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好きな短歌100首言えるかな(超短評つき)

※五十音順

明田ミオ/寂しさがつのって猫になりました 君の仕事の邪魔ができます
かわいい。

あひる隊長/きみの行く街の名前は知らなくて海が見えればいいと思った
同人誌「光るかもね」より。あひる隊長さんの凄さを目の当たりにした連作でした。

あるこじ/欲しい物ばかりあなたはくれたから復讐だって気付かなかった
下の句のどんでん返しが好きです。

阿波野巧也/お釣りの額がたまにぞろ目になることも暮らしのささやかなテクニック
クールかつスマートで好きです。

イシイ/俺なしで生きていれなくなればいいエアレーションの電源を抜く
切実さと日常感の融合がマッチしてると思います。

石井僚一/でたらめに性器に触れくる危うさのあなた、夜の向日葵 殺してよ
かっこいい…。

石田犀/友だちのいない5月に消火器を抱けばあたたかそうだと思う
消化器にあたたかみを感じる主体の感受性が切ない。

伊舎堂仁/ぼくたちを徴兵しても意味ないよ豆乳鍋とか食べてるからね
脱力感の裏に反戦の意識が垣間見える短歌でした。

岩倉曰/警察が要らなくなればいいのにとわたしはいい方の意味で言った
いい意味で言ったということは、悪い意味も必然的に含有しているシステム。

上坂あゆ美/修二と彰、どっちも嫌いと答えたらなんかわたしだけ重力おかしい
クラスの中で浮くことをこんなにも流れるように短歌に出来るとは。

上牧晏奈/みそ汁のあさりぱかぱかひらくならわたしになにができるのだろう
あさりと「わたし」が等価である一生懸命さがまぶしい。

丑野つらみ/ためらわずフルーツサンドに手をのばせ 青山通りの真ん中歩け
通勤前によく呟きました。

宇都宮敦/急カーブ曲がるたんびに「海だ」ってさけぶ嘘つき助手席にのせ
さわやかできらきらしてて、でもそれだけじゃないこの人の短歌が好きです。

宇野なずき/シェルターの中はあたたかくて何で避難したのか忘れてしまう
シェルターの外での主体を思うと切ない。

umi/傷ついた私を癒したいと思うその優しさが持つ鋭さ
はっとさせられました。

大前粟生/お互いにワンパンし合う関係で倒れた場所を花園とせよ
かっこいい。本当の喧嘩もこうであればいいのに。

岡野大嗣/もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい
「死にたい」と呟く時はこういう気持ちになります。

