ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied⑭
生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…
14曲目はシューベルト♪ …ひとかけら、届くかな?
シューベルトSchubert : 楽に寄せて An die Musik D 547
ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵
優しい芸術よ 私の周りに荒々しい風が吹き
暗い時間が流れていた時に
あなたは私の心に温かい愛情の光を灯し
私をより良い世界へ導いてくれた!
あなたの竪琴から流れるため息は
その甘く神聖な和音は
より良い時間の天国を私に開いてくれた
優しい芸術よ あなたに感謝します!
詩はシューベルトの親友フランツ・フォン・ショーバーFranz von Schober (1796 - 1882)による。
人生の辛く暗い時間に音楽が心に光を灯す…。誰しも経験することではないでしょうか。この世に芸術が、音楽が存在してくれてどれだけ有り難いことか、今まさに痛感されている方が多いのではないでしょうか。もし芸術が存在しなかったら… 考えるだけで恐ろしいことです。この一年で私たちは今まで自由に芸術を謳歌してきたことがいかに尊いことだったかを思い知りました。再びその自由が訪れることを願ってやみません。
歌声部と対話するピアノのバスの動きは、全てを許し、受け入れ、包み込んでくれるように響きます。聴きたどるだけで胸が熱くなってきます。右手の和音はさざ波のように感情を広げていきます。そして歌声部は男でも女でもなく、一人の人間として“感謝”の気持ちを心に刻むように進んで行きます。
芸術はそれに対峙するとき、その人のその時の心を映すものです。そうすることによって、その作品は完成されます。一人一人の心の中で、その作品が完成するのです。今この瞬間しかない作品…。皆さんにはどのように響きますか?
ドイツ歌曲の楽しみFreude am Lied⑤⑥でもシューベルトの作品を取り上げました。⑤にはシューベルトについての解説があります。よろしければご参照くださいませ。
https://note.com/utauakiko/n/ncd3506b576a2
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