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夏の落し物

ちょいと狭めの、某駅へ続く歩道の先頭に
杖をついたおばあちゃんと付き添いのヒト。
数日前の豪雨もあって久しぶりの散歩なのか
目に映るモノ全部を面白がっている。

フェンスを見れば「工事、もう長いのよ」
張り紙を見れば「13日からお休みですって」
その都度立ち止まっては付き添いのヒトと
お喋りしている。自分も含め、あとに続く
誰もが「うんうん、そうだね」って感じで
おばあちゃんのペースに合わせスローダウン。
誰一人、文句も舌打ちもしない平和な時間。

と、おばあちゃん、道の脇の"何か"に気づき
完全に立ち止まった。「おや、かわいそうに」

ちょ、ちょっと待った!そこはスルーして
くれないか。

「死んじゃったのねぇ」

いや、そうとは限らんから、スルーして!

おばあちゃん、ソイツを杖でちょん、ちょん。

ギャゲギギギィーッギギギギョジジジジッ….

ほらぁ、飛んだじゃないかぁ💢!!!

自分も含め、後ろに続く中の数名は
思わず「うぁ"っ」と声をあげてしまう。

「あら、ごめんなさい、生きてたの?」

気絶から復活直後のソイツは、鳴き声も
でかけりゃ、飛行経路も渦巻き状に無茶
しやがるからね。

“うわ、こっち飛んで来る!”

ガードレール乗り越え、車道に出ると
後ろも見ずに超早足でおばあちゃんを
追い越した自分。

「おほほ...」マイペースおばあちゃんに
後ろで笑われた気がする。でも六本脚は
苦手なんだよ。

子供の頃は手掴みでも平気だったのに
いつからダメになったんだろう。
夏休みの自由研究で“昆虫採集”と称して
殺生しまくっていたバチがあたったか?

そういえば、今って、注射器と謎の薬品が
セットになった昆虫採集キットとかって
見かけないなぁ。フナやカエルの解剖と
一緒に、やらなくなった/廃れた、のかな?
必須授業でなくてよい気はするけれど…。

ちなみに、道端でひっくり返ってるアイツら
脚が閉じていたら死んでいるけれど、開いて
いる場合は気絶してるだけらしい。もっとも
それを見極めるまで仰向けになったアイツらの
腹を凝視するのすらキツいので、自分は、夏の
落し物を認識したら、即座に眼球のピント調節
機能をオフにして、なるべく早足でその場から
遠く離れる、と決めているんだ。

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