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贅沢

夜。外を散歩していると彼から何度も電話がかかってきた。

私がInstagramのストーリーに「1回でいいから死んでみたい」と上げたせいだ。

何度も何度も電話がかかってきた。
けれど私はなんとなく出る気にならなかった。
泣いているし、声だって上手く出せるかわからないし、上手く笑えるかもわからない。
そんな状態じゃあ更に心配をかけてしまう。

けれどそのストーリーのせいで彼は酷く心配をしてしまっていて、何度も電話をかけてくれた。
それに折れた私はついに勇気を振り絞って声を出す決意をした。

案の定上手く出なかった。

長く話せば涙が溢れてしまいそうだった。
「うん」「ううん」「大丈夫」を繰り返す私に彼もまた「死なないで」と繰り返した。

私の声を聞いてすぐに大丈夫じゃないことに気がついた彼。心配だと言ってくれた。
私が笑顔になるように沢山話を振ってくれた。
「泣かないで」とも言ってくれた。

情けないなぁと思った。
こんなに愛されていて大切にしてくれているのに死にたいだなんて、贅沢な悩みだなぁ。なんてことも思った。

小6の頃から闘ってきた「死にたい」感情とも勝負が着く見込みもない。いつだってひょっこり顔を覗かせて私を嘲笑う。死にたいだの消えたいだのうだうだ考えたって出来やしないのに、底なし沼にはまってしまう。

命の危機は経験できない。
それを経験して初めて実感できる愛や自分という存在の大切さがあるはずなのに、知る術がない。

私は存在していていいのだろうか。
誰かの隣に立っていていいのだろうか。
恋人や友人と語らっていいのだろうか。
私が存在してしまっていることで迷惑をかけているんじゃないか。
私の言葉で傷つく者もあるんじゃないか。
私はいない方がいいんじゃないか。

本当に自分が消えてほしいと願ってしまう。

「あなたの代わりはいない」
「そのままで充分だよ」
と言ってくれた彼。

早く会いたいな。
こんなこと考えて馬鹿だったと本気で思わせてほしい。
ずっとそばに居て欲しい。


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