はじめに-miu(教育学部二年)


  この冊子を手に取っていただきありがとうございます。UTFR2代目共同代表のmiuと申します。誰がこの冊子をどう読むべきか、あるいはどう読むべきでないか、について考えてもらう為にこの文章を書こうと思います。
  この冊子は「東大内において」非進学校とされる高校出身の東大生の集い、UTFR(the University of Tokyo Frontier Runners) のメンバーによる合格体験記です。非進学校の目安としては在学中の先輩が一人もいない、旧帝大にも10人ほどしか出ていない、あたりを考えていただければ良いかと思います。団体は50名強で構成されており、今回はそのうち11名が64筆を執りました。
  塾業界のマーケティングの一環として塾のHPなどのメディアに取り上げられることで、「合格体験記」と名付けられたものへのアクセシビリティは上がり、逆に言えばありふれたものになっています。この合格体験記が他の合格体験記とどう違うのか?
  私たちとて「自分と同じような環境で教育を受けている人」に向かって、もしかして自分の経験が役に立つかもしれない、との思いから、自分の経験から出てくる(逆にいえば自分の経験でしかない)根拠のもとで声を発することしかできず、その点でいうと他の体験記と大差ないかもしれません。
  しかし、3点、違いがあります。
  1つ目が報酬体系の差。世の合格体験記には、受験生からのニーズを汲み取った高校や予備校が、受験を終えた学生に執筆するようお金で釣って(ないし強制して!)書かせたものが多い(個人ブロガーが善意で書いている場合もありますが、その質を吟味するのは忙しい受験生にとって一苦労です)。それらとは執筆者への報酬体系が違います。我々の場合予備校とは違い、書けばお金がもらえるというわけではありません。ぶっちゃけ、そこそこ売れないとお金が入らないので、普通の合格体験記より真剣に書いてある確率が高いわけです。高校生のためになりたいという思いが先立つ人が多いみたいですけれど、一応判断材料にしていただければ。
  2つ目が利害関係の有無からくるバイアスの有無。高校の合格体験記のストーリーは高校のおかげで合格しているものが多くなり、予備校もまた然りでしょう。そこにはバイアスがかかるのです。一方、当合格体験記の執筆者にはそもそも高校に通っていないもの、高校をひどく嫌うもの(たとえば私です)、予備校に行ったことがないもの(たとえば私です)などが含まれています。もちろん高校を活用したものも塾を活用したものもおります。この本には孤独であったが故に、各々多様に創造した戦術が描かれています。その点で、一冊で様々な情報が得られてお得でしょう。
  3つ目が執筆過程。今回私が編集長を担当していますが、執筆にはルールを設けませんでした。よって、分量も書いてあることもバラバラです。読みやすいように順番を整序し、見出しにナンバリングし、フォントや行間を整えましたが、内容は誤字脱字をのぞき原文そのままです。ナマの声、ではありませんが、半ナマくらいではあるでしょう。世間の合格体験記はそこをいくとウェルダンでしょうね。鮮度があるのにもったいないことです。
  さて、だれがどう読むべきか、あるいはどう読むべきでないか、に戻ります。公平のために言っておけば、進学実績の弱い高校の高校生とその親御さん、先生がメインで想定していた読者層です。ただ、中学生が読めばその分先んじて戦略を考えるのに使えるでしょう。進学校の中高生や進学校出身の大学生、特に教育学部生が教育の多様性について学ぶためにも使えるでしょうし、ビジネスパーソンにとっても、独立独歩の中で(こそ)生きる戦術の結晶を見出すことができるやもしれません。もちろん、今後どのような教育を我が子に与えようか(この考え方自体が近代的ですが)と悩む幼い子を持つ親御さんにとっても価値を持ち得るでしょう。逆に、「皆」(=マジョリティ)と同じ生活をしていたい人や、身の丈に甘んじていたい人にはお勧めしません。サイレントマジョリティは賛成だと思っている方や、身の丈に甘んじていて欲しい人は禁書にした方が良いかもしれません。
  ただ、この本を購入してくださった方も、この本の内容を全て信じてもいけないし、他と比較せずこの本だけを読めばいいというものではありません。あくまで武器の一つという理解でよろしくお願いします。

ここから先は

0字

UTFR(東京大学フロンティアランナーズ)による『非進学校出身東大生による合格体験記』第三弾になります。今回は12名のメンバーが執筆してお…

頂きましたサポートは、活動に役立てさせていただきます