転倒は・・・人間の宿命

 認知症看護認定看護師教育過程で、浜松医科大学の鈴木みずえ教授の授業を受けさせて頂いた。しかも、この時、一番前の特等席だった。
 授業での冒頭で、転倒は二足歩行をする人間の宿命と言う。高齢になれば転倒は当然であると言う。これは斬新だった。
 入院すると転倒はあってはならない事象である。その為、必死になって、転倒させないように、センサーマット、センサーコール、敷き込みコール、言葉による行動の静止などの対策を講じる。

 転倒させない為には、動かせないような環境にし、看護師は自分たちが設置したモノに翻弄される。これが唯一の転倒予防対策であるからだ。

 転倒させない=患者さんの命を守る為には、患者さんの想いは置き去りになっている現状があると思われる。これが臨床の場では、正当な思考であり、私たちも守られる。

 認知症ケアを推進している組織では、センサーマットも身体拘束として位置付けているらしい。本来、センサーマットは、患者さんの行動を把握するモノであるといわている。この本来の趣旨とは異なり、動かせないように行動を抑制しているんだと組織が認識しているのだろう。

 これは綺麗事だけの話ではない。

 認知症ケア加算での身体拘束とは、「抑制帯等、患者の身体又は衣類に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動を制限」となっている。

 組織が、センサーマットがこの身体拘束である用具と位置付けている場合、身体拘束をした日は点数を4割カットして請求しているらしい。

 しかしながら、大半がマンパワー不足である組織が多いだろうし、経済事情も考慮すると、これは綺麗事の話になってしまうであろう。


 鈴木教授は、「安全に移動できるように、ベッドの高さを調整したり、手すりを設置するなど行動範囲内の環境を整えたり、姿勢維持の訓練や歩行訓練することが転倒予防につながります」と示している。

 当たり前のような…
 簡単なことのようであるが…

 トイレに行きたい、座りたい、タンスの整理をしたい、大事な物を確認したい、あれはどこに置いたんだろう・・・など行動する理由はそれぞれにある。

 この患者さんの想いを実現できるように・・・

 人間として、当たり前なことができるように・・

 センサーマットを踏まずに、ベッドでいてくださいと言う言葉による静止が少なくなるような・・・

 転倒予防の方法を模索していく必要がある。

 立たんといて・・・

 座っといて・・・

 この患者さんは1日どれくらい、この言葉を言われているのだろう・・・と。

 理想論と言われるだろうが・・・・

 患者さんが、自由に動けられるような行動範囲の環境を整えるということは、常に考えるよう努めている。

 しかしながら、まだまだ提案できない。

 「立たんとって撲滅運動」を心の中で推進している。

 違う声かけを工夫することで、患者さんに与える影響は大きいのではないかと密かに思っている。

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