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君と私は「 」

彼と私は、不思議な関係だ。

某出会い系アプリで出会った同い年の彼。
文字での会話をしばらく続けた私たちは、夜の軽いノリで唐突に会うことになった。

彼とはすぐに打ち解けた。
変に距離を詰めてくるわけでも変な雰囲気を醸し出してくるわけでもなく、ごく普通に接してくれた彼は、無条件に私を安心させてくれた。

それから会う頻度も増えて、「アプリで会ったとは思えんな」と笑い合う仲にまでなれた。
お喋りな私の話を相槌を打ちながら時折笑ったり驚いたりしてくれながら、飽きずに聞いてくれた。
いつもは聞く側に回る私にとって、そんな彼の存在はとても大きなものだった。

彼は私に色んなものを教えてくれた。
彼の好きなアーティスト、たばこ、「女の子とそういうことしたことない」と言った彼の覚束無い指先で外すブラホックの愛くるしさ、私色に染めたいと思った独占欲、「結婚したい」って言葉の軽さ、彼の儚さ。

どんどん彼に染まっていく私が大好きだった。
愛おしかった。

彼との夜のドライブは、他の人とは比べ物にならないくらい楽しくて安心して甘かった。
本当にアプリであったとは思えないほど仲がいい私達は、色んな話をした。

中身のない話。悲しいことがあった話。楽しいことがあった話。嬉しいことがあった話。本当はこう思ってたって本音の話。次会った時の予定の話。

彼は嘘をつかない人で、私はそこが大好きだった。
過去の経験のせいで人を簡単に信じれなくなった私は、初め彼に対して疑いの目を向けていた。
けれど彼の真っ直ぐさと素直さに負けて、日に日に信用できるという確信が強くなっていった。

ありがとうもごめんも素直に言える彼。
楽しかったねまた行こうねと純粋に言ってくれる彼。
私にとってその素直さはとても安心できるもので、何度も救われた。

そのせいかな、時々すこし、いや物凄く不安になる。

私の不安をぶつけたこともあった。
「大丈夫」「ちゃんと行くから」「何がそんなに不安なの笑」と言ってくれた彼。
それでもその言葉に不安を感じてたあの夜。
これが嫌、あれが嫌と言う私に「また言って。治すから。」と言ってくれた彼。

嘘じゃないってわかってる。彼からの言葉はなくならないってわかってる。
でも、いつか私のそういう部分に嫌気がさして離れるんじゃないかって不安になる。

私は、彼が好き。
だけどそれが何か分からない。
彼が言ってくれた「するなら君がいい」の真意が分からない。貴方の心が分からない。

彼と行った場所。彼としたこと。彼が口ずさんだ歌のフレーズ。彼に抱いた感情。
全て大切で、心地いいものなことには変わりない。
だけど全てが不安定なもので、深く触れれば勝手に無くなるようなものに思えてしまう。

彼と今以上の関係になるのが怖い。
私たちは夜だけ会う関係でもないし、そういうことをする為の関係でもない。
「君のことを体目的としてしか見れなくなるのが怖い」
と不安を明かしてくれたとき嬉しかった。大切にされてると期待した。

来月彼と動物園に行く約束がある。
「いい思い出になりそう」と言ってくれた。
ほんと、どこまで掻き乱せば気が済むんだばか。

例えこれが恋だとしても先に進めない。
恋人になれば終わりが来る。
彼と関われなくなることが、今の私にとって5本指に入るほど恐れていること。
彼が踏み込んでこない以上進めない。

だけどこのまま何もせずにいた結果、他の子と付き合ったなんてことになったら、私は多分失恋したと泣き叫ぶんだと思う。
それだけは嫌。
彼が他の人のものになるなんて、絶対に嫌。

私は彼のことが大好き。
そんな感情を抱えながら、今日も名もない彼との関係に溺れていく。

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