都議会選挙が終わって-都議会に望むこと-
都議選の開票結果、情勢分析及びその後の政局を巡ってメディア、関係者、識者がいろいろと意見を出している。そうした分析を行うことも意義のあることではある。しかし、都議会議員が最も果たすべき責務は都政について立法府の立場から政策提言を行い、行政側に政策を反映させることである。したがって、各党間での談合、駆け引きといった内向きの姿勢を前提にした議席数の状況、勢力争いよりは、むしろ各党間で政策立案を競い合い、またその過程を選挙民にわかりやすい形で発信をしていくことこそが都議会の本来のあり方であろう。
その意味においては、今回の選挙結果で各政党が十分な議席を獲得できなかったことは、表面的には都議会において本来あるべき各党間での政策立案の競い合いを行う環境を整える好機になったと言えるし、そうした意見はいくつか出ている。(※1)ただ、その環境が成り立つには、有権者の側に都議会議員、都議会会派の言動をきちんと見極め、なれ合い議会にならないように普段から都議会の動向に関心を持つことが求められる。都議会議員が各々公約を果すための努力をしているか、各党が政策立案に関して切磋琢磨しているか、どういうことが議論されているか(※2)を知ることが有権者の責務であり、有権者が真摯に政策を比較検討している姿勢を持っていると都議会議員が認識することによって、初めて都議会議員は有権者本意の政策立案を競い合うのである。
ただ、(※1)の注釈でも述べたが、都知事が自民、公明両党に協力を呼びかけるいわゆる数合わせの方向に向かう動きが見られる。また、私も含め有権者の側も常に政策を比較検討し、都議会議員の言動をきちんと見極めようという姿勢には程遠い。都議会議員も有権者がきちんと都議会議員の言動を見極めようという姿勢は余りない、という前提で都政に臨んでいるのが現状である。
ただ、それでも世論を興し、そうした政治の悪循環を解消する一助となるべく、私はnoteを通してだけでも声をあげていきたいと考えている。そこで現状において最低限かつ緊急性のある課題について以下のことを申し上げたい。
1.オリンピック開催の再考
オリンピックの開催については、都民ファーストの会が最低限無観客、日本共産党が中止、立憲民主党が中止または延期を公約として掲げ選挙に臨んだ。もし、これらの党、とりわけ都知事の自公への協力要請の動きがある中で都知事の友党という位置づけにある都民ファーストが、自公の協力要請の動きとは別に、本気でオリンピック開催による感染拡大を懸念しているというのであれば、各党間の代表で協議の上、現時点でのオリンピックの開催について、再考を求める共同声明を出すべきだろう。
本来であれば、地方自治法101条3項に基づき、定数の4分の1の議員をもって都知事に対してオリンピックを開催に付議すべき事件として臨時会を招集するよう請求し、オリンピック強硬開催の反対に関する決議を採択するべき(※3)である。ただ、時間の関係上厳しいのであれば、せめて都議会のうち、オリンピックに慎重・反対の姿勢を示す会派が協議の上で、オリンピックの開催再考の声明を出すだけでも、政治的に都民の声を間接的に代弁した形になるものと考える。
2.東京都内における災害被害の想定の再検討
先日の熱海における土砂崩れでは、盛り土が原因ではないかとの指摘があり、仮に盛り土が原因であれば人災による様相が強く、回避できた可能性がある惨劇であることは間違いない。既に盛り土への懸念から、一部の自治体では盛り土に関する調査がされている。(※4) また、土砂災害のみならず、ここ数年、集中豪雨によりしばしば河川の氾濫も起きている。海抜ゼロメートル地帯での河川の氾濫は致命的であり、そのための防災設備や避難場所の確保は欠かすことができない。
東京都においても様々な防災に備えた設備、施設の強化というインフラ面の強化と同時に、避難先での生活においてできるだけ負担のない生活を過ごせるように、スフィア基準に基づいた対応を行うための方策を超党派で行うことが求められる。方向性としてはインフラ重視か、災害時の個々人の負担軽減かの方向性で差異があることは間違いないが、各党間で協議が可能な議論であり、超党派での政策立案が求められよう。
以上が緊急性のある課題として私が求めたいことであるが、このほかにも児童待機問題、高齢者向け介護施設の確保、介護体制の強化など課題は様々であり、これらについても都議会議員間での政策立案を競い合い、有権者が都議会議員の政策立案の概要について理解することは求められよう。むしろ選挙後における都議会議員の行動にこそ政治の本質があるという意味では、有権者一人ひとりが都政に関心を持つことこそが選挙での投票の本質的な意義であることを忘れてはならない。
私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。
(※1) 例えば、Yasuke Izumi氏は都民、共産、立民による都条例の成立の可能性、ふす氏は都議会の多極化を指摘しているが、これは従来の自民、公明(2017年都議選後の初期は都民ファースト、公明)によって主導される都議会の体制とは異なる可能性に触れたものと言える。
しかし、現実には、都知事が自民、公明の両幹部に協力要請を求めている状況である。もちろん、これらの政党間でのやり取りだけで都政が決まる態度を許すとしたら、私たち一人ひとりの有権者の中にある受け身の姿勢も問われていると考える。
また、関連して、小池新党との保守合同、国政での小池新党結成の場合の連携を求めるとの発言だが、これについては、都議会での両党の合流という可能性を示唆する発言にも解釈できる。こうした発言が容認されてしまう状況は、政党が有権者ではなく内向きの論理となっていることと、それを黙認する有権者の受け身の姿勢も問われるものと考える。
(※2) それを知る一環として東京都議会では「都議会だより」を発行しているが、「都議会だより」を参照にするのはいいかもしれない。
(※3)
(※4) 熱海・第希望土砂崩れを受け「盛り土」の調査実施へ 大分県
(テレビ大分)
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