見出し画像

悪魔                   ――画像しりとりはじめました(#212)

(#211) まっさかさまに堕ちてdesire→「あ」→悪魔――(9,940字)


ククク……
ようやく封印を解けた
憑依にも成功して肉体も得た


さあ、ここから地球の人間どもを恐怖のズンドコに――


――って、吾輩わがはい、ネコかーーーーいっ!!


――そして屈辱のびょう生を全うし、数十年の月日が流れた――


……よし、
今度こそ完璧な憑依ができたゾ
なんといってもたいそう身軽だ
フフフ……思わずガッツポーズのひとつでもしたくなるくらいに
心も身体も軽いじゃないか♪


ククク……ハハハ……

ハーハッハッハッ!!


――って、吾輩、ケムリかーーーーいっ!!



いや、憑依ヘタクソか( ̄∀ ̄)
百歩譲ってネコに転生しちゃったのは、ミスとしてまだギリ理解できるけど(理解できるか?)

ケムリって何?(・_・)?


せめて、生物に転生しろ、生物に( ̄∀ ̄)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そういや「悪魔ちゃん」騒動ってあったな――
「悪魔」という今回のしりとりワードを見て、ふと、そんなことを思い出した。

もっとも、「悪魔ちゃん」といっても、水木しげるの漫画ではない。
(いや、それはそもそも「悪魔ちゃん」ではなく「悪魔くん」( ̄∀ ̄)💦)

事の起こりは1993年の8月、東京都昭島市役所に一通の出生届が提出されたことから始まる。
――もう30年以上前の話になるんやね。隔世の感やわ( ̄o ̄)

出生届の「名前」の欄に書かれていたその名前は「悪魔」。
私のように性格がねじくれた異常者うつけものならまだしも、ごくごく一般の人々や世間さまが受ける印象は、やはり違和感のあるものだろう。
(まあ、語感だけなら「アクマ」は、「琢磨たくま」あたりに似てるから、さほど違和感を感じないかもしれないけどねっ^m^)

ただ、この「悪魔」という名前、とりあえず戸籍法のルール上は、特に何の問題もない立派な名前でもある。

実は、子の命名に際して戸籍法で規定されているのは、使っていい漢字とダメな漢字を定めた次の条文とそれに伴う施行規則だけなのだ。

第五十条 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
② 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。

戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号) (脚注1.) より

第六十条 戸籍法第五十条第二項の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
 常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
 別表第二に掲げる漢字
 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)

戸籍法施行規則 (昭和二十二年司法令第九十四条) (脚注2.) より

「悪魔」については、「悪」も「魔」も、常用漢字表に記載のある極めてベーシックな漢字なのだから、ノープロブレムということだ。

では、なぜこの「悪魔」と名付けられた子どもが、その後何か月もの間ゴタゴタと揉め、マスコミにまで大きく取り上げられるハメになってしまったのだろうか?

今回、いわゆる「悪魔ちゃん騒動」と銘打たれた一連の出来事について改めて調べ、公式見解ともいうべき家庭裁判所の審判書の全文 (脚注4.) にも目を通してみて、いろいろと思うところがあった。

ここから先は、そんな般ピーの法律ドシロートにして性格がいささかねじ曲がったヒネクレ者の目から見た「悪魔ちゃん」騒動について、である。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

まず、揉める火種は市役所側の対応の方に、より大きなものがあるのでは?――そんな風に感じた。

そもそも、問題の出生届が提出される一週間以上前に、父親の方から

「悪魔」という名前ってオケーイなん?(・_・)?

