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【自主ゼミ】産学官共創デリジェントゼミ第8回2024/06/03

6月3日月曜日6限に産学官共創デリジェントゼミ第8回が開催されました。
今回は特別講師として、元財務官僚で現在イノベーションハブの代表理事をされている岡本直之先生をお呼びし、お話を伺いました。その内容をお伝えしたいと思います!
産学官共創デリジェントゼミは学生団体東京大学Diligentが主催する、東京大学学生自治会から認定を受けた自主ゼミです。「社会課題解決に資する人材・リーダーの育成」を理念に、業界の第一線でご活躍されている方を産学官の幅広い分野からお呼びして、キャリアの価値観を広げ、課題解決能力を学び・実践することを目的としています。

本ゼミの初回ガイダンスをまとめたものがありますので、ゼミに興味を持たれた方はぜひご覧ください!

今回ご講演いただいた岡本直之先生は、東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現在の財務省)に入省されました。財政投融資制度の抜本改革や内閣官房の成長戦略など多岐にわたる政策にコミットされた後、現在はイノベーションハブの代表理事としてご活躍されています。

ライフキャリアパート第2回目として、岡本先生ご自身の経験をもとに、未来のリーダーたる人間がキャリアを歩む上で大切なことについてお話ししてくださいました。


財務省に入省するまで

高校時代

岡本先生は、徳島県の公立高校でバレーボール部に所属されていました。今から考えるとかなり理不尽な指導を受けられたのですが、そのおかげもあって四国大会優勝を果たし、全国大会に出場できたそうです。その時に感じられたのが、限界は自分で作っているとダメということです。理不尽とも取れる環境で指導者に厳しく鍛えられることで、自らの限界を超えて思ってもいなかったところまで辿り着くことができるとのことでした。自分で限界を設定するとどうしても甘くなってしまうことは皆さんも共感できると思います。

自分に甘くならず、常に負荷をかけ続けることは運動だけに限らず、社会で活躍するためにも重要だと強調されていました。「一つ一つのことに限界以上に打ち込むことで生まれる強さは大きな武器になる。」と聞いて、筆者も目の前のことに全力で取り組もうと決意を新たにしました!

気さくに、かつ情熱的に話してくださいました。

大学時代

・東大前期教養学部

東京大学前期教養学部に在籍されていた間は、授業に出た記憶がないほどほとんど勉強されなかったとのことでした。特に第二外国語をおろそかにしてしまい、ギリギリで後期に進学されたそうです。しかし、社会に出てから語学の重要性に気づき、今大学生で語学を学んでいる人はしっかりと学んだ方がいいと考えていらっしゃいます。「やれるチャンスがあるなら、流さずに一生懸命にやった方がいい。」とのお言葉はとても心に響きました。

・法学部

なんとか後期課程で法学部に進学したものの、そのときに母親と電話し、「ろくに勉強しなかった自分は応援してくれている母親を裏切ってしまった。」と感じられたそうです。この出来事を境に、法学部では熱心に勉強に打ち込むようになられました。成績はなんとほとんど優!だったそうです。「この勉強に打ち込んだ経験がなければ財務省に入ることはなかった。」と聞き、改めて一つのことに打ち込む大切さを実感しました!

・就活

就活のときには、現在のようにインターネットで検索してすぐに情報が得られる時代ではなく、自分でどの役所がいいのか調べ、戦略を立てて、役所をまわったそうです。大蔵省を選んだ理由は、他の省に比べて間口が広かったから。このお言葉通り、大蔵省に入省されてから様々な分野の政策にコミットされることになります。

財務官僚としての仕事

岡本先生は財務官僚として多岐にわたる政策にコミットされました。その中でも、ピックアップしてお話しされていたことを紹介します。

・税務署長

税務署長をされていたとき、岡本先生はまだ若く、部下に自分より年上の方がたくさんいたそうです。そのときに部下が自分にどのように接するのか冷静に観察することで、「相手がなぜこういう行動をするのか」をわかるようになったとおっしゃられました。「上の立場を経験することで、相手の行動の裏にある意図を汲み取ることができる。」という視点はとても斬新で驚きました!

・国鉄債務処理

日本国有鉄道(国鉄)は当時約37兆円もの累積債務を抱えており、利払だけでも年間数兆円を払わなければならない状況でした。しかし、保有する敷地を売るなどしてその場しのぎの政策がとられ、改革しなければいけないのにも関わらず放って置かれていました。岡本先生は誰かがやらなくてはならないことを、やるべきときにやることが大切という信念のもと、改革に着手し、国鉄の民営化のために動かれました。当然改革を実行するには相応の責任と覚悟が伴います。それでも国の未来のために行動した岡本先生の志にとても感銘を受けました。

皆真剣に聞いていました。

・スイス勤務

岡本先生は、日本貿易振興機構チューリヒ事務所長としてスイスで勤務されたご経験もあります。そこで感じたのは、「スイスのような国は付加価値を生み出すのが上手い。」ということだったそうです。スイスの人々の多くは、スーパーマーケットで何か買うとき、オーガニックのものを買うそうです。同じ食品でも、オーガニックという付加価値がつくことで、何倍もの値段で売ることができます。

日本では従来、生産性=効率化=コストカットという考えが主流で、この考えのもとに例えば非正規社員の数を増やすといった方針がとられてきました。しかしコストカットには限度があり、スイスのように付加価値をいかに生み出すかがこれから重要になってくるとお話しされていました。ビジネスをする上で、常に付加価値を考える姿勢がとても大事なことを実感しました!

