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今夜12時、誰かが眠る。

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2021年6月の記事一覧

いたずらかお菓子か

いたずらかお菓子か

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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2学期の中間テストを終えた学内は、
オレンジ色のカボチャの絵に
黒色の目鼻口が象徴となる
ハロウィンの飾り付けがされている。

ケルト人発祥のこのお祭り行事はキリスト教とも
日本とも関係なく、本来の意味合いさえ失い
イベ

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キツネ憑く山

キツネ憑く山

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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そこは古くから祟り山と呼ばれ、
村外のヒトの入山を禁じている。

入った者はキツネに取り憑かれ、
死に至るとまで言い伝えられていた。

現に今、私の目の前で
ひとりの若者がキツネに憑かれているからだ。

村が管理している

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ひとつ目小僧の憂鬱

ひとつ目小僧の憂鬱

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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座長は経営に頭を悩ませていた。

江戸時代のいつ頃かは分からないが、
諸国を巡って見世物小屋を代々開いている。

見世物小屋は親の親、またその親と
何代にも渡り続けており、家族の仕事が
幼い頃から普通のことであると思って

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座敷わらし

座敷わらし

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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この家には座敷わらしが居る。

いつの間にやら住み着いたのだ。

わたしはこのことを誰かに話しても、
誰にも信じては貰えなかった。

わたしの居た家は商家で、
当時は世界中で恐慌の真っ只中だった。

例に漏れずわたしの居

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事故ったし!

事故ったし!

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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やっべー。ジコ、事故、事故った。
やっちまったー。夢であってくれー!
もしかしてアタシの人生これで終わり?

ヒトゴロシで刑務所行きじゃん。
これメシマズフルコースなんですけど。

いや待って。
まだ確認してないからセー

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呪い、呪わば、呪えども

呪い、呪わば、呪えども

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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脈絡もなく突然わめき、
カンシャクを起こし、
無関係な他人を責める。

世の中には頭のおかしなヒトが居るものだ。

世には地域や言語に関係なく、
呪いというものが存在する。

丑の刻参りと呼ばれる
他人を不幸に陥れようと

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置行堀ののっぺらぼう

置行堀ののっぺらぼう

掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/

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私と同い年ほどの警察官が、
額に深いシワを刻み、目を細めた。

「いい年してなにをやってんだか。」

警察官の言葉が反省を促しているのか、
それとも単に疑問を口にしただけなのか、
私は自分が何故今に至った理由を考えた。

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