という電話での問い合わせがあり、市役所からは「戸籍法上は何の問題もありません」という教科書通りの回答を得ているのだ。

このように市役所へ事前にお伺いを立てていることや、あるいは問い合わせが8月2日にも関わらず、実際の出生届提出が一週間以上経った8月11日だということなども考えると、家庭内でも相当モメてた (*2) んやろなぁ……^m^💦
そんな父親 (以下「悪魔パパ」というw) 側の葛藤というか、悩みに悩んだ舞台裏が窺える気がする。

*2:家庭内でも相当モメてた:実際に、「悪魔」という名前を推していたのは父親だけであり、母親も反対していたし――後に、『悪魔命名』が「父(夫)の勤労意欲を高める意味もあるかも」と考えて渋々賛成に回った――父方の祖母、母方の祖父母あたりは最後まで猛反対のスタンスを崩さなかったらしい。

とまれ、日数はかかったが (*3) 出生届は無事に提出され、窓口ではフツーに受理された (*4)
悪魔パパは内心ホッとしながら帰宅したことだろう。

*3:日数はかかったが:出生届の提出期限は「出生から14日以内」と定められている (戸籍法第49条)。「悪魔ちゃん」の誕生日は7月末とされ何日なのかは定かになってはいないが、出生届の提出されたのが8月11日だというのは、けっこうなギリギリchopだったと思われる。

*4:受理された:実は、窓口で書類を受け取られた時点では、正確には「受理」されたとは言えない。詳細は後述するが、所属長の決裁が下りて初めて正式に「受理」されたことになるのだが、そんなん、一般市民目線からすれば「知らんがな」でしかない。窓口で受け取ったら「受理された」と考えるのが当然だ。

ここから先、この「悪魔ちゃん出生届」は、市役所の通常業務による事務フローに従って部内で稟議され、最終的に所属長の決裁を経て戸籍登録――
という経過をたどる訳だが、部内稟議の時点で疑義が発生した。

いやいや、この「悪魔」て名前、マズくね?

昭島市の戸籍課の職員が何名いるのかは知らないが、盲判めくらばんでない人が最低1人はいたこと自体は喜ばしいことである。
確かに、使用している文字 (漢字) 自体の問題は何もないが、名前そのものの意味的に、これが人の名前として、この子どもが今後一生背負っていく名前として問題はないのだろうか?――と。
ある意味、ごくごく普通の疑義ともいえる。

こうした問題が発生した場合の役所の対応は至極簡単、上級官庁に丸投まるな……もとい、確認をとることだ。
この場合は法務局八王子支局になるわけだが、早速「悪魔」という名前の受理の許否について問い合わせたところ、上級官庁たる法務局からも「問題なし」(o^-')b♪――との回答を得た。
オッケー、あとは決裁して戸籍登録するのみぞ。

駄菓子菓子だがしかしっ!

翌日になって、法務局八王子支局から昭島市役所に、
昨日のアレ、ちょっと待ってくんない?
という連絡が入る。そして、正式に文書にして法務局宛てに「出生届処理伺い」を入れてくれ、という指示が出たのだ。

恐らくは、法務局八王子支局でも昭島市役所同様の疑義が生じたのだろう。いったんは電話口で「文字的にはどちらも常用漢字表にある字だから問題ないっしょ」と回答したものの、よくよく考えてみたら、さすがに「悪魔」はマズくない?( ̄~ ̄)💦――と。

こうなると、お役所的には「一職員の電話口での回答」はちと軽すぎた……(後々問題になるとマズい💦) と思い直し、
「正式文書」として伺いを立ててもらい、
「正式文書」として部内稟議を図り、
「正式文書」として決裁して回答すべきだ、という結論に至ったのだろう。
実にお役所らしい発想と手続きだ。

勿論、ケースバイケースではあるが、こうして正式文書にして寄越せ、言われた時は、大体が揉める。そして弾かれる。
(※ あくまでも個人の経験則からの偏見に満ちた感想です)

果たして、この「伺い」に対する正式な回答として、法務局八王子支局長名により

子の名を「悪魔」としたまま処理することは妥当でなく、届出人に新たな出生子(長男)の名を追完させ、追完に応じるまでの間は、名未定の出生届として取扱うように

というお達しが昭島市役所に「正式に」届いた。
これが9月28日のこと。この時点で、件の出生届が提出されてからすでに50日近い日数が経過している。

なお、お役所内部でこういった不穏な動きがある中、悪魔パパはどうしていたのかというと――。
8月11日に出生届を「無事に受理してもらった」あと、周囲にも
「うちの子、悪魔やねん(≧▽≦)」
と紹介する等、ひと通りお披露目済みであり、 (おそらく) 祝福ムードに包まれた日々を送っていた。ごく普通の日常生活がそこにある。

そんな中、悪魔パパはたまたま別件で市役所を訪れた8月18日頃、戸籍課から
「実は、あなたの『悪魔ちゃん』、まだ保留状態です」
という衝撃の通告を受ける。

ファッッ!?( ゚Д゚)?