・人事(採用)

岡本先生は採用のご経験もあるそうです。大学生の方は就活で悩んでいる方も多いと思います。岡本先生のアドバイスは、「自分に合っている組織に入ればいい。」とのことでした。「無理に自分を偽って大手とされている組織に入るより、自分に合っている組織に入った方が楽しい。」とのお言葉を聞いたとき、目が覚めるような思いがしました。

実際、岡本先生が大蔵省に入られたとき、採用担当の方から「お前は自分と同じ感じの人間でここでやっていけると思ったから。」と採用理由を伝えられたそうです。また、スイスのUBS銀行で採用をしている人に採用基準を尋ねたところ、ビジネススクールなどの経歴ではなく、一緒にランチをして楽しいかどうか、ケミストリーが築けるかどうかで判断していると言われたとのこと。

「大手に選べれなかったからといって落ち込むことはない。ただ自分も相手と合わなかっただけ。」とのお言葉を聞いてとても勇気付けられました!

・内閣官房での成長戦略

岡本先生は内閣官房でアベノミクスといった成長戦略に携わり、政府が支援する会社の選出にも関わっていらっしゃいました。
また地方創生の重要性を実感され、退官された後も諏訪市などの政策アドバイザーを務めたり、イノベーションハブで活動したりすることになります。

イノベーションハブ


岡本先生は財務省を退官された後、イノベーションハブの代表理事として現在もご活躍されています。イノベーションハブは、大学の研究シーズを発掘し、その技術を社会実装化することを目指している団体です。産学官や地銀・地方組織を連携させる際の「水路」の役割を果たしています。

「現在円安が起こっているように、国際競争の中で日本は下に見られているということがオーソドックスな見方だ。再びお金を稼げる国に、つまり経済力を取り戻さなければならない。」と岡本先生は話されていました。そのためには付加価値を生み出せるような、イノベーションが必要です。
外国のものを真似するのではなく、大学に眠っているような日本のすごいものを発掘し、育てる。この理念をもとに日々活動されています。

未来のリーダーへ

本講義の冒頭に、「君たちは日本を引っ張っていくリーダーであらなければならない。」と岡本先生はおっしゃられました。未来のリーダーになるために必要なことは「強い個」「人間力」だと講義の中で何度もおっしゃられていました。

・「強い個」

これからの時代は、会社などの組織に依存せず個人の力を最大化することを考えなければなりません。特に、「英語をツールとして使えない人は残念。」というお言葉が印象的でした。筆者も、留学などを通じて英語を使えるようになり、可能性を広げる重要性を改めて認識しました。

また、「実行が全て。」ともおっしゃられました。上杉鷹山が家訓として残した言葉に、「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」があります。どれだけ頭の中にいいアイデアがあったとしても、実行しなければ意味がない。この家訓はまさに、イノベーションハブが大学のアイデアを社会実装することの意味を表していると思いました!

・人間力

岡本先生は、キャリアを歩む中で最後に成功するかどうか決めるのは「人間力」であることに気が付かれたそうです。「ビジネスでは、小手先の利益ばかり考えている人はやがて周り人々に見限られてしまう。報いを求めず、まずは相手がしてほしいことに答えるのが大事。」とのことでした。「ビジネスは社会課題を解決してこそ」というお言葉を聞いて、ビジネスの本質に立ちかえることができました。

最後に

今回は財務官僚、そしてイノベーションハブという二つの分野にまたがってさまざまな貴重なお話を聞くことができました。
岡本先生のご経験から、キャリアを歩む上で重要なことを学ぶことができ、とても参考になりました。個人的には、ビジネスの本質とそれを実現するための実行力のお話しに共感し、自らのキャリアプランを見つめ直すきっかけとなりました!

岡本先生、お忙しい中ご講演いただき、本当にありがとうございました!

ゼミは毎週月曜日6限から、駒場キャンパス1号館159教室で行われています!
ゼミに興味を持っていただいた方は、ぜひ下記のリンクからご応募ください。(セメスターの途中からの参加も大歓迎です!)

また、本ゼミを運営している東京大学Diligentに興味を持ってくださった方は、ぜひホームページをチェックしてみてください!

文責:大崎智仁


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