【自主ゼミ】産学官共創デリジェントゼミ第7回 2024/05/27
2024年Sセメスターから始まる東京大学教養学部自治会公認の自主ゼミ「産学官共創デリジェントゼミ〜将来の進路、人脈、価値観を広げるためのアクティブラーニング〜」の第7回を5/27に実施いたしました!
デリゼミは、「社会課題解決に資する人材・リーダーの育成」を理念に、「どの分野・どの職種でも活かすことができる能力である、課題解決能力を学び・実践する」ゼミです。
各分野のエキスパートの方がご講演してくださいますが、少しでも多くの東大生にキャリアの選択肢をが増える契機になったらという思いから運営されています!
初回ガイダンスに関する記事がnoteにあがっていますので、どんなゼミか詳しく知りたい方は是非ご覧ください!
今回はライフキャリアパートの初回として、一般社団法人イノベーションハブの理事をされている、担当講師の井野孝紀先生が、ビジネスにおける重要な考え方を伝授してくださいました。
井野孝紀先生は東大法学部をご卒業後、NTTデータにご就職されたのち、18社もの会社を設立された起業のエキスパートです。
『LIFE SHIFT』
まずは、『LIFE SHIFT』という書籍を参考に、100年時代に起こる変化と重要な考え方を学びました。
長寿化の現状
上データは2007年生まれの子供の半数が到達する年齢を予測するものです。データから明らかなように、今後は100年生きることが当たり前になると言えます。
上データはベストプラクティス平均寿命(毎年の世界一位の国の平均寿命)の変化を示すものです。データから、10年に2-3年のペースで平均寿命が伸びていることがわかります。
新たな人生のステージ
100年時代になると、「学習→仕事→引退」という従来の3ステージの人生に、新たなステージが加わります。
・エクスプローラー
このステージでは、周囲の世界を探査しながら、問いを発し、熱心に耳を傾けます。そうやって自問して、自らの価値観を問い直し、アイデンティティと役割をじっくりと考えます。こうした経験が、価値基準を明確にし、リーダーシップを生み出すのです。
・インディペンデントプロデューサー
このステージでは、組織に雇われずに独立した立場で短期的なビジネスを行います。成功よりもビジネスの活動自体が目的です。背負うリスクが小さく、安心して失敗できる環境で、可能性を狭めず、直感に導かれて「プロトタイピング」(試行錯誤)を重ねます。素早く試行錯誤を繰り返すことで、有益な経験学習を積むのです。
・ポートフォリオワーカー
このステージでは、様々な活動に同時並行で取り組みます。頭の働かせ方や仕事の仕方を柔軟に切り替える能力が不可欠です。早い段階で、小規模なプロジェクトを通じて実験を始めることが重要です。自分がなりたいポートフォリオワーカーのロールモデルを見つけて、社内中心から社外の多様なネットワークに変えていきます。
VUCA時代
VUCAはもともとアメリカで軍事用語として使用されており、国家間の戦略がより複雑化している状況を表す言葉でした。しかし昨今では、移り変わりが激しい時代や不確実な要素が多い状況下を示す言葉として知られています。
従来の3ステージの人生が崩れ、先の見えないVUCA時代に突入した今だからこそ、アイデンティティの明確化・長期ビジョンに基づく行動
この2つが重要になると言えます。
従来の3ステージの人生が崩壊するため、仕事を変える決断を何度もする可能性があると聞いて、一生学び続ける必要があると感じました。
エフェクチュエーション
エフェクチュエーションとは、成功する起業家が、事業をどのようにとらえ、どのように行動しているのかを、厳密な科学的検証から明らかにしたものです。つまり、エフェクチュエーションとは何かを一言でいうなら「成功する起業家の思考・行動様式」ということになります。
コーゼーションとエフェクチュエーションの違い
エフェクチュエーションの科学的な貢献は「ビジネスパーソンの優秀さには、2種類がある」ことを証明したことです。
コーゼーション:大企業で中核を担うマネジャーを務める行動方式・優秀さ
エフェクチュエーション:スタートアップを成功させる行動方式・優秀さ
つまり、大企業とスタートアップでは、優秀とされる行動が、その根本原理からして違うのです。
その思考・行動様式は大きく5つの原則に分けることができます。
