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ここで私が見つけたこと

こんにちは。
5月11日に外出制限が緩和され、以前より自由に出歩くことが出来るようになったパリは、もう午後九時すぎまで空が明るく、とても気持ちの良いさわやかな気候と太陽が沢山の元気を与えてくれます。

私は3月に外出制限が始まってからも帰国することはせず、対面でのレッスンが再開する希望に賭けてここに留まっていましたが、先日音楽院から今年度終了のお知らせ(オンラインでの授業は続いています)があり、とても残念な気持ちでいました。
やはり、生の音を聴く機会が断たれてしまったことはとてもショックです。

そのお知らせを受けてから、私は、何の為にここに来たのか?なぜここにいるのか?についてずっと考えていました。

沢山の無念があります。もっとやりたかったこと、出来たはずのこと…そしてそれは誰のせいでもありません。この気持ちをどう消化できるのか、悩んでいました。

しかし、例えばこのコロナが無く予定通り全てのことが出来ていたら、私は満足できていたのか?とふと考えました。
もし、レッスンを毎週受けられていたら…もしあの演奏会に出演出来ていたら…もしあのコンサートを聴けていたら…。
私はきっと、もっともっと沢山のことにチャレンジしたいと思ったはずです。学びたい気持ちに、終わりはありませんし、向上心は音楽家としてとても大切なものです。

こちらに来てから、とても沢山の勉強の機会をいただき、自分でも成長を感じることが出来ましたし、とても充実した日々でした。
しかしその一方で、辛く苦しいことも同じくらい沢山経験しました。そのせいで食事をうまく取れなくなったことも、何度もありました。
でもその度に何度も立ち上がり、自分を奮い立たせ、問題から逃げずに真正面から向き合い、この異国でのロックダウンさえも私は乗り越えることが出来ました。そしてそんな自分をようやく、誇りに思うことが出来ました。

困難ばかりの留学でしたが、その『誇り』を得ることが出来たことは、何にも変えられない、かけがえのない経験です。ここに来た意味や、ここに留まっていた意味を、私はようやく、見つけることが出来たような気がしています。

私は数あるピアノ協奏曲の中でもブラームスのピアノ協奏曲第一番が好きです。壮大な第一楽章、広く深い夜空のような第二楽章に続いて、燃えるような激しい感情があらわになる第三楽章。何度も何度も苦悩しながらその度に立ち上がって行くようなドラマに自分を重ね、今まで何度この曲を聴いたかわかりません。

帰国までは本当にあとわずかとなってきました。
お世話になった方々に直接のお礼が出来ないかもしれないのはとても残念ですが、残り少ない日々を後悔の無いように過ごし、日本で待ってくれている家族のもとへ胸を張って帰りたいということが、今の私の目標です。
その為にも毎日、健康に気をつけながら過ごしていきたいと思います。

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