悪魔パパ、困惑。

いやいや、一週間前に出生届受理したやん。
そもそも、その前にこの名前でオケーイかどうか聞いたやん。
なんで今さら、保留やねん?(・_・)?

恐らく、頭の中はハテナマークでいっぱいだったことだろう。
ひょっとしたら、吉沢秋絵の『なぜ?の嵐』がフルコーラスで鳴り響いてたかもしれない。←さすがにそいつはどうかな( ̄∀ ̄)

(4分00秒)

そんな不安感と不信感に悶々としたまま、時は流れて10月4日 (*5)
悪魔パパは「出生子(長男)の名の追完を求める催告書」を受け取る。
要するに、
「悪魔ちゃん、やっぱダメだわ^m^……ま、そういうワケだから、速やかに違う名前を考えて持ってきてね♪ よろ(o^-')b♪」
――ってことだ。

*5:10月4日:催告書の日付が「10月4日付」なので、恐らく悪魔パパの手元に届いたのは、早くても1週間後かそこらだったと思う。
ちなみに、催告書に記載された提出期限は10月22日。実際に悪魔パパの手元に届くだろう期日を考慮すると正味2週間あるかないかだから、あくまで事務処理の通常日程設定スタンダードといえる。こっちも迷惑かけたから、少しは考える余裕をプラスしとくね♪――的な発想はお役所には一切ない( ̄∀ ̄)

〽大人たちはみんな わかってくれない

と悪魔パパが思ったかどうかは定かではないが、とりあえずフツーに

「ハァ?( ̄д ̄)?💢」

とキレたくなったことは想像に難くない。

一連の流れを見る限り、市役所から法務局まで正式な文書起こして通常業務で事を進めたら、お役所の事務処理手続き的には特別に遅延している風には思えない。
が、それはあくまで元地方公務員として事務処理の内情を知る目線での話であって、一般ピーポーの悪魔パパが受ける印象は全く別だ。

8月11日に提出した出生届に「2か月も経ってから」ケチをつけられ名前を変えろと迫られる――

これで、ハイそうですか、ご面倒おかけしてすみません(^^ゞ💦💦

――なんて素直に思えたとしたら、よほどの聖人君子か、怒りという感情を海の底にでも置き忘れてきたかのどっちかだろう。
(ま、イカリなだけに( ̄∀ ̄)💦)

かくして納得のいかない悪魔パパは、お上から言い渡された「名前変更」期限直前の10月20日に、市役所側の処分に対する不服申立を行うことを決意する。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……ここまでの経過を見ると、最初の段階 (事前に悪魔がオケーイかという電話お問い合わせ) か、せめて実際に出生届が提出された窓口段階で、

使える字としては何も問題ないですけど、名前の意味的にこれで大丈夫ですか?

とか

内部こちらで少し検討させていただくことになるかもしれませんが、よろしいでせうか?

――くらいのアプローチがあれば、案外そこまで揉めなかったんぢゃなかろか?
そんな風にも思える。

というのも、悪魔パパは後述するように「悪魔」というワードにそこまで強く深い思い入れがあったようには思えないからだ。
「人に注目され刺激を受ける名前」なら、別に「悪魔」でなくても他にいくらでもありそうなものだし。

悪魔パパの怒りの本質は、「悪魔」が却下されたそのこと自体よりも、却下されたプロセスに、より大きな憤りを覚えている――
私にはそんな風にも感じられるのだ。

ともあれ、不服申立さいは投げられてしまった。

そして、あくる年の1月、悪魔パパが起こしたこの不服申立に対する東京家庭裁判所八王子支部の審判が下る。
内容は、要約すると次のとおり。

① 「悪魔」という命名自体は命名権の濫用に当たり、戸籍法に違反するものである。
② 昭島市役所は、本来受理を拒否すべき届出を受理し、さらにその記載を訂正 (抹消) するに際し、法定の手続きを経ず職権で行ったので違法である。
③ というわけで、昭島市役所は「悪魔」という名前で受理手続きを完了させよ