岡本真帆/3、2、1、ぱちんでぜんぶ忘れるよって今のは説明だから泣くなよ
いなくなってしまうのに最後の最後まで優しい主体がずきずき来ます。

乙村藍里/森としてあなたが育てた狼が人を喰わなくなりますように
一読して衝撃を受けました。向ける視線が尊い。

おとうふ/生きているだけで害獣と呼ばれる動物たちと国を作ろう
とてもよく思い出した短歌です。

音忘信/ジャニーズの映画は全ておもしろい見えない銃を突きつけられて
この短歌が作歌されたのは騒動が起きる前なので、先見の明に痺れました。

かきもちり/たくましい爪など役に立たぬ街 ライオン、ぼくと一緒に寝よう
街に迷い込んだライオンの悲しみに寄り添う主体のやさしさ。

金田冬一/好きが降るスノウドームを蹴破ってあなたを春へ連れて行きます
かっこいい。大好き。

歌眠/責任も死ぬっていいな 市民プールでオフィーリアれば空はあかるい
オフィーリアりたい…。

川島薪/なぜエヴァに乗るか分からぬ少年よサラリーマンもそんなもんだよ
わかる…。

岸原さや/僕たちは生きる、わらう、たべる、ねむる、へんにあかるい共同墓地で
ファンタジックなようで現実に密接している美しい不穏さ。

菊池月子/あきらめることができない だってここはドリンクバーに出会えた世界
ドリンクバーに出会えてよかった…。うれしい。

北山あさひ/がんばったところで誰も見ていない日本の北で窓開けている
柔よく剛を制す、北山あさひさんの短歌が好きです。

北谷雪/あなたの書く鬱の字はきれいで完璧なクッキー缶のようにくるしい
美しいのにくるしい…。

絹川柊佳/モンスターボールに戻されるときの白い光で安心したい
ポケモンも人間も戦いで苦しんでるのは同じなのかも。

木下龍也/飛び降りて死ねない鳥があの窓と決めて速度を上げてゆく午後
凄まじい。天才。

君村類/役にたつ/たたないでものを選ぶときわたしをめがけて降ってくる雨
雨にメッセージを見出す主体の切実さ。

霧島あきら/童貞の頃のあなたの手を握りそれだけしたら未来へ帰る
めちゃくちゃかっこいい…。

暗い部屋で/仰向けで「もう別れよう」と言う君はもう十分に古墳でしたね
二回読んで「古墳!!?」てなりました。言葉選びのセンスがすごいです。

来去水舞/母の荷のポプリのラベンダーの香が眠れ眠れと囁いてくる
母の重さをスムーズに表現していて凄まじい。

黒川かおる/出会うこと、たとえば免除申請をおしえてくれる人と役所で
どんな形でも出会いは出会いなんだなあ…。

小泉キオ/フックよりピーターパンの危うさに気づき少女の時代は終わる
流れるような鋭い切れ味が好きです。

小坂井大輔/持ちあげたグラスの底におしぼりの袋がついてる愛欲は死ね
おしぼりと愛欲のミッシングリンク。

五島諭/子供用自転車とてもかわいいね、子供用自転車はよいもの
普遍的な文章でさらっとすごいことをしている感覚。

斎藤君/特大のタライください長男を欲しがる義母に降らせるための
全てがコメディになればそれは救いだと思います。

笹井宏之/拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません
もう会えない大切な人の顔を思い浮かべました。

笹公人/もし君がキエーーと奇声をあげながらヤシの実割ったとしても 好きだよ。
𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬……。

柴田葵/バーミヤンの桃ぱっかんと割れる夜あなたを殴れば店員がくる
痛快かつ飄々としているところが好きです。

陣崎草子/好きでしょ、蛇口。だって飛び出ているとこが三つもあるし、光っているわ
その視点はなかった…。

寿司村マイク/でも「ブックオフで一緒に働こう」から始まった三月もある
三月は終わりの季節ですが、希望の季節でもあるのかもしれませんね。

鈴木ちはね/品川の手前で起きてしばらくは夏の終わりの東京を見た
平易な文章で空間を切り取る手法が鮮やか。

鈴木晴香/悲しいと言ってしまえばそれまでの夜なら夜にあやまってくれ
かっこいい。芯の強さを感じます。

須能がる↑/一限に出る気あるやつかかってこい今夜総てを教えてやっから
この歌もかっこいいですね。痛快。

瀬生ゆう子/逃す虫、逃がさぬ虫の線引きをせめて君とは共有したい
虫の命の重さ軽さを他者と分け合う主体の切実さ。

瀬戸夏子/恋よりももっと次第に飢えていくきみはどんな遺書より素敵だ
大好き。

第二灯台守/あなたの影もあなたも人のかたちだよ 春に残せる留守電がない
この歌を口ずさんだことでましになった夜がいくつかあります。

谷川電話/流水にさらす両手に神様が手錠をかけて「もうだいじょうぶ」
手を洗う動作は祈る動作に似ています。

地下二階/さわんなよ私の心の深海を泳ぐ覚悟があんたにあるの
かっこいいです。啖呵を切る。

千種創一/映像が悪いおかげで虐殺の現場のそれが緋鯉に見える
虐殺と緋鯉の意図的なミスマッチが鮮やか。

できない/カージャック やったぜ二週間後には闇夜を照らす事件になるぜ
浮遊しているようでそうでない、地に足のついた軽快さ。

手塚美楽/あー、わたし、かなしいくらい女 また、リベンジポルノを躱す天才
女であること/そうでないことを乗り越えて生きる強さ。

寺平じゅん/ばあちゃんが採ったキノコを食べてからなぜか笑顔が絶えない家庭
すごく好きです。キノコを食べる前の家庭を考えると切ない。

寺山修司/わが天使なるやも知れぬ小雀を撃ちて硝煙嗅ぎつつ帰る
かっこいい…。この短歌の背景を知っていると二重に楽しい。

鳥さんの瞼/巻き貝のなかを明るくするように母は美大はむりよと言った
人によって思い浮かべる母が違うのもテクニカルだと思います。

堂園昌彦/君は君のうつくしい胸にしまわれた機械で駆動する観覧車
堂園昌彦さんは短歌を好きになったきっかけの1人です。

toron*/三面鏡じっと見つめてそのなかでいちばん強いわたしを選ぶ
自分と対峙して強さを引き出す主体の芯の強さ。

永井祐/ぼくの人生はおもしろい 18時半から1時間のお花見
永井祐は「失われた10年」の歌人という気がします。

長尾桃子/めずらしい ポケモンいるよ ゲットしに いこう▼ その檻もう開いてるよ
ぞくっとしました。天才。

ながゆき/手をつかい会話している僕たちにぼくたちだけの声ふりそそぐ
尊い光景を肯定して描く短歌もまた尊い。

西村曜/ようやくとわたしが首を吊る未明だれかはチーズケーキを焼いて
連作の一首。これが最後に来るのか!と鮮烈でした。

萩原慎一郎/頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく
現実味とそれでも生きようとする真っ直ぐさ。