手中の鳥の原則(Bird-in-hand)
許容可能な損失の原則(Affordable loss)
レモネードの原則(Lemonade)
クレイジーキルトの原則(crazy-quilt)
飛行機のパイロットの原則(pilot-in-the-plane)
・手中の鳥の原則(Bird-in-hand)
一般的な大企業マネージャーのように最終目標・計画をたくさん考え、逆算して行動を決めるのではなく、今持っている手段から行動を決める、という原則です。決してゴールを持たずに走るのではありません。都度、今の手持ちのカードからどういうゴールが描けるのかを考え、仮説検証的にそれを試します。
・許容可能な損失の原則(Affordable loss)
資源豊富で地位も保証されている大企業マネジャーは、むしろ期待リターンを最大化するために、リスクをとった意思決定をしています。これに対し、不確実性の非常に高い世界に生きる起業家は、この件がコケたとしても大丈夫であるという、許容可能な損失の範囲内で行動しています。
何か大きいチャレンジをする場合には、自分にとって失ってはいけないものは何か、を整理しておくと良いでしょう。
・レモネードの原則(Lemonade)
Lemonとは、英語のスラングで、失敗作の意味です。レモンを作ってしまったら、レモネードにしてしまえばいいじゃない、ということです。コーゼーション的な発想では、失敗しないように物事を計画しますが、エフェクチュエーションの発想は、失敗もあることを前提に、そこから何かは拾えるように計画します。
・クレイジーキルトの原則(crazy-quilt)
大企業の方は、基本、外に見せたがりません。外にいるのは敵であり、そこから自分たちを守るマインドセットで仕事をしています。
一方、起業家は、ひたすら状況を開示する。よいことも、悪いことも。外にいるのは味方であり、よいことであれば繋げ、悪いことであれば外の人に助けてもらえばよいと考えるため、何でも開示してしまったほうが得だ、という発想になります。
・飛行機のパイロットの原則(pilot-in-the-plane)
乱気流に飲み込まれた、あるいは機体のトラブルに直面したパイロットを想像してください。彼/彼女は、1時間後のことを想像しながら、行動するか。そんなことはないでしょう。今、自分にできることに、集中するはず。ベンチャーの経営というのは、そういうものです。そこでは、予測するという行動は控えられ、手元の、自分がコントロールできる範囲へと意識が集中されています。
いわゆる初耳だった、「エフェクチュエーション」、という概念はとても新鮮でした。自分は、「コーゼーション」的な考え方が、起業家では重要なのだと思っていましたが、実は逆だったことを知り、非常に驚くとともに、たくさんのことを学べました。
10年後どのようになっていたいか?
最後に、以下の質問をもとにディスカッションを行い、信念や目標を明確化して、自己理解を深めました。
自分の志は何か?
自らの社会的存在意義(使命感)は何か?
譲れない自分の価値観(判断基準)とは何か?
自分のロールモデルを見つけ、その人についてリサーチする
-ロールモデルの人物の紹介
-なぜ自分のロールモデルとして理想的か?
10年後にありたき自分はどのような自分か?
-どこで、どんな人たちと、何をしているか?
そのためにどのような能力・経験が必要か?
そのために今からどんなアクションを取るべきか?
皆さんがそれぞれの思いを語ってくれて、他の人がどのような価値観を持っているのかなど、視野を広げる貴重な機会になりました。そして、言語化したことで、自分のの価値観や目標が明確になったので、これからも精進してまいりたいと思います!
終わりに
今回のゼミでは、ライフキャリアの初回として、自分のキャリアを見直す、とても有意義な時間となりました。次回以降は、特別講師の方々に、それぞれのキャリア形成について語っていただき、今回のゼミで見直した自分のキャリアを、より一層ブラッシュアップしていけたらと考えています!最後までお読みいただきありがとうございました!
東京大学Diligentでは、今回のような東大生のキャリア形成に役立つ機会を設けています!興味を持っていただけた方は、ぜひ以下のホームページをチェックしてみてくださいね。
文責:向橋卓寛