まあ、ざっくり言えば、「悪魔」はアカンけど、それを受理した昭島市役所はもっとアカン(笑)――という審判だ^m^

これはこれで、またなんちう裁決だw
悪魔パパも市役所もどっちも得してないやん(≧▽≦)
三方一両損なら大岡裁きというものだが、双方の傷に理屈という塩を塗りたくって痛みを倍加させ、そのうえで根本的な解決にはまるでなってないというね(^^ゞ
(だって、「お上がお墨付きの違法な」名前で戸籍登録しろ、っていう裁決だもんねぇ( ̄∀ ̄)
法律的には不服申立が認められた形だけど、こんなん実質「双方敗訴」やんなぁw
……まぁ、仕方ないっちゃ仕方ない判断と言えなくもないけどさぁ💦

この審判に対し、表向きは敗訴の形となった市役所サイドが納得いかずに抗告し (だろうな)、裁判はさらに泥沼化の様相を呈しかけた。

が、その後、悪魔パパ側が大きく3つの理由から不服申立自体を取り下げてしまったことで、この「悪魔ちゃん騒動」は突然終了する。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

時に、「悪魔」という名前自体は違法――命名権 (親権) の濫用――である、という家裁の判断の根拠はどこにあるのだろうか?

家庭裁判所の審判書の結論では、「悪魔」の命名は「命名権の濫用に当たり、戸籍法に違反する」と明記されているのだが、戸籍法には
「命名権の濫用になるような名前はアカンで」
とクギを刺すような条文なんて、実はどこにもない (*6) のだ。

*6:クギを刺すような条文なんて、実はどこにもない:強いて関連する規定というなら、名前を変更する手続きについて規定する第百七条二項
正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」
という規定があるのだが、正当な事由 (換言すればアカン名前だという事由) の具体例や指針的なものについては一切明記されていない。

審判書の文言から強いて推察するなら、その根拠法令は民法第一条三項の規定ということになるようだけど……

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
 権利の濫用は、これを許さない。

民法 (明治二十九年法律第八十九条) (脚注3.) より

「権利の濫用は、これを許さない」
……って……

いや、ざっくりすぎるやろ、さすがに。

こないダイレクトに「権利の濫用は、これを許さない。」とか言われても、それじゃあ、具体的に何をしたら「権利の濫用」になるんですか?――て話ぞ。

当該審判書では、原則として「命名権の行使は全く自由」であり、
行政 (市町村長) による審査権も「形式的審査の範囲にとどまり、内容にも及び、実質的判断までも許容するものとは解されない」としている。

ただし、「例外的に」という但し書き付きで、以下のような場合は審査権を発動し、時には名前の受理を拒否することも許されるだろう、としているのだ。

  1.  親権 (命名権) の濫用に亙るような場合←だからそれが具体的に何やねんてw

  2.  社会通念上明らかに不適当と見られるとき

  3.  一般の常識から著しく逸脱しているとき

  4.  名の持つ本来の機能を著しく損なうような場合

むう(・_・)。
今イチ、しっくりこない。「社会通念上」とか「一般常識」とか、それってかなり曖昧な物差しぢゃないかい?( ̄∀ ̄)?
実は審判書の中でもポロッと本音出とるけど、一般常識等の概念は「一義的ではなく、各人によって解釈が分かれる」わけだからねぇ……。

なお、古い裁判例 (*7) では、子の命名に際し、上記の基準よりは多少具体的なダメよ~ダメダメ❌な例が挙げられている。曰く――

  1.  難解

  2.  卑猥

  3.  使用の著しい不便

  4.  特定 (識別) の困難

*7:古い裁判例:具体的にどんな裁判で使われた判断基準なのか、いろいろ調べてみたが、ついに見つからなかった(*´Д`)。
なお、「4. 特定 (識別) の困難」については、自分の子に母親 (妻) と同じ名前を付けるという (ただし、母親は「伸子のぶこ」、子は「伸子しんこ」と、一応の区別はつくw) ややこしい例が特定できた (名古屋高裁昭和38年11月9日)。

