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決して

毎夕、神田川沿いを1匹と散歩する。
ディスカウントされていたこの1匹と暮らし始めて9年が経つ。

決して馴れることのないこの1匹、
時にあたしは噛みつかれ、手足を負傷する。

自分以外に心を許すなどあり得ない。
ご飯をくれる人ということで
うっかりあたしに寄り添う時のあるこの1匹。

歩けば常に後ろを警戒し
3歩あるいては振り返りを繰り返す。
なにを警戒しなにが怖いのだろう。

誰とも何とも交わらない1匹。
あたしは気づいている。
あたしが生写しとなったこの1匹の
命が消える時、
あたしは決して泣かないことを。〆

泣かぬなら 泣かせてみよう 意地悪で ふざけた愛に 閉じ込めてやろう