【東北研修②】株式会社rurio 訪問 2024/3/7

東北研修では、東北大学スタートアップインキュベーションセンター発で、主に福島県双葉町の創成に取り組む、株式会社rurio様を訪ねました。

地方創生の事業は一過性の事業となってしまう場合が多く、根本の課題解決という意味では疑念を抱かれがちな中で、代表の小林雅幸さんの自己分析には、地方創生における持続可能性をどのように確保していくかについて深い洞察が垣間見えました。

rurioは、地方創生が単に人を呼び込むことではなく、その地域が自立し、文化を自ら維持していくための自走システムの構築が必要であるという認識を持っています。そして、このシステムの循環を生み出すには、個々の意識への働きかけが重要との見解を示されていました。そこで必要不可欠となる「意識への働きかけ」の方法に、rurioのアプローチの秀逸さを感じました。

rurioの事業の一環として、地方在住者と移住興味者のマッチングを行っているのですが、最初にそのお話を伺った時、「既に興味を持ってくれている人だけに働きかけるのはマーケットが小さいのではないだろうか?」と感じました。しかし、小林さん曰く、「定着・定住するのは基本的に意識を持ってくれてないと無理。知っている人をただ拡大するよりも、何人残ったかに焦点を当てるべき。」と、定着率の重要性を強調されました。これは、単に多くの人を呼び込むという交流人口の拡大ではなく、実際に地域で長く生活し、貢献する人材を確保することが、真の地方創生の成功に繋がるという考え方を学びました。

そこで注目すべきがrurioのアプローチ方法です。rurioでは、地域固有の文化や魅力を内外に伝える取り組みとしてバイリンガル地域雑誌「iro」を発行しています。この雑誌では内容を双葉の事象に限らず、コミュニティそのものについて論ずる枠が設けられており、地方創生においてしばしば見落とされがちな、持続可能なコミュニティ形成における質の重要性を浮き彫りにしていると感じました。また、「iro」は本家のHP以外の他媒体には掲載していないことによって、地域に関心がある人材の受け皿となりつつも、リテラシーの高い人材にダイレクトに繋がることが可能になっているという側面があります。少し話が変わるかもしれませんが、私が最近電車に乗っているときにプログラムのコード風広告をよく見かけます。書いてある内容自体はローマ字表記で日本語を連ねてあるだけで、コードを見慣れない人に対してはただ分かりづらい広告であることに間違いありません。一方で、コードに親しみのある人にとっては、パッと目に入った段階で内容を読もうと頭が働いてしまいます。広告掲載企業の思う壺ですね。rurioのアプローチもこのように、特定のターゲット層の注意を引き、関心を喚起することで、対象にとっては無意識のうちにリテラシーのふるいをかけることが出来ており、結果として彼らのビジョンに沿った人材との縁が創り出されているのでしょう。

こうしたアプローチからも、rurioが地方創生をどのように捉えているかが見てとれます。さらに彼らは、単に外から人を呼び込むだけでなく、地域内部からも変革の力を引き出そうとしています。

この点において特に特筆すべきは、地域住民向けに実施しているワークショップ等の意見交換の場を設けていることだと思います。これらの取り組みを通じて、rurioは地域住民自身の声を直接拾い上げ、それを自治体と共に策定するアクションプランに反映させています。このような対話の場を設けることで、双葉町をはじめとする地域の創成に向けた住民の意識も大きく変わってきています。地域住民自身が地方創生のプロセスに参加し、自分たちの意見やアイデアが形になっていく過程に携わることで、彼らの地域に対する結びつきがより一層深まっているのではないかと感じました。また、こうした場は単に経済活動の活性化のためだけではなく、地域のアイデンティティを強化する側面もあると考えられ、地域内の雰囲気を大切にしながらも、積極的に外からの新しい風を取り入れるrurioの戦略は、双葉の自走的な活性化に確実につながると思わされました。

今回の東北研修にて、rurioのアプローチからは、地方創生における「意識への働きかけ」の価値を捉え直すことができました。そして、それが地域の自立と持続的な活性化へとつながる鍵であることを、東北研修を通じて学ぶことができました。私たち大学生の生活でも、地域ほど大きなものでなくても何かしらのコミュニティで協力する場面は多いものです。普段から、コミュニティメンバー個々人の意識に注意を向けることで、組織としてのパフォーマンスも向上するのかもしれません。

文責:山代晃聖

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