ま、仮にそれに照らしたところで「悪魔」は、難解でもなければ卑猥でもなく、勿論、特定の困難にも当たらない。
せいぜい、使用の著しい不便が拡大解釈でようやく当たるっちゃ当たる……くらいなモンか。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

基本的に子の幸せを願わない親などいない。
悪魔パパとて、何も我が子に不幸になってほしくて「悪魔」と名付けたわけではないだろう。

審判書の記述によると、命名に関する悪魔パパの言い分 (*8) はこうだ――。

この命名により人に注目され刺激を受けることから、これをバネに向上が図られる。
マイナスになるかもしれないが、チャンスになるかもしれない。

*8:悪魔パパの言い分:なお、いくつかのブログ等の記事では、命名の理由について
「珍しい名前だから人の記憶に残る。人の記憶に残り、人が集まる。そうなれば普段出会わない人と出会う確率も上がるし、いろんな良い経験もできると思うんですよ」
「悪魔は悪の世界で最強。何かでトップになる、そんな子供に育ってほしいから」
――という記述も見受けられたが、ホンマに悪魔パパがそない言うたかどうかオリジナルの確認がとれなかったので、ここではあくまで参考にとどめておく。

……うーん……悪魔パパ、ちょっと弱い( ̄∀ ̄)💦💦
もちろん、審判書の記述は要約したものなので、本当は、もっと深遠な理由が隠されていたのかもしれない。
そこんトコを踏まえたうえで、個人的に思うところ――

そもそも「悪魔」って
そないアカン名前なん?(・_・)?

――て部分に少し触れてみたい。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

まず、「」という漢字単体について見てみたい。
「善と悪」という対立軸で語られるときは、まさに「悪い」という意味であり、英語で言うなら "bad" であり "evil" であり、凡そポジティヴな意味は無い。漢和辞典で引いてみても「悪」にはポジティヴ要素はまるでなっしんぐだ。
確かに人の名前に用いるには、いささか不穏当な字といえるかもしれない。

だが、日本ではある時期、この「悪」という字を
猛々しく強い」「ずば抜けて優れた
という意味を持たせて、名前にも使用していたことがある。

平安末期に活躍した武将の一人で、源頼朝・義経ブラザーズの異母兄にあたる源義平みなもとのよしひらの通称は「悪源太」であり、
同じく平安末期から鎌倉時代にかけて活躍した平家方の武将、藤原景清ふじわらのかげきよの通称もまた「悪七兵衛あくしちびょうえ」である。

戦国武将にも、決してメジャーどころではないが、マニアックなところで通好みの「丹波の赤鬼」こと赤井直正あかいなおまさ
彼の通称も「悪右衛門」だ。

また、個人の通称だけにとどまらず、中世の日本において「悪党」といった場合、それは今日イメージされるようなならず者やらごろつきやら、ヤの字で始まる自由業の方たちの鉄砲玉として使われるチンのピラ、という意味ではない。

「悪党」には、公卿の家人であったり官位を持っていたりと、社会の上流階級にも存在してたりもする。

つまり、この時代の「」とは「命令や規則に抗う者」に対する価値評価のひとつであり、純然たる「強大さパワフリャ」を表す言葉でもあったのだ。

もし、ここらへんを踏まえて悪魔パパが「悪磨あくま(*9) という名前を提出してきたらどうなっただろう?

「猛々しいまでに強い」人になってほしい。また、それだけじゃなく
その強さに驕らず、常にその強さに「磨きをかけて」、より強い人になってほしい。
――そんな願いが込められているんです!

そう説明された時、誰がこの名前に理路整然とした「否」を突きつけられるだろうか?

