街クジラの歌【シロクマ文芸部】
「街クジラだ」
ひとりごとが声に出てしまう。同じ曲ではないが確かに街クジラだった。
ほとんどの田舎がそうであるように、私の故郷でも夕方になると音楽が流れた。ただ水曜日だけが違う曲で、私はそれを「街クジラの歌」と呼んでいた。私だけの勝手な呼び名だったけれど、他に形容のしようが無い。静かな海のリズムを思わせる和音にのせて、高音の旋律が長く伸やかに上下する。まるで本物のクジラの鳴き声のように。
街クジラが歌うのは日没時。西の空にはまだ赤が残り、東には濃紺の星空、そしてその間を移