橋爪志保/精巧な機械になって今すぐにあなたの目の前で壊れたい
精巧な機械だったら気がついてくれると思ってしまう。

長谷川麟/弱くても平気な人とそうじゃない人とが個々に結ぶ靴紐
どんな人でもかならず靴紐を結ぶ瞬間はある。

はだし/死ぬんじゃないまだあなたには競輪も競馬も競艇だってあるのに
突き放しているようでどこかやさしさを感じます。

蜂谷希一/リ コー ダー 分解されたときぼくは穴にまみれた筒だと思う
大好き。誰にでも出来る発想じゃないと思います。

初谷むい/グッモーニン人生どうでも飯田橋人生どうにか鳴門大橋
どうにかならなかった人生を生きていくために繰り返し唱えていた短歌。

初夢/目をとじる終点のない光線がきみを正義に変えてしまった
読んだ瞬間、この短歌と対峙させられた気がしました。

早月くら/楽園、で終わるしりとりならいいね ふたりで地図を燃やしつづけて
すごい…。

東直子/一度だけ「好き」と思った一度だけ「死ね」と思った 非常階段
非常階段での刹那的な運命が胸に痛い。

ひつじのあゆみ/色白で痩せてて反出生主義で山に篭ればミュウツーですね
その発想はなかった。ミュウツーになりたい。

平岡直子/時給制で幽霊をやっているのね スパンコールのように光って
スパンコールはきらびやかだけど、作り物でもあります。

藤本玲未/糸電話片手に渋谷ぶらついてこちら思春期はやく死にたい
大好き。こういう思春期だったような、こういう思春期を送りたかったような。

pha/空間をひっかくような音 きみは光のなかで姿勢がわるい
ライブハウスについての連作の一首。リアリティ。

二三川練/心さえ無かったならば閉園のしずかにさびてゆく観覧車
綺麗な短歌なので、さびてゆく観覧車もそれはそれで美しいと思ってしまう。

冬野きりん/ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる
名歌。ユニコーンに期待をこめる主体の純粋さ。

紅志野みのり/本革のバッグは一つあればよく女の敵は女ではない
通り抜ける感覚がさわやかです。真っ直ぐな視線。

Pokke/去り際のロックスターの手のひらはゆらめく炎の永遠でした
実在の人物を強く想像しました。

穂村弘 /「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
発想が跳躍しているようで現実に接続してるこの感じ。

埃/ていねいな暮らしで生きる前にまずお前の仕事をていねいにしろ
この短歌が入ってる歌集は何度読み返したかわからない。

松野志保/真夏日の螺旋階段なかばにて君という鮮烈なダメージ
すごい。読み手にもダメージが来る心象風景。

深海若/うるせえよ春の木漏れ日きらきらと僕の墓前に花を添えるな
勝手にいい話にされても困る時もある。

三縞まちか/運命のように目が合う 百年後こわれてしまうエレベーターで
この短歌に出会えたのもまた運命だったと思います。

三田三郎/あなたとは民事・刑事の双方で最高裁まで愛し合いたい
かっこいい。重いイメージの裁判をひっくり返す力強さ。

虫武一俊/労働におれは詩情を奪われてどぶ川をただどぶだと思う
それすらも短歌に出来る強かさ。

望月裕二郎/さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく
幕府!!?!?となりました。

安田茜/うるさいな硝子の嵐なんだからだれもが痛いのはあたりまえ
痛いことをあたりまえと言う意味はあると思います。

藪内亮輔/わたくしのハイパー名歌がけなされてあなたの駄歌がほめられて、夏
大好き。屈折しているようで真っ直ぐ。

柳川晃平/ヨドバシのかばん売り場で目隠しをいきなり外されたような、真昼
鮮やかな真昼です。豊かな感情を内包しつつ俯瞰的視点を持つ主体のイメージ。

山階基/友人が嘔吐している 友人はわたしの前で嘔吐ができる
こういう友人が欲しい…。

山田航/たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく
この短歌が作られたのは10年前ということにびっくりします。

山中千瀬/でもきみはその称賛に振り向かずひとり花野に去ったっていい
「きみ」の強さを引き出す主体のやさしさ。

雪舟えま/ねえつぎはどこに住もうか僕たちはおたがいの存在が家だけど
大好きです。こう言える関係が尊い。

夢野久作/誰か一人殺してみたいと思ふ時君一人かい…………………と友達が来る
夢野久作にしか詠めない短歌。

劣勢スカイベリー/難しいことに時間を与えたら超難しいことに育った
あるある……。

わさび/あなた専用ウルトラハイパースーパーエリート自宅警備員
大好き。こう言い切れる強さが欲しい。

おわり

楽しかったです。