*9:「悪磨あくま」:ちなみに、不服申立を取り下げ、名前の変更を受け入れた悪魔パパが次に提出した名前は「阿久魔あくま」だったが、昭島市長はこれもダメと突っ返している。そして、その次に提出された「亜駆あく」で、ようやく決着するのだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

次に「悪魔」についても少し。
一般に「悪魔」という言葉からイメージされるのは、西洋、特にキリスト教圏での「神」に敵対する存在であり、まさに「絶対悪の象徴」といったところだろう。

だが、そもそもその悪魔って、最初から悪いワケぢゃなくて、もとは神の許に侍っていた天使が堕落した存在やで( ̄∀ ̄)。

悪魔の総元締めともいうべきルシファーなんて、天使の中でも最も美しい大天使だったわけだし。

そんな大天使が堕天した理由は諸説あるが、一説には
唯一絶対の神のみを崇めよ――という御言葉に忠実にいたルシファーは、ある時、神の似姿として作られたアダムとかいう土くれwに拝礼せよ、という神の命令を拒み、神の怒りを買って天から追放された、というものがある。

ルシファーにしてみれば、

いやいや、アンタが唯一絶対の
崇拝対象ちゃうんかーいっ!!( ゚Д゚)!

と、文句のひとつも言いたかったんちゃうやろか( ̄∀ ̄)
神に対して最も忠実だったがゆえに堕天してしまうという、なんとも皮肉な結果ともいえる。

こうして見ると、悪魔にも多少は同情の余地ある気せぇへん?^m^

また、キリスト教は宗教としてその勢力を拡大する途上で、既存の宗教を「邪教」と貶めてきたという黒歴史を持っている。

古代フェニキアで豊穣を司っていた美しい女神アスタルテは、大悪魔アスタロトへと変貌させられ、
カナアン人が崇拝していたバアルは、そのままの名前で悪魔化されるだけでなく、バエルやバアル・ゼブブ (後にベルゼブブ)、ベルフェゴールにバルベリス等、様々な名前と醜悪な姿を与えられ、これでもかと言わんばかりに貶められ尽くし、悪魔にされたのだ

――ある意味、「神」と「悪魔」は表裏一体とも言える。

仮に、悪魔パパがこういった古代の神々に造詣が深く、虐げられてきた古き神々に心酔していて、その「神々あくま」にあやかって「悪魔」と命名したんですけど( ̄∀ ̄)🎵

そう説明された場合、果たして家裁の審判は、昭島市役所の判断はどうなっただろうか?

もちろん、だからといって日本の「一般社会通念上」、「悪魔」が「神様」に安直に転じるなんてことは到底ありえないだろう。屁理屈言うな!くらいの反論はフツーに受けそうだ。
でも、それってヘタすりゃ、憲法第20条で保障されている「信教の自由」を阻害することにはなりゃしまいか?( ̄∀ ̄)

あるいはもっと単純に、記事冒頭でさりげなく示した水木しげるの漫画
悪魔くん』を持ち出してきたらどうだろう。

この漫画における主人公「悪魔くん」は、悪魔の力を借りて世界を平和へと導くために日夜戦うヒーローであり、全人類が幸せに生きられる世界を築こうとしている、誰がどう見ても「善悪」でみれば「善」の存在だ。

この「悪魔くん」にあやかって「悪魔」てつけたんですけど?( ̄∀ ̄)?

そう言われたら、どうだろうか?

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

いずれにしても「最低限」必要なのは親の「覚悟」だと思う。

どんな高尚な謂れがあろうが、どんな深遠な意味を持とうが、
「悪魔」と名付けられた子どもが、その成長過程で「一般社会通念」という偏見で不要なトラブルに巻き込まれたり、理不尽な差別やいじめを受ける可能性は否定できない。てか、ぶっちゃけその可能性の方が大だろう。

なんて名前つけてくれよんねん、
このバカ親がァ!!

