(中止状態)翻訳『愛について』2(I. ポターペンコ)

第2幕

ドゥボサーロフのアパートで、コルニローワが使っている3つの部屋のうちの大きな部屋。客間。右側には他の2つの部屋に通じるドア。正面の左側に近い方にもう一つドアがある。ドゥボサーロフの部屋と共同の廊下が左側に通っている。部屋への入り口は廊下に通じている。家具には統一感がない。多くの物は奇妙で不必要なものだが、高価ではないが綺麗で居心地が良い趣味のものが選ばれている。左側の壁際にソファ、その正面に畳まれた白いテーブルクロスが置かれた丸テーブル。ソファの近く、前舞台(エプロンステージ)の近くにピアノ。左側の丸テーブルの上には豪華なティーローズの花束。近くにはもう一つ赤いカーネーションの花束。それ以外にも花々が色々な場所に置かれている。大きな鏡。

1場
チュラキナがテーブルクロスを開いてテーブルにかぶせる。アンナはトレーの上にフルーツとスイーツをのせて持っている。舞台裏からは話し声や楽しそうな笑い声が聞こえる。

 チュラキナ:ええと、そこにも置いて。それに女王様のためにパスチラー(マシュマロのような卵白と果物を使ったお菓子)も買ったから持ってきて。
 アンナ:リキュールも置きますか、ダリヤ・アントーノヴナ、果実酒は?
 チュラキナ:いいえダメ、アルコールは一切無し。フリスチーナは部屋にお酒やワインの臭いがするのが嫌いだから。さぁ、並べて!(正面のドアからコルニーロワ入場)

2場
 コルニーロワ:(振り返って)さぁ、あとは髪を整えるだけ! おばさん、何をしているの? あぁもう、まったく、ここにはこんなものを置かないで……全部むこう、ドゥボサーロフさんのところに。もうお願いしておいたから。アンナ、あっちに運んでちょうだい。(アンナはすべてトレーの上に取り、白いテーブルクロスを外して正面から退場)
 チュラキナ:どうしてなの? あなたの誕生日で、あの人たちのじゃないでしょう?
 コルニーロワ:文句があればどうぞ……
 チュラキナ:いつも何かしら思いつくんだから……
 コルニーロワ:それで終わり? じゃあ、私を見て。新しいブラウス、見てないでしょう。似合ってる?
 チュラキナ:あなたに似合わないものがある? 何でも似合いますよ。
 コルニーロワ:でも、気に入らなくて……よーく見て。今日はきれいじゃなきゃいけないの。
 チュラキナ:んー……きれいよ! だってもうきれいに生まれたんですから。ありがたいわね、人間一度っきりしか生まれないんだから。
 コルニーロワ:おばさんは哲学者ね! でしょう?
 チュルキナ:(彼女の前にしゃがんで座り、スカートを引っ張って整え、丁寧に熱心に折り目を直す。それから立ち上がってじっくり見る)きれいよ! これ以上ないくらい。もうちょっと良くしようとしたら、ひどくなっちゃうくらい。
 コルニーロワ:まったく! ねぇ、花を一組取って。(チュラキナは赤いカーネーションの方を向く)違う、違う、バラをちょうだい。
 チュラキナ:それは公爵様からなんでしょう。公爵が怒りますよ。
 コルニーロワ:それは彼の問題よ。
 チュルキナ:(バラの花束に近づいて、そこから何本かを抜き取る)んー……結ばれたのね! 何か新しいのと!
 コルニーロワ:いいえ、おばさん。まだ結び始めたばかり。
 チュラキナ:それで、公爵は退役したの?
 コルニーロワ:彼は従軍していないわ。
 チュラキナ:どんな王子様のためにこんな? 誰からの花束?
 コルニーロワ:彼は王子様じゃなくて建築家よ、おばさん。とはいっても彼は建築家じゃないけど、私たちは彼をそう思うの。
 チュラキナ:うーん、目が回るわ! ただ分からないのは、何のために? どっちでもいいけど、捨てるんだから……
 コルニーロワ:何を、花束?
 チュラキナ:花束。それに彼もね。


このあとパーティが始まり、コルニーロワの関係者がたくさん登場して盛り上がる中、二人きりになったコルニーロワとブラートフは互いの気持ちを確かめ合い、愛し合うようになったところで、2幕は終わります。

3幕になると、コルニーロワは既にブラートフの用意した別荘で暮らすようになっており、彼が来るのを待つ生活になっています。ブラートフは銀行に戻っているわけではなくフィンランドに行ったりと、コルニーロワが友人などと過ごす時間も創っており、二人だけで時間を過ごしているわけではないことが分かります。
 するとブラートフの娘ドーシャが居場所を突き止めて現れ、偶然父親と再会し、シテンデとの政略結婚を破棄してもらうことを頼み、ブラートフは子供への罪滅ぼしの想いもあり、それに同意します。

 4幕では、1幕と同じ銀行が舞台で、3週間の休暇はいつの間にか延び、ひと月以上振りにブラートフが帰ってくるところから始まります。留守を任されていた息子のミハイルは巨額の赤字を作り出していますが、会社全体から見れば大した額ではなく、ブラートフは気にもしていません。
 途中、シテンデが現れて、ドーシャとの結婚を今すぐに認めるようブラートフに迫りますが、ブラートフは約束通りシテンデとの結婚を破棄します。
 コルニーロワも銀行に戻ってきますが、そこでブラートフを愛してはいるが、これ以上今の生活を続けられないことを彼に告げます。結局、別荘に暮らして彼が来るのを待つのは、彼がこれまで囲ってきた愛人スジェットと変わらないからです。ブラートフには家族がいるし、さらに言えば、コルニーロワとブラートフは夫婦として生きていくことを求めているわけではなく、ただただ男と女として愛し合っていたためです。
 コルニーロワはブラートフと過ごした月日を胸に、彼の元を去っていく決心をして、作品は幕を閉じます。

 ちなみに4幕ではドゥボサーロフが出世して部長になり、妻に嬉しそうに報告する場面などもあり、彼の幸せな夫婦関係が、ブラートフの夫婦と対比されるなど面白い場面もあるのですが、ちょっと全体を読んでみて苦労してまで翻訳する価値に疑問が出たので、他の翻訳にうつりたいと思います。誰も読んでなさそうですが、楽しみにしている人がいたら申し訳ありません。質問などあれば答えます。

筋の展開自体は面白いのですが、コルニーロワが結局ただの愛人になってしまったりと、人物造形は並以下の作品だと思います。また、コルニーロワとブラートフの会話が多すぎて、登場人物が多い割には群像劇にはなっておらず、もっと他の人物に焦点を当てるべきだと思いました。

 この筋と人物たちをもとに、新しく戯曲を書いた方が面白くなりそうな気もします。
 

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