その姿をなくして世界をそのまま見ることが出来るというようなイメージです。そのためここにおいては光も自由に動かして彼を照らしたり、周りを光も踊らせているようなイメージで動かしました。彼は光の天使なので。彼の踊っている土台は、海の波が入り何がそこにあるのか分かりづらいですがこのようなものがありました(クレジットでも確認できます)。

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後半に出てくる彼の座

これはなにかというと蛇の胎児様のものだと思って作成しました。それとともに翼もまた写っています。つまり、これが彼の正体です。この土台はそのままの意味で彼の基盤です。右下を見れば尾の間にハートがあるのがよくわかると思いますが(クレジットで確認できるハートです)、これはアンノウン・マザーグースのアイコンです。この曲も彼の基盤です。

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アンノウン・マザーグース MMDイメージイラスト

この絵はそのままその基盤と同じポーズで横たわっている絵になります。
これは一部話が飛ぶのですが、この絵のポーズのモデルはFFTゾディアークのイラストだったりします。ゾディアークは力がありすぎるあまりに神々によって赤子の姿のままに封じられてしまった天使王ということらしいのですが、自分がそれを絵のモデルにしたのはある意味で合ったことだったんだなと描いた後から思ったり。彼も成長できません。頭部以外の肉体はほぼ持っていないのです。首から下は機械の体です。首の襟から覗く黒い布地と青い閃光はその体のボディと神経です。彼はサイボーグです。
間奏に入ったときに上からこの土台をよく見下ろして見えそうなシーンで影がピシャっと入ってよくわからなくなるシーンがありますがそれも意味はあります。これはキメラの項で。

 ねえ、あいをさけぶのなら
 あたしはここにいるよ
 ことばがありあまれどなお、
 このゆめはつづいてく
 あたしがあいをかたるのなら
 そのすべてはこのうただ
 だれもしらないこのものがたり
 またくちずさんでしまったみたいだ

アンノウン・マザーグース wowaka feat.初音ミク


この曲は初めにもらった動画の歌を取り出して、それと一緒に歌を作り上げました。最後の部分だけ、今までの感じと変わるのはその曲の声だけで歌うためです。自分のmixの技術もこの楽曲で学んだことが多く、それも含めて色々なものを様々な人からもらったと思った作品でした。


最後に、動画が終わってクレジットの後に再びwowakaさんに挨拶をしますが、彼は平成31年の最後の月に「令和きれいだー」といって亡くなってしまいました。自分は彼の曲を初めてちゃんと聞いたのは(彼を知ったのは)この曲からで、初めて知ったのにもう二度と会えない気持ちになったのでした。自分にはこの人のことは知ることなく、この初めての曲を最後に彼のことを新しく知っていくこともなくなりましたが、挨拶がしたかったのでした。令和になりましたよと。新しい年号になってから3年もかかってしまいましたが、ありがとうございます。


自作動画キメラ解説 https://note.com/utitanijoe/n/na7594023ece7

長かったですが解説を読んで頂きありがとうございました。個人的にはどっちも3分の1かそこらくらい解説した感じなので、まだまだイメージはあります。それもいずれどこかで触れられたら楽しそうです。動画も楽しんでいただきありがとうございました。



マシュマロで質問とかwaveboxで応援もらえたら嬉しいと思います。あまりまめとは言えない者ではありますが……。
読んでいただきありがとうございました。


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