――と、名付け親を恨み、親子関係が破綻する未来だって、ことによったら十分にあり得る話だ。

そういうリスクもまるまる全部ひっくるめて、総てを背負い、不当な中傷等から我が子を守り、最低限「悪魔」が成人するまでの間は養育し続ける――
そのくらいの覚悟と力とそれなりに明確なビジョン

それがないのなら、やはり「悪魔」なんて安易につけるべきじゃない。

あくまで無知な凡愚の戯言のような私見であるが、そんな風に思ったりする。

そして、悪魔パパの涙の記者会見 (脚注5.) を見る限り、彼にその覚悟が備わっているようには、申し訳ないけど私には見受けられなかった。

テレビや週刊誌等、マスコミや世間に面白半分に扱われ1年と保たずに音を上げるくらいなら、もう少しだけ考えてほしかった。

あなたの御子息は、1年どころか「一生」こんな風に好奇の目に曝され弄ばれるかもしれなかったんですよ――と。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……うーん……
まーた、長々ダラダラと、とりとめもないことを書き殴ってしまった……💦

これも、けっこうデリケートな問題だからなぁ……

勢いに任せて書きたい放題になってないか、
いささか心配なトコがある( ̄~ ̄)💦
(もし、そうなってたら反省せなアカンな)

しかも、結局、大してオモロい感じにはならなかったし(*´Д`)
(そこはもう、思いっきり反省しろ)

言うても私は悪魔パパを全面的には非難する気にはなれない。
本来なら、この騒動って、テレビや週刊誌等、マスコミを挙げて面白半分に扱っていいような案件ではないと思うわけで。
ある意味、人ひとりの人生がかかった問題なのだから。

悪魔パパは、ちょいとやり方が上手くなかっただけで、
彼が我が子を愛していただろうことは、多分まぎれもない事実だと思うし、今でもそうであってほしいし。

最近の日本では、子どもにいわゆる「キラキラネーム」をつける親御さんもけっこう多いみたいだしねー。
そんな名前の中には、「悪魔ちゃん」とたいして変わらんやんか💦
――て名前もけっこうあるからして( ̄∀ ̄)

「名前」は、親が子に与える最初の大切なプレゼント🎁

もう30年も前に起きた騒動ではあるけど、これから我が子に名前をつけることになる親御さんたちに、何かを考えてもらえる、そんなきっかけのひとつにでもなったらいいなぁ――
なんて思う。

最後に、ネットではすでに本名まで晒されている悪魔パパ (コワい世の中だよねぇ……💦) は、 (その後、彼が犯したことは別問題として) この件に関しては、芸能人でもセレブリティでもなく、ごく普通の一般人なのです。

くどいようですが、面白半分に扱ってはいけないと思うわけです。

今回、私は家庭裁判所の審判書の全文を読み、その内容を中心に長々と私見を書き殴っていますが、一応、最低限の配慮はしているつもりです。
ですが、もし私の思慮不足から、著しく事実に反する点や、特定の個人への誹謗中傷に当たるような表現があったとすれば、心より謝罪申し上げます。
また、ご指摘いただければ、該当箇所を二線抹消のうえ訂正したいと思いますので、お手数ですがその点よろしくお願いしますm(__)m


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今宵の〆の一曲は、陰陽座で『魔王

(6分00秒)

「悪魔」ぢゃないけどねー^m^
ここでの「魔王」は、具体的には「第六天魔王」を自称した織田信長のことを歌っている。

ちなみに、そんな織田信長にあやかって「魔王まお」って命名したら、市役所は果たして……( ̄∀ ̄)←もうええっちうに


そんなこんなで、
明日も、なるべく多くの人が、たまには自分の名前ってどんな思いが込められてたのかなー?
……て考え、親がくれた唯一無二の「名前」という愛情に感謝する、そんな一日でありますよう🌈



■ おまけ

今回の画像しりとり列車 (212両目) の前の車両です。タイトル「まっさかさまに堕ちてdesire」と下のネタ画像で、なにこれ?て引っかかりを覚えた方がおられましたら、時間が許すような時にでも、覗いてみてやってください。

■ 参考・出典

2.

3.

4.

5.

(5分33秒)

こんなダラダラと長ったらしい記事に最後まで目を通していただき、その忍耐強さと博愛の御心にひたすら感謝☆です ありがとうございます ご覧いただけただけで幸甚この上なっしんぐなので サポートは、私なんかではなくぜひぜひ他の優れたnoteクリエイターさんへプリーズ\(^o^)/♪